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第2話 苦労の神リメリア

 気づいたら俺はここにいた。


 白い真っ白な空間。そこに一人ポツンとこれまた白い椅子に座る俺。

 周りには特に何も無い……いや、いた。目の前には眉間にシワを寄せ、疲れている時の父さんみたいな顔をした絶世の美女。

 見た目は20歳くらい。髪は白で、髪形は……なんて言うんだ?長くてウェーブが掛かってる感じか。胸も大きすぎない程々の大きさで、実に俺好みの女性である。


 そんな美人さんは、さっきから「ほんとにあの子達は……」とか「今度こそしっかり叱らなきゃ」とか言っている。

 なんだか大変そうなのでそっとして置いてあげたいのは山々だが、俺もちょっと混乱しているので、そろそろ説明を求める事にする。


「おい、なんか悩んでるとこ悪いんだがここは何処なんだ?」

「え?」


 どうやら俺には気付いていなかった様で「あれ?いつの間に?」とか言って首を傾げている。ちょっとポンコツ感がある感じも好みです。

 俺がそんな事を考えている間にどこから出したのか、一冊の本を開いてページを捲っている。


「えーと、貴方は狭間 永斗さんで間違いありませんね?」

「間違いないぞ。俺が永斗で合ってる」

「それではこの場所の説明を。ここは死者を迎える場所、つまりは冥府の入口の受付に当たります」

「と、いう事はなんだ?俺は死んだのか」


 死んだ……その言葉を認識すると同時に先程の感覚が生々しく再現される。背筋が凍る様に冷たく感じた。

 夢だったら良いと思った。だがこの空間が夢では無いと、お前は死んだのだと、そう言っている気がした。

 あまりにも非現実的な状況。だが俺は切り換えは速い方だと思っている。正直未練たらたらだがこれからを見ていこうと思う。

 まずはこの美人さんと会話して状況を把握にしよう。


「そうです。貴方は死に、そしてここ「冥府の入口」に送られてきました。ですが……大変申し上げにくいのですが、永斗さんの場合、多少事情が異なりまして……永斗さんが死んでしまったのはこちらのミスです!大変申し訳ございません!」


 そう言って「ガバッ」という効果音が付きそうな感じで頭を下げる美人さん。

 だがこれは一縷の希望では無いだろうか?ミスというのは修正される物だ。ならば今回も修正されて然るべきでは無いだろうか?


「え?マジで?それじゃ帰れたりは……?」


 俺がそう言えば美人さんは一瞬悲しそうな表情を浮かべ、口を開く。だが俺はそれで悟ってしまった。「帰る事は出来ないのだ」と。


「それは出来ません……もう既に貴方の世界ではお葬式まで終わってしまっています。過去の改変と言うのは私達神々にとっても難しい、そして神々のルールに反してしまうのです」


 直前に判っていた事だが改めて言葉にされると中々に重い。普段の俺ならそんな理不尽な「ルール」を押し付けられれば怒りだしてしまっても可笑しくはないが、不思議と今は冷静でいられた。


 ん?てか神って言ったか?この美人さん神様なの?俺、神って初めて見たけど、神様方は皆さん美人なのだろうか?


「ま、神様も色々大変なんだなって事で納得しとく。それで?あんたの名前は?」

「あ、申し遅れました。私は輪廻(りんね)の神 リメリア。遍く命の管理を生業としています」


 そう言って今度は優雅に頭を下げる美人さん、改めリメリア。


「リメリア、な。それじゃリアだな。ちなみにミスってのはなんだ?」

「り、リア!?」


 俺のリア呼びに分かりやすく狼狽する神様。なにこの可愛い生き物。

 数秒後、落ち着いた様子のリメリアはコホンと小さく咳払いした後、困った顔で説明を始めた。


「ミスというのは、その……私の部下の天使達、輪廻の天使達が貴方の世界に降りたんです」

「それで?」

「それで……その……貴方に眠りの力を掛け、部屋の時計を一周回してしまいました。その結果、貴方は寝坊し急いでいた貴方はトラックに轢かれ今に至る……と」


 説明してる内に段々小さくなっていく神様。

 いや、そんな落ち込まなくても……俺、そんなに怒ってないぞ?実感が湧かないからってのもあるかもしれないが。


「本来、貴方は死んでしまう筈では無かったのです。その生物がどの様な生涯を送るのかは決まっておりませんが、生まれる日と死んでしまう日は必ず決まっています。そんな中、貴方は例外になってしまいました」

「へぇ、やっぱそういうのってあるんだな」


 俺は妙な感慨に浸る。運命なんてあやふやな物が本当に存在したのだ。驚かない方が不思議だ。

 俺がその定められた日まで生きる事は出来なかったのは残念だが、そこは割り切るしかない。


「俺はどうなるんだ?」

「はい、神々で話合ったのですが、貴方の世界の輪廻から外れてしまった貴方は、元の世界に転生する事が出来ません。なので、貴方の要望を聞き、条件に合った世界に転生して頂く事になりました」


 なんか不動産屋みたいだな……世界不動産(株)なんちゃって。


「断ったらどうなる?地獄とかに連れてかれんのか?」

「いいえ、神々の住まう都、神世都で暮らして頂く事もできます。神世都は神のみならず、輪廻を繰り返し磨り減った魂も一緒に生活しています。ただちょっと刺激はありませんが」


