第3部*日常・想い
オレにとって水城は大切な義妹だ。
「妹」以外で関係を表すことは今は無理だけれど。
けれど変えてみせる。
この兄妹という関係を、、
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
朝の小テストを終わらせ、
HRのあと親友と机に集まっていた。
「12月、だな」
「もうすぐ、卒業だな‥」
なんだかしみじみするような話題をふってきた親友の市倉 和也<カズヤ>。
「ってかさ。お前は彼女いないわけ?」
オレの机に置かれたチョコ山をみて、軽蔑のような視線。
「いない。」
そんな質問にオレは即答。
「つーか、高校3年間何してたわけさ。」
「普通に。部活とか受験勉強とかさ」
彼女もつくらず部活や勉強に打ち込む男。
硬派な少年にみえたのだろうか、バレンタイン前にもかかわらず、なぜだか『クリスマス直前祝い』、ということでチョコをもらってしまった。
それはオレが
VDには何ももらわないことを公言していたからなのだが。
ホワイトデーが面倒という理由で。
「受験、頑張ろうね☆」
という言葉とともに、
数名の女子から市販のチョコを頂けた。
水城にお土産として持って帰ってやろうと、教科書が詰まった鞄の中に押し込んでいると、
「せっかくなんだから、そん中の誰かとつきあえばいいんじゃないか」
その中の一つをひょいっとつまみ上げ、綾瀬 流<リュウ>が問う。
「お、この子なんてどうだ?キレーにラッピングしてある。」
「あのな、流!そんな簡単に彼女は選んじゃいけません!
それに・そのラッピングどうみても店のラッピングだろーがっ」
「ラッピングがキレーだと、手料理とか上手そうだよなぁ」
うんうんと頷きながら和也が会話に入ってくる。
つーかお前等オレの話聞いてねーだろ‥
はー。と短いため息をついて、鞄の中に詰め込んだチョコを見やる。
水城からチョコがもらえたらどれだけ幸せだろう、、
チョコをくれた女の子達には悪いけれど、沢山のチョコより
水城からの一つのチョコレートの方がよっぽど価値がある。
残念ながら、
オレの人生の中で水城からVDで、チョコをもらった事は一度もない。
あれだけお兄ちゃん、お兄ちゃんいってるくせに。
‥好きな奴でもいるんだろうか??
否、
それはナイよな、ナイ。
一度聞いてみた事はあったものの、(半年前くらい)
初恋もまだなのだそうだ。。
どんだけウブなんだコノヤロー☆
けど
兄だから慕ってくれているのだろうか?
もし、
オレが男として水城をみていると知ったら、、
水城はどう思うのだろうか‥?
「帰ったら、水城にチョコ分けてやろうっと‥」
ふっとチョコを見て微笑んだオレを和也が見逃さなかった。
「水城って誰だよ?もしかして彼女?」
「妹」
「へー。可愛いの?」
「そりゃー、もう、」
‥って、何言ってんだ自分。
そんな事いったらこいつらが食いつくなんてわかっていたのに。
「ふーん、、あ・そういえばさー」
が、オレの予想とは裏腹に、和也はあっさり会話から話をそらした。
週末。
運悪くも水城は風邪を引いて寝込んでいるところに、あいつらが遊びにやってきた。