第11部*好きだったよ
水城にあんな事をしてしまった。
陸とかいうやつに嫉妬したから。
気持ちを伝えたくて
キスをしようと唇を重ねようとしたけれど、結局は自分の弱さが勝ってしまった。
キスをしようとしたとき、水城が自分から目を閉じてくれたように見えたのに。
あのまま奪っていたら、義兄妹ではなく
恋人という関係にさえなれていたのかもしれないのに。
そう思い、
思うのは
あのままキスをすればよかったということだけだった。
……………………………………
放課後の教室。
風通しのいい窓際付近で
陸と二人で色んな話をして盛り上がっていた。
そして、唐突に陸が問う。
「お前さ、好きなやつおるん?」
え、とすぐには返答できなくてぐっと、肩を掴まれて壁と陸の間に挟まれる。
はさまれてしまい、動きたくても動けかった。
「…っ」
こんな状況で、兄が押し倒してきた事を思い出してしまう。
ものスゴくドキドキした。でも、彼女がいるのにってズキズキもした…。
そして、陸は水城へと唇を寄せた。
「や…っ」
そういってふりほどこうともがいたら、
近くの机の上にあった筆箱を落としてしまう。
「…逃げんなよ」
逃げたくても足が震えて動かない。そのまま突っ立っていると
陸がしゃがんで筆箱を拾い上げ、言う。
「オレさ…」
陸の瞳は強くて…
しゃがんだまま見上げられれば心が、揺らいでしまう。
そして、陸は言う。
「お前の事好きなん。付き合って‥?」
そういい、手を伸ばしてあたしの腕をつかむ陸。
強い力にびくっとして一歩引こうとすると、強引に抱き寄せられ
「水城」
名で呼ばれて、どくん、と心臓が跳ねる。
「好きだ」
お兄ちゃんがそんな事をいってくれたらいいのに、、
そしたら、お義兄ちゃんと呼べるのに。
恋人にだってなれるのに。
そんな事を願いながら、叶わないと判っていたから
今、
けじめをつけるよ。
私にキスができなかった兄。
それはきっと、私ではなく他の何かを選んだということに変わりはない。
だから、けじめをつけたい。
そんな理由で
頷く。
陸は嘘じゃないよな、と・水城に確かめるようにいい、恋人同士のキスをした。
そして
あたしは陸という闇に落ちていく。
‥‥だけど、大好きだったよ、お兄ちゃん。。