第20話 マインの力
遅れましたが投稿です
まずは俺から魔法を撃っていく事になった。正直、この勝負は結果が見えているので、勝てるとは思っていない。
それでも練習の成果くらいは出したいものだ。
俺が今回使う魔法は雷撃。多少狙いが甘くても当たるのでかなり使いやすい魔法だ。
ただ殺傷力は低いので、使用するとしたら敵を殺さずに無力化させたいとき。
今回は的に命中させればいいので使用魔法としては丁度いいだろう。
「それじゃ行くぞ」
「あぁ!エイトの成長が楽しみだよ」
にこにことこっちを見ているウィルに多少イラッと来たが、その仕返しは後で行うとして。今は目の前の的に集中する。
まず狙うのは一番狙いやすく他より近く動かない的。
使える魔法の回数は15回なので、簡単な所から確実に当てていきたい。
俺は無詠唱で発動した魔法を淡々と放っていく。動かない的は計10個。その全てに当て、次は動く的を狙う。
とは言ってもそこまで早く動いてる訳では無い。FPSゲームの演習場にある的くらいの速さだ。
こっちも特に難しい訳では無いので残り5発の魔法を同時に展開し発射する。
「ふぅ、全部あたったな」
まぁこの程度なら俺でも外す事は無い。ちなみにドデカい一発で全てに当ててしまうことも可能だが、それは禁止している。
それなら何故、俺がウィルに勝つ事が不可能なのか。
俺が当てた的の数は15。残りの的は5つ。
つまりはその全てに当てる事の出来るのがウィルだ。
「よーし!そんじゃオレの番ね!」
ウィルがいつもこの勝負の時に使うのは火球。
この魔法は魔術師、魔導師が最も使うことの多い魔法だ。そこそこの威力と速い発動。
ただ普通は直線にしか飛ばず、この魔法勝負には向かない…ハズなのだが。
ウィルは7つの火球を同時に展開。俺の最大展開数は先程の5つなのでそれだけで負けている。
そして同時に射出。その魔法は全て正確に的に命中する。
しかし、それだけでは止まらない。的を撃ち抜き、直線にしか進まないハズの火球は緩やかにに進行方向を変え、全ての火球が二つ目の的を撃ち抜く。それでも止まらずに同じ要領で三つ目も撃ち抜いた。
ウィルはたった7発の魔法で全ての的を撃ち抜いたのだ。
普通、的を撃ち抜く程度の威力に調整すると、コントロールの方が難しくなる。
俺の場合、コントロールを取ったために的に当たれば、直ぐに魔力が霧散してしまう程度の威力になってしまった。
どちらも両立するにはもう少し高度な魔法を使用する必要があるのだが、それを火球でやってるのだからおかしい。
ちょっと地味なので凄さが伝わり辛いのが残念だ。
「やっぱそれ、反則だよな」
「そんな事無いだろ?使用魔法は既存の初級魔法のみってルールにもしっかりそってるしね~」
「あぁ、もう一発でっかいのでぶっ飛ばしてー!」
「それこそ反則だからね」
その後は適当に魔法を放ったり、新しく魔法をイメージして実際に使ってみたり。無詠唱使いの使いやすいイメージというのは、個人でかなり違うので、他人のイメージはあまり当てにならなかったりする。
そんな事をしながら、魔王レグリズについての考察も話したりしていた。ちなみにダンも途中で呼んでおいた。
意外だったのはダンも魔法を使っていた事だが、この話は今でなくとも良いだろう。
魔王レグリズについては全く進展は無かった。
そして次の日、俺は資料庫に来ていた。
目当てはマインだ。いや、変な意味じゃなくて。
「来たのね!エイト!今日は何をしに来たのかしら!」
「今日はお前に用があるんだよ、近々魔王レグリズと戦う事になりそうだからな。精神関連の修行をもっとしときてーんだ」
「ふーん、レグリズねぇ。で?レグリズって誰?魔王とか物騒なんですけど!?」
そこまで喚いてマインの動きがふっと止まる。注目しているのは俺の手元。正確には俺が持ってきた者。
「ねぇ?エイト。それ何?私には人間に見えるわよ?しかも貴族っぽい格好の」
「あぁ、貴族だぞ」
「いやいやいや!ダメでしょ!体と頭がサヨナラバイバイしちゃうよ!?」
「はぁ…俺だってやりたくてやってる訳じゃねぇよ。ま、意識は刈ってるから安心しろ」
俺がこの誰だか知らん貴族様をここに連れてきた理由は、マインの精神干渉の実力を測るためだ。
マインの精神干渉力があまりにもレグリズより下なら、俺の訓練にはならない。
とは言っても考えたのは俺ではなくミリスだ。この貴族は元々ミリスに従っていたそうなのだが、例によって精神支配を受けてしまっていた、と。
この貴族に精神支配を掛けたのはレグリズ。そのレグリズの精神支配を破ることが出来ればマインの実力はかなりの物だろう、という事らしい。
俺としてはマインの実力は疑っていないので、こんな事しなくてもいいんじゃないか、と提案したのだが重要なのはこの貴族の精神支配を解く事だと言っていた。
ちなみに、俺の実力では解く事など出来そうに無いほど強力な精神支配だった。
「という訳だ。よろしく頼むぜ、マイン」
「ぶぅ…なんで私がそんな事…!」
わざとらしく口を尖らせるマインを釣り上げるため、用意しておいた餌を使うことにする。
「やってくれたら夕飯に出てくるデザートをお前の所に持ってきてやろう」
「はいはい!やります!やります!やらせてください!」
最近分かったのだが、マインはかなりの甘い物好きだ。なのでデザートなんかで釣れば簡単にコントロールする事が出来る。
普段、資料庫にいるせいで甘い物なんか滅多に食べられないのだそうだ。
前はたまに王様が持ってきてくれたそうだが…今じゃあんな様子だ。期待する方が馬鹿である。
「それじゃ行くよ!えいっ!」
可愛らしい掛け声と共に貴族に掛けられたその魔法は、魔王の精神支配をいとも容易く消し飛ばした。
俺が見た時はトラップがあったり、かなり複雑に入り組んでいたのだが、そういうのを全部無視して丸々消し飛ばした感じだ。
ちなみにこの威力を、逆に精神支配に換算すれば、この貴族と同レベルの人間を100人支配してもお釣りがくる程だ。
俺はこの貴族一人の精神支配さえも解く事が出来なかったので、マインの力は規格外にも程がある。もし敵だとしたら、戦闘力云々の前に一瞬で無力化されるだろう。
「うわぁ、やっぱお前やべぇわ」
「ふふーん!もっと崇め奉っても良いのよ?」
「はいはい、マインさまーっと」
「心が籠ってないわよ!!」
「そうかも」
「そうかも、じゃなくてアンタねぇ」
むきーっと怒っているマインを軽くいなす。マインは反応が面白いのでからかい概があるのだ。
やり過ぎれば俺に精神干渉してくるから引き際を見極めるのも大事だ。ちなみに経験済みである。
「さて、貴族のおっさんを起こすとするか。変な正確[性格?」じゃないと良いんだが…」
「ウザったかったら支配してあげればいいんじゃない?エイトでも余裕でしょ?」
「あのなぁ…まぁそうするつもりだったけど」
幼い少女の姿で中々にえげつない提案をする物だ。
最初から俺もそのつもりだったので特に反論は無いが…こう、ギャップ的な?あー、もちろん悪い方の。
精神干渉意外の事はちんちくりんな彼女だが、あんまり怒らせない方が良さそうだな、と今さらに考える俺なのだった。
マインが勇者で良いと思う。




