第14話 ゴブリン討伐
2日空いてしまいましたが、投稿します(-_-;)
無事に冒険者になって3日が経った。この3日間は今まで通りダンとウィル、マインと訓練をしつつ、魔王レグリズについて調査を行っていた。
とは言っても分かった事と言えば、フォレスガルムの勇者パーティについてだけだったが。マインの資料庫にレグリズに挑んだ勇者パーティについて記載された本があったのだ。
まず、勇者の名前はガイル。当時、森獣剣フォレスガリアを操る事が出来た唯一の男だった。獅子の獣人で、彼の巨体から繰り出される斬撃は森を1つ切り裂いたとも言われている。
次はヒーラーのルミネ。聖女とも呼ばれたエルフで民からの人気も高く、部位欠損までなら問題なく回復出来た。
魔導師、ドルド。犬の獣人の男。魔力の扱いが苦手で魔力総量も少ない傾向のある獣人だが、彼は巧みに繊細に魔法を使用し、勇者をサポートした。
タンクのガナン。サイの獣人の男。巨大な盾を自在に操り、物理攻撃、魔法攻撃を後ろに通す事は無かった。
最後に斥候のルリ。ネズミ獣人の少女で、スキルにより体を自在に小さくすることができ、どんな場所でも正確に情報を仕入れた。
ざっとこんな感じだ。このパーティを壊滅させるレグリズに戦慄を覚える。
多分、精神干渉魔法を使用したのだろう。それならこの勇者パーティでも対応出来ない分野だと思う。
勇者ガイルは生き残れたというのは、勇者特有の高い魔力で軽減出来たのかも知れない。廃人同然になってしまったのは無効には出来なかったからだと思う。
俺の場合はマインという優秀な精神干渉魔法の先生がいるので、しっかりと対応出来る様になりたい。未だにマインに簡単に操られるのは内緒だ。
そう言えばマインに、資料庫に来た国王に精神干渉が掛かっていなかったか聞いたのだが…「え?そんなの一々確認してないわよ!」だ、そうだ。
まったく使えな…いや、マインにそういうのを期待する方が馬鹿なんだ。
まぁ、その事は置いといて、本日は冒険者活動の日だ。
という事でレイダス、ロムと共に冒険者ギルドに来ている。
「今日は簡単な依頼を受けるぞ」
そう言ってレイダスは数々の依頼が貼ってあるボードまで歩いて行く。
「俺達はパーティで登録してるからな。俺とロムがBランクだから、Bランク依頼まで受けられる」
「二人は騎士だろ?冒険者登録なんてしてたのか?」
「騎士の殆どは冒険者登録してるぜ?外で仕事する時にギルドカードは便利だからな」
例えば、騎士の仕事で討伐した魔物は、国に提出する訳では無く、討伐に参加した騎士で分けられる。そういう時にギルドカードを持っていけば、ギルドに卸して追加で収入を得る事が出来るのだ。
という事をレイダスが教えてくれた。
「ま、今日はEランク依頼辺りを受けるとするか」
「Eってーと…ゴブリン辺りか?ま、Fランクと言えどもB程度の戦闘力はあるエイトだったら楽勝だろうけどな」
ゴブリン!これまた異世界物の定番だ。醜い容姿の魔物として、数多くの作品に登場している。
やっぱり異世界に来たらやっておく事と言えばゴブリン討伐だろう。新米冒険者の最初の壁。とは言っても俺の場合、ステータスはそれなりに高いので、壁にはなり得ないかもしれない。
だが、定番通りなら人に近い見た目をしているハズだ。そんなゴブリンを俺が殺せるのか、そこが今回の肝だろう。この世界で生きていく以上、命を奪う事は避けられないと思う。
そりゃ一般人として生活していればそんな機会は中々無いだろう。
だが俺はミリスに力を貸す事にしたし、冒険者の登録もした。それに俺自身、華々しい活躍をしたい。
そうなると人の命だって奪わなくてはならなければ行けない事もあるかもしれない。
そこまで考え俺は気合いを入れる。相手はゴブリンだが、この世界での心構えを作るにはおあつらえ向きかも知れない。
