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第6話 ミリス私設騎士団長

 ダンが扉を開ければ、そこはもう訓練場だ。広さは学校のグラウンド二つ分程。中央では肩に星形の紋章を付けた騎士や兵士が入り交じって打ち合っており、とても熱気がある。

 使用しているのは木剣の様だが、当たればめちゃくちゃ痛いと思う。

 端の方では、同じく肩に星形の紋章を付けた黒いローブを着た人達が、火の玉やら水の槍を的に向かって射出している。多分、あれが魔法だ。あれは絶対に使える様になりたい。異世界ロマンを逃す訳にはいかないだろう。


「凄いな!」


 俺は思わず声を上げる。


「そうだろう。今ここに居るのは全員がミリス様の配下だ。練度は国の騎士団にも劣らんと自負している。ここに居るのは200人程だが、全体では1000人位は居るぞ」

「1000人……」


 一国の王女、個人の配下で1000人。多いのか少ないのかは分からないが、大きな戦力であることに変わりは無い。

 ダンの誇らしげな顔を見ればミリスが慕われている事もよく分かる。


「よし、早速始めるとするか!まずはステータスをチェックするんだ。そのステータスを覚えておけよ?終わった後に成長してるのが目に見えれば、やる気にも繋がるからな!」


 確かに成長が目に見える、というのは利点だ。自分がどういったペースで強くなっているのか良く分かるし、自分が出来る事の把握もしやすい。俺の場合は《成長促進》もあるので余計にメリットは大きいだろう。

 ただ問題は……


「ステータスってどうやって見るんだ……です?」

「ガハハ!敬語は良い!堅苦しいのは苦手だからな!しかし、ステータスの見方もわからんか。ステータスを見たいと思えばいつでも見られる。それだけだ!」

「な、なるほど。分かった」


 という事で言われた通りにやってみる。イメージとしてはゲームのステータス画面、リアに見せて貰ったものを思い出しながら念じる。

 そうすれば……



種族:人族

名前:エイト

年齢:16

職業:無し

体力:120/120

筋力:110/110

魔力:940/940

精神力:100/100

運:100

スキル:《言語理解》《成長促進》

称号:《勇者》



 おぉ見えた見えた。視界の隅に写っている感じだ。ステータス値はリアに見せてもらってから一切変わっていない。いや、そりゃそうだろうけど。

 これから訓練を受けてどこまでステータスが上がるのか、どんな事が出来るようになるのか、少しワクワクしてきた。


「お、その顔はしっかり確認出来た様だな。よし、それでは好きに武器を取れ。そこに一通り用意させたからな!少し振って自分に相性の良い武器を探せよ?」


 ダンが一人でうんうんと頷きながら指で示す。

 そこに用意されていたのはシンプルに木で作成された長剣や槍、幅広の大剣などなど。大剣は今のステータスでは持ち上げるだけで精一杯でとても振れなかった。

 他にも様々な武器があり、中には鎌なんてキワモノもあったりした。


 結局俺は、一番無難な長剣を選ぶ事にした。最初から癖のある物を選ぶなんて冒険は俺には出来ない。重さの面でもクリア。ステータスが上がれば金属製の本物も問題無く持てると思う。

 それに《勇者》の称号のお陰か、元よりは少し筋力が上がっている気がするので、そこそこ直ぐに持てるようになりそうだ。


「よし!それでは訓練を開始する!構えろ!どこから打ち込んでも構わん。全力で振れ!」


 ダンの言葉を合図に訓練が始まった。

 ダンは俺が滅茶苦茶に振り回すのを的確に受け流し、時に軽く打ち返してくる。しかし、ダンの「軽く」を受けると普通に吹き飛ぶ。具体的には2m程。ダンの武器は大剣だ。あの剣で本気で切られたら、俺の命は無い気がする。


「ハァハァ……良く考えたら、最初から、騎士団長じきじきの、打ち合いって、ハァ………おかしくないか?」

「オラ、エイト!無駄口を叩いてる余裕があるなら打ち込んで来い!」


 どうやらダンの教育方針は「体で覚える」らしい。基礎的なトレーニングは自主的にやるものだ、と言われたので今日からは筋トレでもしようと思う。体力が残っていたら、の話だが。


「はっ!ふっ!」

「遅い、遅いぞ!俺に当てようなんて考えるな!ただ速く振る事を考えろ!」


 俺は不格好な構えのまま振り続ける。上、横、斜め。《成長促進》の効果だろうか?疲労の蓄積が遅く、何時までも剣を振れる様な気がする。

 今はただ速く振る事だけが求められている。搦め手は使わないし、戦闘などした事も無いので、思い付きもしない。

 ダンの声と、木剣と木剣がぶつかり合う小気味良い音だけが聞こえる。


「ガッ!」


 また吹き飛ばされた。これで13……いや、14度目か?

