第12部*彼氏
「お兄ちゃん、あたし。
彼氏ができたの。」
何気なくきこえるように、
さらりと事実を伝える。
でも、
わかってる?
お兄ちゃん以外の、
他の男の
女になったってことなんだよ?
そんな言葉も内心でふくませながら。
「…よかったな」
返ってきた言葉はそんな言葉。
何故、よかったなんていうの?私の事なんとも思わないの??
そんな事を思いつつ、
リビングをあとにした。
「好きなのに、な」
できれば、このまま奪ってやりたい。あんな奴に水城を渡したくなんかない。
でも。。これは水城が選んだ結果なんだから、
水城の幸せを願ってやらなくちゃ。
……………………………………
陸との初デート。
あたし達は映画を見にいった。
みたのは
「ホラー」映画。
兄と妹が主人公の話。
最後には
兄が妹を守るために、呪いをうけてしまって昏睡状態の寝たきりの状態になってしまったけれど。
妹は兄を目覚めさせるために薬学と呪いを解くために呪いの研究を学び始めるという終わり方だった。
兄妹愛を感じさせる話で、あたし達の関係のようで泣けてきた。
助けたのは家族だったから?
それとも、他の想いがあったから?
陸は私の涙をみて、ホラー苦手だった?と、オロオロして尋ねてきた。
そんな陸に、
ホラーは得意分野だよ、
ただ、あんな終わり方、残念だね、と返した。
……………………………………
昨日水城が
とても可愛らしい格好で出掛けていった。
きっと、デートにでも行ったのだろう。
「オレ、妹の事好きなんだ。」
授業前、
唐突に口から出た言葉。
何を人前で言ってるんだオレは、なんて思ったものの、
「はいはい、お前はシスコンだもんな」
そう和也と流には流される。
そーだよな、誰も本気で受け取る奴なんかいねーよな。。
そんな事を思いながら机の上に突っ伏す。
だけど、夏森 千は違った。
授業が終わったあと、
「本気?」
と、尋ねてきた。
「何が」
そう返すとさっきの、妹が好きって話、と返ってくる。
「…冗談だよ」
なんて言ってみたが
「あなたの口調が嘘に聞こえなかった」
真剣に問う夏森。
「好きなの?」
一言間を置いて、
「…好きだ」と答えた。
「近親相姦でもする気?」
「違うっ!」
お前にオレの気持ちわかるわけねーだろ。
正直、そう思った。
でも、相談相手が欲しかったのも事実。
「どーしたんだよ、壱」
いきなり大声をたてたオレに注目が集まる。
「…場所を変えよう」
周りの目が痛くて、夏森と2人で授業後、昼食のついでに食堂で集まることになった。