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妖怪悩み相談室 巡  作者: 新山まり夫
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 「ちゅうわけなんですわ、花子はん」

 全てを話し終えると赤は深い溜息をつき花子の目を見る。

 「あんたららしい悩みやな。てか、私もいつもダサいダサい言うて悪かったな」

 花子は生まれて初めて自分が発する些細な言葉が相手によっては深く傷つけてしまうことを理解する。

 「ははは、今日の花子はんどないしてもうたん?らしくないわぁ。でも気遣ってもろて嬉しいですわ」

 赤は素直に思った事を口にする。今宵は感情を包み隠さず、本音で花子と打ち解け合えそうな予感がする。

 「本題なんやけど、チャンチャンコどうやったら着てもらえますかねえ」

 花子は真面目な質問に対して真面目に考える。

 「チャンチャンコ着せる言うても、結局は血しぶきブッシャァーなんやろ?ほならあんまチャンチャンコ本体は関係無いんちゃうの?」

 まずは素朴に思った事を聴いてみる。

 「いやあね、そりゃそうなんやけど…わしらの怪談自体がチャンチャンコに依存してるからあんま軽視はできんのですわ。花子はんも知っての通り、怪談・噂の終わりが怪異・妖怪の終わりやさかい」

 事は単純に見えて奥が深い。

 数十分、色々と考えた果てに思いついた名案を花子は自信を持って唱える。

 「そや、チャンチャンコやめて他のにしたらええんや」

 答えはいつもシンプルイズベスト。

 花子はドヤと言わんばかりに赤の反応を伺う。

 「簡単に言うてくれますなぁ。出来たらとっくの昔にやってますがな。チャンチャンコやなくてカーディガンやセーターみたいな怪談聞いたことあります?わしらの存在の頼りがそれやのに勝手に変えれませんて」

 言われてみれば最もである。怪談依存で存在する妖怪達にとって語られる物語に沿った行動をとることは暗黙のルールになっている。人間は歩く、鳥は飛ぶ、魚は泳ぐ、といったようにこの種の妖怪に課せられた逃れられない運命である。

 「まぁ時間取って時代の流れを闇から覗き見るんは可能やけどね。ただ怪談なんてそう短期間に変わるもんやないし、一旦闇に身潜めたらいつまた戻ってこれるかわからんのが難儀や」

 赤はこの学校が好きなんだな、とその時花子は理解した。

 夕陽が深みを増し、夜を呼び込む準備をし始めた頃、花子は重大な事に思い当たる。

 「なぁなぁ、今思たんやけどな、私ら赤いチャンチャンコについて考えてんねんやんな?」

 急に放たれた本題の核に当たる浅はかな質問に赤の顔が少し呆れる。

 「そりゃそうやがな。わしらそれについてずーっと考えてきましたやん。もう夜も近うなってるのに何言い出しますん」

 今更かと思うほどバカげた質問に声の節々に棘を付けながら花子に答える赤。花子はその棘付きの態度には触れずに更なる質問を続ける。

 「青いチャンチャンコ…って怪談聞いたことある?」

 その質問を聞いた途端、赤の背筋が冷たくなる。

 自分は赤いチャンチャンコである。赤い紙、青い紙から長い年月を経て、時代の変化と共に怪談の形を変えながら昇格し現在に至る。

 赤は楽しい時苦しい時いつも青と一緒だった。生まれを共にした相棒であり兄弟のようなものである。

 「いや、ちょっと待ちいや。聞いたことあるもないもわしの後ろに青が…」

 恐る恐る振り返ると、そこには棒立ちで俯き加減の青が悲しそうに赤を見つめていた。

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