「キョウ、これが今回受ける依頼だ。これをカウンターに渡して来てくれ。俺は必要な道具を揃えてくる。ほら、ロムも手伝え」
「おう、これを持っていけばいいんだな」
「へいへい、仰せのままに」
俺はカウンターに目を向ける。すると直ぐにアイシャを見つけた。
他にも受付嬢は居たが、取り敢えず顔見知りのアイシャまで依頼書を持っていく。
「よっ、アイシャ。今日は依頼を受けに来た。この依頼だ」
「ゴブリンですね。パーティメンバーは?」
「ランクBのレイダスとロームランだ」
「それなら問題はありません。気を付けてくださいね?最近、ゴブリンの目撃情報が増えていますから…」
「あぁ、分かった。情報ありがとな」
その後、買い出しを終えたレイダスとロムに合流し、王都の外に向かう。ゴブリンは王都を出てすぐの平原に生息しているらしい。
「王都の外に出るのは初めてだな」
「そうか。そんなに面白いとこじゃないぞ?」
「そうそう、魔物も多いから面倒ったらもう…」
そんな事を話ながら歩くこと一時間。ようやく王都の正門に到着した。ここで一度手続きをしなくては外に出ることは出来ない。
「凄い人だな…向こうの方までずっと並んでるのか?」
「そりゃ王都だからな。ここに用がある人間はたくさんいるさ。ま、俺達は冒険者用の手続き所があるから直ぐに出入り出来るけどな」
言った通り、正門は凄い人の数だ。王都に入ろうとしている人の列は最後尾が見えないし、出ようとしてる人だってかなりの数がいる。
これに並ばなくて良いのは正直かなり助かった。
俺達、冒険者用の手続き所は正門の端にあった。既に多くの冒険者が居るが、一般用の手続き所程では無い。
他に貴族用の場所もあるが、そちらは殆ど顔パス状態の用で、列は出来ていなかった。
受付にギルドカードを見せ、無事に王都の外に出る事が出来た。
王都の外は草原で、一本の大きな道がずっと向こうまで続いている。この道が街や村を繋いでいるのだ。
「ここからゴブリンがいる場所までは20分位歩けばつくからな」
「ゴブリンの討伐なんて久しぶりだなぁ!3ヶ月ぶり位か?」
「普段はどんな魔物と戦ってるんだ?」
少し興味の沸いた俺はそう質問してみる。
「んー、一番多いのはオークか?他にはアンデット系の魔物も多いな。アンデットは倒しても倒してもどこからか沸いて来やがるからめんどくせぇ。オークみたいに肉が旨い訳じゃねぇし」
「へー、オークか。それってあれだろ?豚頭の…」
「そうそう、良く知ってるじゃねーか」
そんな感じで二人の普段の仕事の話を聞きながら暫く歩くと、レイダスが突然歩みを止めた。
ちなみに、既に道を離れて暫く経っている。
「ほら、あそこが見えるか?あいつらがゴブリンだ」
「あれが…」
目測で20m程離れた場所に、子供程の大きさで緑の体色をした生き物が5匹居る。
5匹はそれぞれ、錆びてはいるが、長剣や短剣を持っており、しっかりと武装はしている様だ。
「よし、まずは俺とロムがあいつらを倒す。良く見ておけよ」
「えー、お前だけで良いじゃんかよ」
「俺達の戦い方を見せる必要があるだろう」
そう言うと二人は同時に走り出す。速さは俺でも追い付ける程度だが…音が最小限だ。良く集中しなければ聞こえない。
仲間内で騒いでいるゴブリンは案の定二人に気付いた様子は無かった。
「ふっ!」
レイダスが持っていた剣を振るえば一体のゴブリンの頭が飛んだ。
そしてゴブリンが仲間の異常に気づく前にロムが魔法を詠唱する。放つのは一番詠唱が短い火球。
発生した2つの火の球は2匹のゴブリンの胴体を正確に撃ち抜いた。ゴブリンの討伐証明部位である耳を損傷させない為の配慮だろう。
そこでようやく対処に動き出した残り2匹のゴブリンだが、レイダスがもう一度剣を振るえば、もう1匹の首も飛ぶ。
やろうと思えば2匹とも飛ばす事も出来ただろう。それをしなかったという事は…
「エイト、最後の1匹はお前がやるんだ」
つまりはそういう事だろう。