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第13話 見えてきた敵

昨日の内に投稿する予定だったんですけどね…なんでこうなったんだろ?答えはサボってたからですね!

 アイシャと付き合えるかも、なんて考えた交際経験一切無しの俺は、そこで目的を思い出す。


「あぁ、アイシャ。話を戻すけど、俺はギルドカードを作りに来たんだ。お願いできるか?」

「あ、はい。了解しました。それではこちらの用紙に必要事項を記入してください。名前意外は基本的に無記入でも構いません。ギルド職員による代筆も可能ですがどう致しますか?」

「大丈夫だ」


 渡された用紙に目を通す。そこには名前、年齢、出身地や使用武器等々。

 取り敢えず俺は名前と使用武器を記入しておいた。


「これでいいか?」


 俺が渡した用紙をチラッと見たアイシャは「大丈夫です」と言って軽く微笑んだ。


 俺がギルドカードを作ってしまえば俺の歓迎会の時間だ。ギルドの酒場の各テーブルには数々の料理や酒がこれでもかと積まれている。


「よっしゃ!今日は俺の奢りだ!新たな仲間、キョウの門出を祝って!乾杯!」


 ゴージンが音頭を取れば、ギルド内は沸き上がる。というか、ざっと60人はいるんだが、その人数全員に奢る事が出来るゴージンの収入って…

 いや、今はこの場を楽しもう。俺も酒を手に取り、近くに居た冒険者と木のカップを打ち合わせる。


 後は周りの冒険者と喋り、騒ぎ、歌い、食って、飲むだけだ。

 俺は城とは全く違う、この空気に心地よさを感じつつ、大いに楽しむのだった。


 結局その後、仕事などせずに俺の歓迎会という名の飲み会を朝方まで行った。

 そして判明したのだが、ステータスが高い者は酒に強い傾向がある、と言うことだ。いや、ステータスが本当に関係しているかどうかは知らないが、実際に俺を含めてレイダスやゴージン、その他にも数名の高ランク冒険者は飲み会の最後の方まで残って飲んでいた。

 恐らくだが、どれかのステータスが状態異常体勢にも関係しているのでは無いだろうか?

 それでも、高ランク冒険者の内の何人かは早々にダウンしていたりしたので、もしかしたら普通に体質なのかもしれない。


 一番最後に今までの考察を全て台無しにしつつ、俺は冒険者達の残骸…違った。床に転がり爆睡している冒険者達を避けて歩きつつ、カウンターに向かう。

 カウンターには既にアイシャが立っていた。まだ日が昇り初めたばかりなのだが、ギルド職員はいつ寝ているのだろうか?


「はよ、アイシャ。朝早いな。いつ寝てるんだよ」

「しっかりと皆さんが騒いでいる間に寝させて頂きましたよ。それにこの時間から依頼を受けに来る冒険者の方もいらっしゃいますので、いつもこの時間には居ます。キョウさんこそ早いですね。大分遅くまで飲んでいたんでしょう?」

「まぁな。なんとなーく目が覚めちまって。あ、水貰えるか?」


 酒でぐでんぐでんになって帰って来た父が翌朝に水を飲んでいたのを思い出しつつ、注文をする。

 アイシャは直ぐに水を持ってきてくれた。それを一気に煽ると、まだ多少火照っていた体が覚めるのを感じた。


「にしてもみんな凄いな。ここに来るまで殆ど足の踏み場が無かったぞ?」

「ここではたまにある光景です。私もギルド職員を初めて1ヶ月程ですが、既に三度程。私も最初は驚きましたね」


 そう言って苦笑するアイシャ。その苦笑が何となくアイシャに合っていて、俺と同じくらいの年齢だと思うのに、既に苦労性感があった。

 多分、ギルド職員になる前も友達のお願いを断れなかったり、なんだかんだで手助けをしてしまうタイプだ。めっちゃ良い子。


「そう言えば、他の職員さんは?アイシャ意外見かけないけど」

「あぁ、先輩方は帰宅しました。今居る職員は私と、あちらの買い取りカウンターに居る私の同期くらいですね」


 アイシャが指差した方を見れば確かに「買い取りカウンター」と書かれた場所に少女が居る。

 そちらを向いていると、向こうも気付いたのかこちらに手を振ってくる。アイシャがクール系なら彼女は可愛い系だろうか?明る目の茶髪をツインテールにしている。身長は低めで、胸はデカい。ミリスもアイシャも控え目なので少し新鮮かもしれない。


「エイトさん、何か変な事考えてます?」


 顔を戻せばちょっと恐い笑顔のアイシャさんが。昨日の照れちゃったアイシャさんに戻ってくれませんかね?


