第9部*偶然
「水城チャン〜」
関西弁なまりで陸が水城の机まで駈けてくる。
高校に入って数日しかたっていなかったが、陸とはとても親しくなった。
「なあ、今日の数学何のプリント解らんとこあってん。せやから写させてもらえへーん?」
ヘラヘラとしたチャラ男。
それが陸への第一印象、なわけで。。
こういう奴なんだから、どうせ遊んでいるんだろうなぁ、って思いつつ陸の数字のプリントを見ると、、
空白になっていた部分は水城も解らなかった一番難しい問題だけだった。
「わ、意外ーっ!ちゃんとやってんじゃんか〜」
そういうと、陸は侵害そうな顔をする。
「ひどいな〜、水城チャン。。俺かて勉強くらい出来るんよ?」
そんな陸のすねた様子をみて可愛いな、なんて思ってしまう。
「何笑っとるんー?!」
「あははっ、可愛くってさ。つい」
「な、何いうとるんっ」
あくせくする陸。
なんか女のこみたいだ、なんて失礼だけど、
「もしかして、甘いものとか好きなタイプ??」
そういうと、くしゃっと笑顔をみせる。
「正確っ♪よーわかったなぁ。」
「じゃーさ、オレが好きなクレープ店、紹介してやるよ。」
そうして
水城は陸と放課後一緒に帰ることなった
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「隣、いい?」
講義の授業を受けようと、
2人掛けの机だったため、いつも3人で行動していたから今日は丁度オレの隣が空いていた。
「あ、どうぞ」
そういって振り向くと、そこに立っていたのはクールビューティーな美人さんだった。
社会人スタイルのような服をきこなしている。
「ありがとう」
そういって席へと腰を下ろす。
「うゎ〜‥美人さん、、」
前の席に座っていた和也が呟き、そして・くいついた。
「初めて、一年の市倉和也ですー。こっちは綾瀬 流。
アナタのお名前は?」
「‥夏森 千<セン>。私も1年」
「千ちゃんねっ」
和也がチャン付けすると、困ったような顔。
「‥夏森の方が呼ばれ慣れてるんだけど、、」
「じゃーオレが初めてなのかなぁ☆」
和也はポジティブに受けとった。まあ、こういうやつだから仕方がない。
「…あなたは?」
「オレ?藤田 壱」
ジリリリリ
「始めるぞー」
本鈴が鳴って教授が講堂に入ってきた。
……………………………………
偶然だった。
駅からの道を家に帰ろうとをチャリをこいでいたら、夏森 千にあった。
「あ。」
「…あ。」
お互いにお互いを認識しあい、途中までご一緒する事になった。
「ここ、オレの家の近くの駅なんだ」
「そうなんだ、、私は用事があってよっただけだから、この辺の事はよくしらないけど。」
と、たわいもないことを話ながら、有名だというクレープ屋の前を過ぎたところで
「あ」
と、夏森さんが声をあげた。
「ここのクレープ食べていきたい」と。
そして注文したのが
Wチョコ生クリームさんだー(600円)。
クールだけど、甘党なんだな、と思い、苦笑してしまった。
……………………………………
ソレをみてしまったのは、
偶然、だった。
「お兄‥ちゃん?」
水城が見つめる先には美人な女の人と一緒に歩く、壱の姿。
楽しそうに会話をしているように見えた
「どしたん、水城チャン?」
クレープを片手に陸が、一点を見つめて止まったままの水城に問う。
その瞳はどこか遠くを見つめているようで。とても真剣で、、
「水城チャン‥?」
陸の声にはっと気付いた水城が
「あ、えっとね、うちのお兄ちゃん・なんだ」
そういってクレープ屋の前にたつ男を指す。
「‥ふーん」
容姿は『中の上くらい』か、と品定め。
そして、隣にいるのが、、兄の彼女‥なのだろう。
大人な女性を感じさせるスタイル、服の着こなし‥仕草‥完璧な人だった。
その二人はとてもお似合いだと思ってしまう。
「っ」
ぽんっと、頭に
「なんやねーん、何深刻な顔しとるん?」
ほらっ、と、クレープを顔の前までもってきて陸がいう。
「美味しいもん食べるときは位顔してちゃ駄目何やで?」
その言葉に、なんだか心を癒された。
お兄ちゃんに彼女がいることくらいわかってたし、
あたしは家族でいるって決めてたんだから、、
こんな事で動揺なんかしてちゃ駄目だ。。
「えへへ、そうだよね、ありがと」
そういって微笑み返す。
陸の言う通り美味しいものを食べてるんだから楽しく食べなきゃ。
なんだか、こういうときに陸と一緒にいてよかったって思ったよ。