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第3話 アグレシア王国

大分遅くなりましたが更新です。

今回は短め。3000字もいってません。

 俺を包んでいた光が消える。


 まず視界に入ったのは白い装束を纏った10人程の人達と、淡いピンクのドレスを着た金髪碧眼の女の子。

 白装束達の顔は隠れていて見えないが、息づかいが荒く、疲労している様に見える。

 女の子も疲労している様だが、パッと見では分からないように取り繕っている。というか無表情だ。折角可愛いのに勿体無い。

 どうやら正方形で白い部屋の様だ。どこか先程まで居た冥府の入口と似た雰囲気を感じるが、対照的にこちらの部屋は辺りが薄暗く、足元には紫に光っている幾何学模様の陣が敷かれている。


「せ、成功したぞ」


 と、俺が周囲の様子を確認していると、白装束の内の1人がポツリと呟いた。成功したって言うのは、リアこと、輪廻の神リメリアが言ってた勇者召喚の事だろう。

 そして他の白装束達もようやく成功した実感を得たのか、ざわざわとし始める。

 そりゃそうだ。勇者召喚は普通、神々の部下の天使に阻止されるらしいからな。成功例は皆無に等しいんじゃないか?

 だが俺としてはもっと今の状況を把握したい。という事で声を掛ける事にする。


「あー、そろそろいいか?」

「はい、勇者様。なんでございましょう?」


 答えたのはドレスの女の子。


「お前は?」

「失礼しました。私はアグレシア王国第一王女ミリスティア・アグレシア。どうぞ、ミリスとお呼びください。私の後ろにいる者達は我が王家の臣下達でございます」


 そう言いながら俺に向かって礼をするミリスと白装束達。


「分かった。俺はエイト。よろしくな、ミリス」


 俺が右手を差し出すと彼女は握り返してくれた。ほっそりとした色白の手だ。


「こちらこそよろしくお願いします、エイト様」


 と、そこへ白装束の一人がミリスの側に近づく。


「ミリスティア様、そろそろ」

「わかりました。それではエイト様。こちらへ」


 そう言って促すミリスに付いていく。

 白い部屋を出ると、いかにも「お城です」と言うような広い廊下に出る。至るところに装飾が施され、どこか壮麗さを感じさせる。まぁ、勇者召喚の定番と言えば城だと思っているので何ら不思議は無い。

 廊下を歩いて行けば豪華な服装をした人達がこちらを見ているのに気付く。恐らくこの国の貴族か王族か。定番の知識が合っていれば、の話だが。


 暫く歩けば、幾つもあった扉の中で一番豪奢な扉の前でミリスが止まり、白装束の内の一人が俺の横まで来て口を開く。


「それではエイト様、この扉の奥は謁見の間になっております。国王様はこの国で最も高貴なお方。くれぐれも失礼の無いように」


 白装束には軽く頷いて返事をした。

 それにしても最初から随分な大物と会わなきゃならないんだな。このままだと面倒な事をやらされそうだ。


 確かリアは『勇者』に責任は生じないって言ってたが、それは神々のルール。人のルールではない。

 この国が勇者召喚を行ったって事は、それ相応に困った事があるのだろう。それは勇者に問題を解決して貰いたいって事だろ?内容によっては断る……いや、それが許されるとは限らない。逃げる事を考えなくちゃな。


 そんな事を考えている間にドアは開け放たれ、まず目に入るのはごてごてした装飾が施された椅子に座る太っちょのおっさん。おそらくは王様ってやつだろう。

 入り口から王様(仮定)までの距離は目測で20㍍程で、細長く赤い絨毯が敷かれている。部屋の広さは、学校の体育館とかそのくらいか?

 王様の両脇と絨毯の両端には騎士っぽい人達が立っていて、俺を厳しく睨み付けている。警戒しているのは分かるんだが、もう少しなんとかならなかったのか?

