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第17話 中途半端な精神支配

精神力のステータスは精神攻撃を受けたとき、魔法を行使する際に使用します。特に精神干渉を行う際は精神力の消費が大きくなります。

 俺がミリスの意識に入り込むと、ミリスは気を失ってしまった。

 ミリスを俺のベッドに寝かせ、精神に巣食った網目に意識を集中させる。

 目が大きいので、侵入する分には楽なのだが、掴もうとしてもすり抜けてしまうのが難しいところだ。


 精神支配の解除の訓練もしていたのだが、この精神支配は、マインが作る精神支配に比べ、解除の難易度が桁違いに難しい。

 それはマインの技量が劣っている訳ではなく、訓練用に難易度を下げているだけなのだが、今思えばもう少し難易度を上げて貰えばよかった。


 俺は網目をちょっとずつ破壊していく。支えている根本を破壊すれば一発なのだが、かなり巧妙に隠されていて今は出来ない。


「ぐっ…」


 何らかのトラップに引っ掛かったのか、頭に鈍い痛みが走る。どうやらミリスに掛かっていた精神支配の一部が、俺に飛んできたらしい。

 トラップについてもマインに習っていた。ただし、解除の練習はこれからの予定だったので、ここはゴリ押しするしか無い。


 基本的にトラップというのは、精神支配を掛けた者が、簡単には解除されない用に設置する物だ。

 一番多いのは、今俺が引っ掛かった様な精神支配の一部を解除者にも飛ばす事で、支配下に置こうとする物。

 とりあえずこのタイプであれば、俺の精神力のステータスで強引に突破する事が出来る。

 ただ、精神力が無くなる前に解除が出来なければ、俺も支配下に置かれてしまうだろう。


 俺は大量に吹き出していた額の汗を腕で拭う。網目を掴み取るイメージで破壊しているのだが、手がすり抜ける度に焦りが募っていく。

 段々と精神力のステータスも減ってきている。


 解除を開始してから既に一時間。このペースだと後一時間程で解除出来なければ、精神力のステータスは0になってしまう。


「なんとか根元を探さねーとダメか…」


 自分に出来る最高速で破壊しているのだが、一時間では終わりそうに無い。ならば根本からぶっ壊せばいいじゃない、という話だ。

 探すのに時間は掛かりそうだが、消耗は少ないはずだ。

 問題なのは、先にも言った通り根元がかなり巧妙に隠されている点。それが理由で先程は断念したのだが、周りをある程度破壊したせいか、少し根元の位置を感じる事が出来る様になってきた。


 それから30分、俺は根元を探し続け、ついにそれを発見する事が出来た。

 中心の方にあると思い込んでいたのだが、実際は端の方にひっそりと配置してあった。

 もちろん、簡単には解除させないためか、周りは網目で囲まれ、トラップも多く設置してあった。


 だが俺は、その全てを残りの精神力にものを言わせ強引に突破した。おかげで意識が多少遠退いたが気合いで引き留める。

 壁さえ突破してしまえば、残りは根元を破壊するだけだ。俺は手を伸ばし、掴み、引き抜くイメージをして完全に破壊した。


「ふぅ…さすがに疲れたな」


 一先ず一件落着したので、近くに置いてあった椅子に身を預ける。

 かなり精神力を消耗したので、感じている疲れも、この世界に来て一番大きいかも知れない。本当ならこのままベッドに潜り込んでしまいたいが、生憎ベッドはミリスが使っているのでそういう訳にも行かない。


 そんなミリスは先程までは苦しそうにしていたが、今は規則的に寝息をたてている。どうやら落ち着いた様だ。


 寝ているミリスの寝顔をチラッと見てみる。今はあどけない顔で寝ていて、正直めちゃくちゃ可愛い。起きている時もかなりの美少女だが、表情が固いので、こちらの方が魅力的に見える。


