表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/32

第15話 ゴブリン掃討

ちょっと遅くなったのはご愛敬

 俺が殺す。その事にいくらかの抵抗を覚える…と思っていた。

 しかし、今の俺は、殺す、という行為に対して特に躊躇いを感じなかった。

 何故か?と聞かれればレイダスとロムの鮮やかな手並みを見てしまったから、と答える。俺もああなりたいと思った。

 それに目の前の二人が淡々と殺していたので、魔物を殺すというのは、俺にとって害虫を駆除する事と特に変わりは無い。


「分かった。俺がやればいいんだろ?」


 そう言って俺は、思いっきり踏み込み、一瞬でゴブリンの目前に出る。そして持っている剣を横一文字に薙ぐ。

 そうすればゴブリンの胴体が雑に切断された。


「ま、これくらいは躊躇い無くやってもらわなきゃ困るな!」

「そうだな、きっと人を相手にする事もある。その時に躊躇えば一瞬で殺られるだろう。その時までに覚悟しとけよ?」


 二人の顔は真剣そのものだった。ちょっとおちゃらけた感じのあるロムさえも真剣な顔だ。

 俺は二人の騎士としての仕事の話も聞いたりしていたが、その中には盗賊等の人の相手をする事もあったという。つまり、経験者は語る、というやつなのだろう。


 次はゴブリンの素材回収だ。まずはレイダスに首を飛ばされたゴブリンの素材を回収をする。


「おうおう、綺麗に切れちゃってまぁ」

「素材は無事だろ?」

「確かにそうだけどな。でも俺達の標準武器は叩き切る事を目的とした武器だろ?お前の使い方はなんか違うんだよなぁ」

「ロムだって剣士の癖に魔法ばっかり使うじゃないか」

「良いだろ、俺は魔法の方が得意なんだから」


 この二人、めちゃくちゃ仲が良いと思う。

 まぁ、そんなことより今は疑問を解消する方が先か。


「ん?それじゃなんでロムは魔導師部隊にいないんだ?」

「あぁ、ロムは実際に魔導師部隊に居たことはあるんだ」

「ま、家の事情で今は騎士をやってるけどな。ま、俺は剣も使えるから大人しく騎士をやってんの。分かったか?キョウ」

「そうなんだな…ウィル程じゃ無かったけど、ロムの魔法もかなり綺麗だったからな」

「ま、それは比べる相手が悪いってもんだ」


 そう言って笑うロム。

 確かにウィルはあんなに見えて副団長様だからな。ロムの言うとおり比べる相手が悪かっただろう。


「さて、手っ取り早く素材を回収しちまうか。おい、レイダス。アイテムポーチ持ってるだろ?貸してくれ」

「お前、自分のどうした?」

「忘れた」

「忘れたってお前な…」


 しかし、呆れながらもレイダスは腰に提げていた袋をロムに手渡す。

 ちなみにアイテムポーチってのは、空間魔法により中が広げられている鞄の事だ。見た目は普通の鞄、中身は大容量…とかなりの便利アイテムだ。この世界では1人1つは必ず持っている魔道具だろう。

 流石に城が1つ入るような用量のアイテムポーチは値が張るが、家が1つ程度なら意外に手軽なお値段なのだ。

 俺は自作しようと思っているのでまだ買っていない。冒険者には必須アイテムらしいので早目に作っておきたい。ゴージンに聞いた。


「ほら、エイトやってみ」

「お、おう。確か耳を持っていけば討伐が認められるんだったか?」

「そうだ。逆に言えば耳が無ければ討伐は認められないから気を付けろよ」


 レイダスはじとっとした目でロムを見る。それだけで大体察した。つまりロムは証明部位を無くしたりするのだろう。さっき使ってた魔法も火球(ファイアーボール)だったしな。