「い、いや、特に何も」


 溢れ出る動揺をなんとか最小限に抑えつつ返事をする。女の子はどうしてこんなに鋭いのだろうか?うちの姉ちゃんもこういう事には鋭かったしどうなってんだ…


「あぁ、それより。昨日ちょっと気になる話を聞いたんだよ。話を聞いてた冒険者が酔い潰れちまって詳しく話を聞けてねぇんだ」

「はぁ?それで?」

「いや、知ってたら教えて欲しいんだよな。レグリズって魔王の事、ちょっと気になったんだよな」


 そう、今俺がアイシャの所に来たのは魔王レグリズについて聞くためだ。

 魔王レグリズってのはアグレシア王国の近くに拠点を構える魔王らしい。

 悪評の絶えない魔王ってとこまでは、昨夜に先輩冒険者に聞いていたのだが、その先輩が早々に酔い潰れてしまったので詳しくは聞けていなかったのだ。


「魔王レグリズですか…彼の魔王の悪評は酷いです。曰く家族の内、父親以外を全員殺した、とかそういう物が多いですね。大きいのでは村を1つ壊滅させたとか。しかも執拗に恐怖を煽っていたらしいですね」

「性格が悪いの範疇を越えてるな。そんな事を繰り返してたら討伐されるんじゃないか?」

「村の壊滅や人殺しに関しては一切証拠が残っていないのです。証拠があれば国が動くでしょうが…」


 なるほど、証拠が無いから動けない、と。この世界では魔王が一概に悪という訳ではないので、一般人と同じ扱いをしているのだろうか?

 魔王ってだけで討伐されそうな物だが、そんな事は無いんだな。


「なるほどな、他に分かっている事はあるか?」

「そうですね…レグリズの城はアグレシアとフォレスガルムの丁度間にあります。しかしどういう訳か、招待された者にしか城は見付けられないそうです。私たちの間では強力な精神干渉魔法では無いかと考えられています」

「精神干渉魔法か…それなら誰かが破れそうな物だけどな?」

「魔王は強力な存在ですから…対抗できる人も限られています。それに精神干渉はあまり使われませんから…」


 魔王の精神干渉を破るほどの使い手はいないって事か。もしかしたら、マインが破れるかも知れないが、彼女は契約で資料庫から出られない。

 精霊族は種族特性上、契約に縛られると自由が殆ど無くなるらしい。とは言っても、精霊族側から一方的に破棄する事も出来るので立場としては精霊族の方が強い、とマインが言っていた。


「精神干渉魔法を操る魔王…怪しいな…」

「どうかしました?」

「ん、いや、なんでも無い。他には何か無いか?」


 俺がそう言うとアイシャは腕を組んで唸り出す。記憶から情報を引き出そうと頑張ってくれてるみたいだ。


「そ、そんなに無理しなくても大丈…」

「あ、もう1つ思い出しました。私が生まれる前の話なので、ちょっと思い出すのに時間が掛かりましたね」

「どんな話だ?」

「今から20年程前に、フォレスガルムの勇者がレグリズの討伐に向かったそうですね。フォレスガルムはレグリズを倒すべき敵としたそうです」

「でも、レグリズはまだ生きてるんだろ?」


 そう、レグリズは生きている。と言うことは…


「はい、当時の勇者は敗北しました。フォレスガルムの歴代勇者パーティの中でも最高クラスだったらしいです。名前までは覚えていませんが、勇者にヒーラー、魔導師、タンク、斥候と誰もがトップクラスの実力だったそうです」

「それで負けたのか…」

「はい、辛うじて勇者は帰って来たそうなのですが、ずっと何かに怯えていて廃人同然になってしまった様です」


 魔王レグリズ…今の所は仮想敵の段階だが、戦う事を想定して動いた方が良さそうだ。


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