「んん…お父様…必ず…」


 一瞬起こしてしまったかと思ったが、ただの寝言だった様だ。

 俺は苦笑しながら椅子を立ち、寝ているミリスに声を掛ける。


「お前の父さんは俺が絶対助けてやるよ。だから今は安心して眠っとけ」


 それだけ言って俺はベッドに寄りかかり、目を瞑り、夜が明けるのを待つことにした。



 翌朝、俺は太陽が出てきたと同時に目を覚ました。気分は良い。昨夜消費したステータスも完全に回復している。


 それだけ確認し、今度はミリスを見てみる。ミリスはまだ寝ている。起こそうか迷ったが、あれだけ消耗したのだ。今はまだ起こさない方が良いだろう。


 そう言えばミリスにはお付きのメイドや執事が居たはずだが、ミリスが俺の部屋から出てこないのを疑問には思わなかったのだろうか。

 取り敢えず考えても仕方ないのでこの事は頭の隅に追いやった。


「ここは…」


 と、そんな事を考えている間にミリスが目を覚ました様だ。


「体調はどうだ?」

「エイト…?」


 俺の名を呟いて、状況を把握するためか周りをキョロキョロするミリス。

 そしてピタッと動きが止まった…と、思いきや顔を真っ赤に染めてベッドに潜り込んでしまう。


「ミリス?どうしたよ?」


 声を掛けても「う~」と呻き声が聞こえるだけだ。起きてるときはいつも表情の変化が無いので、とても珍しい物を見た気分だ。めっちゃ可愛い。

 多分、状況から見て、自分が男の部屋で寝ていたって事に照れてるんじゃないだろうか?え、なにそれ、めっちゃ可愛い。


 暫くベッドの中でもぞもぞ動いているのを見ていた俺は、満足したのでミリスを本格的に起こす事にした。


「ミリス、そろそろ起きろって。昨日の夜の事も話さなくちゃならないからな」

「夜…!?まさか…?」

「いや、そういう事じゃねーよ。いいから落ち着け」


 顔を真っ赤に染めてあらぬ事を考えていそうだったので速効否定しておいた。

 もしかしたらまだ寝惚けてるのかも知れない。


「まぁ結論から言うが、お前に精神支配が掛けられていた。だから俺が解除した。ま、そう言うことだ」

「私に精神支配…?ですが、特に自由意思が縛られていた様な感覚はありませんでしたが?」

「お前、昨日のアレ、覚えてないのか?魔王レグリズの話題を出した時、大部おかしかったぞ?」

「…あぁ…思い出しました。確か、犯人は魔王レグリズだって話でしたね。えっと、その後は…あれ?思い出せません」


 ミリスは最初は思い出せたものの、その後の会話が思い出せない様だ。


「その後は魔王レグリズが犯人だってのを理解しないお前と、伝えたい俺で問答をしていたらお前が苦しみ出したんだよ」


 「だから俺が精神干渉を疑ったら見事に的中したって訳だ」と付け足し、ミリスに掛けられた精神支配の話題に移る。


「そうだな、多分お前に掛けられたのは大方『魔王レグリズと今回の事件』が繋がらない様にする魔法だろうな」

「確かに私は精神干渉に長けた魔王であるレグリズを今回の事の犯人だとは微塵も考えていませんでした。しかし、それならどうして私を完全に支配してしまわなかったのでしょう?殺してしまっても良かったはずです」


 確かにそうだ。ミリスの精神力のステータスはそう高く無いはずなので、他の人間と同じように支配する事も出来たのでは無いだろうか?

 それに魔王ならばミリス一人を殺してしまうなど簡単なはずだ。魔王自らが出なくても精神支配を施した人間を使えば簡単に出来ただろう。


「魔王レグリズが精神に干渉仕切れなかった…?」


 ふと俺は、頭に浮かんだこの考えを口に出す。しかし、それならば高い精神力のステータスを持っていなければならない。もしくは…


「魔道具…?ミリス、お前、魔道具身に付けてるか?」

「魔道具、ですか?」


 少し考えた後、ミリスは首に掛けていたペンダントを手に取り俺に見せる。

 ペンダントには王冠を被った男性と女性、幼い少女が彫られている。


「確かこれが魔道具だったかと…効果は分からなかったのですが、ちょっと前にヒビが入ってしまって…思えばこれが精神干渉を防いでくれたんでしょうね」


 大事そうにペンダントを握るミリスを見つつ、俺はミリスが殺されなかった理由を考え始めるのだった。


久しぶりの投稿ですね!

ちょっと体調を崩したりなんだりで大部遅くなってしまいました…

また自由に投稿していくのでよろしくお願いします!

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