第24部*恋人
「…どうしたんだソレっ!?」
大学から帰っている途中、
水城から電話があって
待ち合わせ場所の公園にいった。
遅い時間なのでウォーキングをする大人や
バトミントンを楽しむ高校生達がいた。
その中で遠くからでも
ベンチに座っていた水城の顔にでかでかと湿布が貼ってあるのが見えて驚いて声を上げた。
「えへ★ケンカしちゃった」
そういって水城は舌をぺろっと出すがそんな可愛い怪我でないだろう。
痛々しく目の下が青あざになっている。
「なんで…っ」
「あたしと壱の事、悪くいったから。」
オレらが付き合ってる事に対して?
そんなけがまで負って…?
「ば、かやろ…っ」
壱は抱きしめたいのを我慢し、周りの目を気にして
水城の手を握ることにとどめておく。
「本当は理解してほしいけどさ。。」
ぎゅっと握った手の平を水城が恋人つなぎでつよく握り返す。
「でも、理解できない人もいる。
それが自然なんだから。
無理に理解してもらわなくったっていいじゃん」
…確かにそうなのかもしれない
「それに、壱を好きな気持ちは変わらないよ?」
そういって水城は壱に抱きつき、軽くキスをした。
周りの目なんて気にしないかのように。
あの雨の日おびえて震えていた水城とはもう違っていた。
いつの間にこんなに強くなったのだろう
そう思いながら、深い口づけで水城に想いを返す。
「だから、あたしを…」
水城にぽそりと、耳元でいわれ、
壱は赤面しつつ、強く頷いた
……………………………………
玄関を前に、
水城がオレの手を引き寄せてぎゅっと繋いだ。
『お兄ちゃん』
そういっていた頃の水城と重なる。
でも。
今は違うってわかる。
「壱…」
水城がそう呼んでくれるから。
オレ達がやろうとしているのは、一番の難関ともいうべき事。
友にだって理解をしてもらえたが、
だけど
理解を得るためには沢山の言葉を尽くさなければならなかった。
家のリビングの明かりがついているのを確かめ、決意を固めたように言う。
「水城、行こうか」
水城がこくん、と頷いたのを確認して敷居をまたぐ。
そして
「お帰り、壱、水城」
母さんがいつものように出迎えてくれた。
リビングに入ると
「遅かったな」
そういって父さんが新聞から顔をあげた。
「話が…あるんです」
いつもの風景の上に重ねるように切り出す。
「お義父さん、お母さん……お願いがあります」
そこまでいって、
ぎゅっと口を結ぶ。
壱にとっては正確にはお義父さん、
水城にとって母はお義母さん。
両親は、
改まったようなオレたちの態度に驚いた顔を向けた。。
そして、オレ達2人が手を握りあっているのをみて
はっとした顔をした。
「…」
重く長い沈黙、、
意を決して、言う、
ここまでもなんとか乗り越えてきたんだ、
だから
オレ達の未来のために乗り越えて、未来へと生きていきたい。
すぅっと息を吸い込んで、
「水城と付き合う事を許して頂きたいんです」