 溜め息を吐くリア。もしかしたらリアもかなり退屈しているのかも知れない。


 そして転生と言えばロマンだ。神世都ってのも気にならない訳ではないが、刺激が何も無いって聞くと魅力は異世界転生(ロマン)には遠く及ばない。


「分かった、俺は転生にするよ」

「本当に宜しいのですか?」

「いやだって異世界転生(ロマン)だぞ?そんなの全世界の人々の憧れだろ!」


 熱く語る俺に若干引きながら頷くリア。


「了解しました。それでは要望をお聞きします。ある程度なら叶える事が出来るでしょう」

「そうだな、剣や魔法、それに魔物なんかがいる世界がいいか」


 やっぱり憧れの異世界と言ったらこんな感じだ。他にも色々と要望を加えたい所だが、苦労性そうなリアにこれ以上負担を掛けるのも躊躇われるからな。ここは気遣いが出来る男、永斗の出番だ。


「承りました。その条件ですと割と多いので簡単に決まりそうですね。この中から選んで頂ければ。貴方の生前の趣味から、とても危険な世界、危険な世界、ちょっと危険な世界。色々と取り揃えて見ました」


 そう言いながら、さっきの本とは別の本を虚空から取り出す。凄い、それどうなってんの?

 い、いや、そんな事より今は物件(世界)だ。良さげな物件、良さげな物件……ちなみにちょっと見た感じ、この本の中身は完全に俺の趣味仕様になっている。


 やっぱり冒険とかしたいからな。世界規模にヤバい世界はご遠慮願いたいが、危険な世界くらいにしてもいいかもだ。

 例えば……ん?これなんて良さげじゃないか?



世界名:〈スプラウト〉

説明:剣や魔法の世界。魔王や勇者なんてテンプレも!ワクワクドキドキを味わってみたい貴方へ!

条件:そこの女神にステータスチェックをして貰ってください。

注意:この世界では必ずしも魔王が敵、勇者が正義なんて事はありません。

ステータスが弱いならこの世界はオススメ出来ません。



 んーと?まずはステータスチェックとやらをリアにして貰えばいいんだな?


「なぁ、リア。ステータスチェック?ってのをお願いできるか?」

「はい、分かりました。あ、どちらの世界のステータスですか?世界によって規準が違うので……」

「あぁ、このスプラウトって世界だ」



種族:人族

名前:エイト

年齢:16

職業:無し

体力:190

筋力:130

魔力:940

精神力:100

運:100

スキル:《言語理解》《成長促進》

称号:《勇者》



 なにこの、言語理解って。語感からすると、どんな言語でも理解できる、みたいな?これがあれば英語のテストでは無双……いや、テストから離れろ。あの世界はとはサヨナラバイバイだ。


 てかそんなことより、称号にある《勇者》だよな!正直これが一番驚いてるんだが。

 というかさっきからリアも驚いた顔で固まってるな。そろそろ解凍してやるか。


「おーい、リア、戻ってこーい」

「はっ!京さん、勇者ってなんですか!勇者って!」

「いや、俺に聞かれても困るんだが……」

「だって勇者の称号は神々が与える物なんです!しかも才能のある者に……」


 そう言って身を乗り出し、早口に捲し立てるリアの前に1枚の紙がヒラヒラと。

 しかし、リアは気付かないので代わりに俺が読むことにした。



リメリアへ


 お前以外の神で話合ったんじゃが、この者には才能がある。よって勇者とすることに決定した。異議はあるか?無いな、OK。

 それでは世界に送り出したらしっかりとこちらに報告すること。それではな!


神々一同代表 ゼガルム



 声に出して読んでいたらリメリアがさらに固まった。もはや凍った。

 というか神って意外と適当なんだな。もっと機械的な感じかと勝手に想像してたわ。


 ちなみにリアはと言えば、停止から立ち直ったと思えば開口一番、「あの、クソジジィっ!」と叫んでいた。

 そんな事より確認したいことがあるのだ。


「おい、リア。それで勇者ってのは何か責任みたいな物とかあんのか?それだったら遠慮したいんだけど」


 そんなリアには触れず、ただ己の興味のままに質問する俺。我ながら中々に神経が図太い。


「え?あ、ええ。勇者に責任は特に発生しないわ。向こうで勇者だってバレればどうなるか分からないでしょうけど。それにしても勇者として、だと転生じゃダメね。都合良く勇者召喚かなんかしててくれてると……あら?今、やってるわね。勇者召喚」

「そうなんだな。でも勇者召喚?転生じゃダメなのか?」


 取り敢えず口調が変わったのはスルーだ。多分、さっきので普段の口調がポロリと出てるだけだろう。性格まで変わって見えるが、雰囲気は変わっていない。

 おそらく、また何か合ったらドン底まで沈むハズだ。なにか合ったら俺がフォローしよう。


「そ、勇者召喚。勇者として転生させるのは色々手続きが合って何だかんだで時間が…はっ!口調!申し訳ございません。勇者としての転生は手続きが多く…」

「あぁ、そのままでいいよ」


 折角スルーしたのに元に戻った。俺としては砕けて貰った方が気が楽なので、そのままにしてもらう。


「そうですか?……じゃなくて、そう?それならそうさせて貰うわ。とにかく時間が掛かっちゃうの。だから勇者召喚を利用するのよ。普段は神のルールに反するから勇者召喚は事務の天使達が潰すんだけど、今日は特別ね。さ、早く!終わっちゃうわ」

「分かった。それじゃこの世界にする。頼んだぞ、リア」

「ええ、任せておきなさい。あ、たまに様子を見に行きますからよろしくね」


 リアの柔らかい笑みが見えたと思えば、その瞬間、俺の体は白い光に包まれ、消えた。


長くてウェーブが掛かってる感じ=ナチュラルウェーブってやつです。

正直自分、女性の髪型なんて分からないんで調べました。同じく、服も分からないです。調べます

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