 不格好に転がったが、すぐに起き上がりがむしゃらに突進する。

 が、振った剣を掴まれ、その動きを止められた。


「今日はもう終いだ。休んどけ」

「まだ……ッ!」


 まだ行ける、と言おうとしたのだが体の力が抜け、崩れ落ちる。体が完全に倒れないように両手で支えるのが精一杯だった。

 どうやら、思ったよりも体は限界に近かったらしい。


「この場所のルールに休憩は自分で言い出すっつうのがある。自分の体調くらい自分で管理出来る様になれって事だ。分かったか?」

「……あぁ、分かった。今日はもう限界だ」


 最初は本当に疲労を感じていなかったのだが、途中からは興奮していて疲労感が麻痺していたのかも知れない。

 それでも少し休めば動ける様に成りそうな辺り、《成長促進》は凄まじい。

 ただ今日はもう動きたくは無かったが。


「ステータス、見てみたらどうだ?」

「あ、あぁ」



種族:人族

名前:エイト

年齢:16

職業:無し

体力:50/200

筋力:30/190

魔力:940/940

精神力:120/200

運:100

スキル:《言語理解》《成長促進》《剣術Lv.1》

称号:《勇者》



 魔力と運以外、全てのステータスが上がっている。訓練していた時間は三時間程。それでこの伸び方は多分、大きいのだろう。

 精神力など2倍になっている。一回の訓練でこれだけ伸びるなら、嬉しくもなる。

 そして、極めつけはスキルに追加された《剣術Lv.1》だ。いや、こんなに簡単に剣術スキルとか手に入れて良いのだろうか?


「スキルに《剣術Lv.1》が付いてるな」

「お、良かったじゃねぇか!これで初級剣士の仲間入りだな!にしても手に入れるのが速ぇな。普通は俺の訓練を2、3回受けてようやく手に入るんだが……あ、それと自分のスキルはあんまり人に言うなよ?対策されちまうからな。《鑑定》持ちには意味無いけどな!」

「あぁ、分かった」


 これで取り敢えず、昼前の訓練は終わりだ。昼後からも訓練がある。

 だが昼後の訓練はダンとの打ち合いではなく、魔法だ。こっちは魔力が残ってさえいれば出来るらしいのでしっかり受けようと思う。

 「一度部屋に戻って良いぞ」とダンが言うのでお言葉に甘える事にする。


「はぁ……疲れた~」


 そう言いながら部屋に戻ると、中には用意された昼食と


「昼食もここで取るのか?ミリス」

「はい。お昼もここで。夜も来ますね。そんな事よりお疲れ様です、エイト」


 相変わらずの無表情で彼女がいた。今は昨日よりは表情筋が動く様になったか?位だ。

 それでもミリスは美少女なので食事を一緒に取れるのは役得だと思う。


「あぁ、ありがとな」

「さて、それではいただきますか」

「そうだな、食べるか~!」


 そして食事が始まる。今、聞こえるのはお互いが食器を動かすカチャカチャという音のみ。静かな食事だ。必要な事は朝に話したので特に会話が無いってのが理由だ。

 ふと、俺が食事から目を離し前を向くとこちらをじっと見ていたミリスと目が合った。


「どうした?」

「あっ、いえ。えーと、ダンとの訓練はどうでしたか? 」

「あぁ、大変だったなぁ……途中から集中し過ぎて自分の疲労に気付かなくてな。終わった途端に倒れ込みそうになった」


 俺はハハハと軽く笑いながら訓練を思い出す。あれをこれから毎日やるのだ、と思うと少し嫌気が差すのも事実だが。

 それが顔に出てしまっていたらしい。


「午後の訓練は休みますか?」


 どうやら気を使わせてしまったみたいだ。


「いや、大丈夫だ。午後は魔法の訓練だろ?魔法には興味があるからな」

「それならいいのですが…無理はしないでくださいね」

「分かってる分かってる」


 以外と心配性なミリスに軽く笑いながら、午後の魔法の訓練に思いを馳せる俺だった。


この後もう1話投稿…出来たらいいなぁ。

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