第13部*想い、届くまで
食堂で
夏森は天ぷら定食という豪華な代物、それに対してオレはかきあげうどんを質素に食べる。
こいつにはかしていいものかと迷いつつ、
でも相談相手が欲しかったのも事実だし、この数週間・友達として夏森は信頼ができるよーな奴だと思ったから言う、
「オレと妹は、本当の兄妹なんかじゃねーんだ」
その言葉に驚いた様子の夏森。
「そう、なんだ…」
一言そう漏らした。
一つ屋根の下…
そう夏森は呟いて、続ける。
「よく我慢できたね」
そう言われたが、
我慢なんてしてなかった
大切な人だからこそ傷つけたくなかったからそういう行為をしなかっただけで、、
でも…
誤って酒に酔って部屋に入っちまった事はあったが。。
「大切にしたいんだ。」
そういうと、
「ふふ」
夏森が微笑んだ。
「相手がいるっていーよね」
「…お前はいねーのか、そういうやつ」
大学生といったら、合コンやら出会いの場探しで忙しいんじゃねーのか、
ましてや夏森みたいな美人を放っておくような野郎共もいないだろうに。
そんな事をいうと、夏森は不敵な笑みを浮かべる。
「もう、いないから教えてあげる。」
いないって何が、
そう口に出して言う前に何となくいくつかの可能性に気づく。
振られたのか?
この別嬪さんが?そんな度胸ある男が
それとも…
それはこの世に?
…もう、いない、、
「私、好きな人亡くしてるの」
動揺した。
オレはなんという事を聞いてしまったんだ。。
「これでオアイコだよ。」
そういって悲しそうに笑う夏森は強いのか弱いのか。。
オレはもう何もいえなくて…、、
「だから、アドバイスをしてあげる」
うつむき加減で話を聞いていたオレに明るい声を向けた夏森。
「伝えられる時に、伝えなさい。」
夏森は、、
彼が、大切な人が亡くなったというのに、
それを乗り越えて
人にアドバイスをできるようになるくらい強くなったのだろうか?
「ありがとな、夏森」
なんだか、
「ちゃんと気持ち、伝えたいって思えた。」
うん、と頷いて夏森は続けた。
「頑張りなよ、応援してる」
でも、もし振られたら私のとこにきてもいいよ?
なんて冗談まじりの事を夏森に
にこやかに投げかけられたが、
オレには水城がいるし、
夏森にはちゃんと心に決めた奴がいるんだと、
わかっていたから
微笑みかえして立ち去った。
……………………………………
「お邪魔しますー」
どうぞ、と水城は部屋のドアを開けて陸を招き入れる。
次の日のテストの勉強をする、ということで陸を部屋に入れたのですが、、
「オレは水城の事が好きだ、」
そういった陸にぎゅっと
抱きしめられる。
別にそういうつもりで招いたわけじゃなかったけれど
恋人だから、そういう雰囲気になった。
だから
そのまま深い口づけを受け入れれば
ベッドに押し倒されそうになる。
恋人同士なら、ありえる事だってわかってる、
だけど。
「あの…今日は、だめ、、」
どうして、と問われ、家族が帰ってくるから、と拒む。
「覚悟しといてや?」
なんて男の子の熱い瞳で見つめられて
胸がずきっと痛んだ。
もう一度、
あんな風に彼氏に迫られて
彼女である水城に拒む事なんてできるのだろか、、
陸を見送ったあと、
気分転換に、リビングでTVをみていた。
どんな番組をみても頭にはいってこないのは、陸とのさっきの事を思い出してしまうから。
『覚悟しといてや?』
なんて言われてしまった。
あたし、、
覚悟…してたよ、
だけど
本当はまだ数時間は、誰も帰ってこないの。
それでも拒んでしまったの。
…お兄ちゃん…
ぎゅっと近くにあった本を胸に抱いて、水城は眠りに落ちた。
……………………………………
家に帰ると、
リビングで水城が寝ていた。
何か本みたいのを持ってるな、と思って近づいてみると、それは映画のパンフレットだった。
最近公開されたばかりのもので、とても怖いと噂のホラー映画だった。
…もしかして、こんな映画を彼氏と見に行ったのか?
デートにこの選択はどうかと思うが。
どんな趣味してんだ、と毒づきながら思う。
本当に、他の男のもんになっちったんだな
ばさっと
バスタオルをかけてやると、
「ん〜…?」
やべ、起こしちまったか?
と内心どきどきしていると、
「ばか…っ」
いきなりそう叫ばれた。
何に怒ってんだと思いきや、寝言のようだ。
「…好き」
そんな言葉が聞こえてドキッとする。
誰のことを想っていったのだろう?
きっと、それは彼氏の事なのだろう
オレの事だったらいいのに、なんて淡い期待を描きながら。
大切な奴を傷つけたくないー…
なんていいながら
想いを伝えられない弱虫なオレは、
寝ている水城のやわらかなほっぺに
キスを落とすのが精一杯だった。
そして。。
「お兄ちゃん…」
水城が
そういっていったのが聞こえて、
オレは固まった。
……………………………………
夢をみたの。。
お兄ちゃんが私のほっぺに、本当に軽くキスをしてくれる夢。
でも、この間みたホラー映画の主人公の兄妹だってそれ位のキスはしてたよ、
それってきっと、兄妹愛から来るものでしょ?
それとも、
お兄ちゃんは
あたしを女の子としてみてくれた?
そうだったらいいな、なんて
あたしの事を大切に思ってくれている
陸という彼氏がいるのに思ってしまったの。
いつも読んで下さってありがとうございますっ! とても嬉しいです ヽ(*´∀`*)γ 今回は配信予告を書かせてもらおうと思い、後書きを使わせてもらいます。 次回配信は…5月1日午後6時頃です。 毎日、配信を心がけております どうか最後まで義兄妹の恋を 見守っていただけるとありがたいです!