 他には……あぁ、いかにも「貴族です!」って感じの格好の人達が騎士さん達の後ろの方に控えてるな。さっき廊下で見掛けた顔も幾つかある。

 コイツらは俺を値踏みするように見ていたが半分程の人達は落胆した様な表情をした後、俺に対する興味を失った様だ。

 俺は目だけを動かし周囲を観察しながら、ミリスと共に王様の前で立ち止まる。そして俺以外の全員が王様(仮定)に向かって膝まずき、ついでミリスが口を開く。


「陛下、こちらの方が此度の勇者召喚にて、勇者として召喚されたエイト様でございます」

「うむ」


 鷹揚に頷き視線をミリスから俺に向ける王様(仮定)。そうすればそれに合わせる様にその場の全員が俺の方を向いた。これは何か言わなきゃダメなのか?ダメなんだろうな。面倒くさい。


「えーっと、俺がエイトです」


 取り敢えずペコッと頭を下げてみた。王様との、ましてやこの国の作法なんて知ったこっちゃ無い。周りからの視線は厳しくなった気がするが、知らない物は知らない。

 そんな顔をするなら、ここに来る前に教えてくれればいいのだ。


「うむ、余はアグレシア王国王グルム・アグレシア。勇者エイトよ、よくぞ我等の呼び掛けに応じた。卿には隣国との戦争の最前線に加わって貰う」

「は?戦争の最前線?」


 やっぱり王様だった様だ。これでめでたく(仮定)が取れる。良かった良かった。


 まぁ、そんな事はどうでも良くて戦争?この王様ふざけてんのか?他国との戦争のためにわざわざ俺を呼んだって?勇者は便利な傭兵かよ。

 いや、待て。早とちりは良くない。もしかしたら隣国から侵略を受けてて仕方なく……とかかも知れない。

 自分でも調べるつもりだが「この国がどの様な理由で戦争をするか」位は知っておいた方がいいな。


「1ついいですか?」

「申してみよ」

「なぜ戦争をするのでしょう?」


 だが俺の質問は王様が答える前に、別の太ったおっさんに割り込まれる。


「王よ、ここからは私から。王がこれ以上下賎の者と話す必要はございません」


 そう言って王様の方に一礼し、こちらに体を向けるとベチャッとした笑みを浮かべるおっさん。

 正直気持ち悪すぎるのでこっちを向いて欲しくない。

 とりあえず質問に答えてくれるなら誰でも良いので我慢して視線をそちらに向ける。


「私はヘハイト侯爵家当主、ガリブル・ヘハイトである。本来なら貴様の様な平民では会話さえ許されないが今回は特別だ。ありがたく思うが良い」

「はぁ、どうも」


 歯切れ悪く答えながら軽くペコリとしておく。しかめ面を我慢するのが大変だ。

 これまたテンプレの様な貴族様だ。肥えた身体に自分以下の身分の人を人とも思っていない様な顔をしている。


「では、平民。私が答えてやる。戦争の原因、だったな?決まっておろう。相手が獣共の国だからだ。いや、国と言うのもおぞましいな。良くて巣穴か」


 獣共?あぁ、獣人の事か。確かリアに見せて貰った本に書いてあったな。それにファンタジーでは定番だし。

 それにしても「人間も獣人も魔族も、互いに友好関係を築いている」と書いてあったが思いっきり敵対しているじゃねーか。ん?あぁそうだ。一部では差別をしている地域もあるんだっけか。


 ピンポイントでそんな国に来てしまうとは…自分の運が悪いのか……いや、悪いのはリアだな。ここの勇者召喚を見つけたのもリアだし。

 とは言っても、もしかしたら獣人達からちょっかいを掛けてきた可能性もあるのか。大体こういう異世界物の定番では、どっちかって言うと人間が悪く書かれているから偏見で判断しそうになっていた。

 そうなってくると、ここは了承しといて、情報を集めるのが正解か?


 それに恐らくだが俺のステータスは低い。力を付ける時間も必要だろう。

 情報を集めつつ力を付ける。それから逃げるか協力するか考えるとするか。


「わかりました。今回の話、受けさせていただきます」


 俺がそう言うと、今度は周りから「何言ってんだコイツ」という目で見られた。笑いを堪えている者さえいる。

 困惑していると、またしても疑問に答えてくれたのはガリブルだ。


「何が、「受けさせていただきます」だ。貴様には最初から拒否権など無い」


 そういうことか。俺には最初から選択の余地を与えられていなかった、と。俺の中のこの国の評価がガクッと下がった音がした気がする。

 すると今まで黙っていた王様が口を開く。


「下がってよい」


 そして王女含めた俺達は、この王様の一言で謁見の間から退出させられた。


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