 取り敢えず俺はナイフを取り出しゴブリンの耳を切り取る。


「おぉ、剣で切った時は気にしてなかったけど、ナイフだと感触が生々しいな」


 剣で切った時はステータスでごり押したので特に感触を気にしていなかったが、今はゆっくり傷付け無い様に切ってるのでダイレクトに肉が分かるのだ。


「そういうのも慣れてくしかねぇな」

「ロムやレイダスも最初はダメだったか?」

「ロムはどうだか知らんが、俺は割と大丈夫だったな」

「マジかよ、お前。俺は吐いたぞ?」


 ロムは吐く動作の物真似をしながら、自分が焼いたゴブリンの耳を剥ぎ取る。

 「なんせ、初めては12の頃だったからなぁ」なんて言いながら笑っている。


「さて、そろそろ次行くか。ここら一帯のゴブリンは掃除しておきたいからな」

「りょーかい。次はエイトもしっかり働いて貰うからなー」

「おう、任せとけって!」


 耳を剥ぎ取ったゴブリンの死体はしっかりと焼いて灰にする。放置するとアンデットになる可能性もあるから、という事だ。


 それが終わらればもう一度ゴブリンを探して歩き始める。

 先程はすぐにゴブリンが見つかったので使っていなかったが、今度はロムが探知(サーチ)の魔法を使用し、策敵範囲を広げている。


 探知ってのは便利な魔法で、人や魔物が常に洩らしている魔力を感じ取る事が出来る様になる物だ。範囲は、実力によって異なるが、平均は大体直径100mの円形程度。ロムは120mなので平均よりちょっと上だ。

 俺は使えない。今は鋭意練習中だ。


 3分も歩けば探知に魔物が引っ掛かる。


「お、居たぞ。今度は20匹の群れだな」

「まぁ、問題は無いだろう。エイトもBランク程度の実力は持っている。だが、油断はするなよ?群れたゴブリンに高位冒険者が命を落とす事もあるんだ」

「そんなの1000匹規模の大規模な群れの話だろ?」

「そうだが…用心する事に越した事は無い」


 ゴブリン、俺が思っていた以上に危険な奴かもな。1000匹規模の群れ…想像しただけでぞわっとする。流石に王都は落とされないだろうが、小さな街や村程度ならば簡単に呑み込んでしまうだろう。


「あ、1000匹規模の群れなんて10年に1回程度だからな。そん時の事を考えてても仕方ねぇよ」

「10年に1回?俺は毎年の様にあんのかと思ったぞ」


 俺がゴブリンの群れについて考えている事が分かったのだろう。そうロムがフォローしてくれる。

 俺は安堵の溜め息を吐きつつ、そろそろ見えてきたゴブリン20匹に意識を向ける。


「見えてきた。武装は…さっきと似たようなもんだ。だけど3匹だけ槍を持ってる」

「そうみたいだな。それじゃあエイトと俺で突っ込む。ロムはどうする?剣使うか?」

「うんにゃ、俺は後ろから魔法打ってるよ」


 ロムが探知を使い、俺がゴブリンを視認し、レイダスが作戦を立て…というのが俺達の役割分けだ。

 探知はロムしか使えない。俺は魔力量が一番多いので視力を一番強化できる。レイダスは自分が戦っている中でも周りを見る事が出来るので、リーダーの役回りをして貰っている。


「分かった。キョウ!行くぞ!」

「おう!」


 そして二人同時に走り出す。俺は二人の様な気配を殺した走り方は出来ないと先程言っておいたので、ただ速さだけを求めた走り方をしている。

 それでも流石にこちらに気付かれた。


「グギャ!ギャギャ!」


 群れの1匹が鳴けば周りのゴブリンも臨戦体制に入る。

 だが、その瞬間には俺とレイダスは目の前だ。レイダスが剣を一振りすれば、2匹のゴブリンの首が飛ぶ。

 俺も負けじと2匹のゴブリンの胴体を叩き切る。


 そこまでやって一度後退すれば、後ろから火球が飛んできて、2匹のゴブリンの胴体を貫いた。

 もうゴブリン達はパニックだ。無茶苦茶に向かってくる。逃げたりされると面倒なので丁度良い。ちょっと怖いけど。


「ふっ!」


 レイダスが鋭い呼気と共に剣を振るえばゴブリン達は一瞬で両断される。

 あれは確かにこの剣の使い方じゃないな、みたいな事を考えながら、俺も剣を振る。時折、麻痺(パラライズ)の魔法で動きを止めたりしながら、強引に倒して行く。

 ロムはと言えば、俺達から逃げようとするゴブリンを火球で倒していた。


 そして5分も戦えば、20匹のゴブリン程度すぐに倒し終わる。

 剥ぎ取りを終えれば、また草原を練り歩きゴブリンを見つけ次第掃討していった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