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第10話 資料庫の管理人

「ここに人が来るなんて久しぶりね~!」


 そう言いながら俺の周りをくるくる歩き回る少女。そろそろ鬱陶しいので止めて戴きたい。


「で?お前は何なの?」


 それを聞いた少女は「よくぞ聞いてくれました!」みたいな顔をして鼻息を荒くする。そして吐いた分の息を吸い込み、本が被っていた埃を吸い込んだのか盛大にくしゃみをした。

 それでもめげずにドヤ顔を貫いた少女は満を持して口を開く。


「私はここの管理人!精霊族のマイン!」

「そうか。よろしくな、マイン」


 素っ気なく返事をしつつ、もう一度手元の本に視線を戻す。正直、精霊魔法の時にも出てきた精霊族に興味はあるのだが…それ以上にマインに付き合っていると疲れる気がしてならない。

 だから横で膨れっ面をしている精霊族にも気が付かないフリをする。


「ねぇ!もっとなんかリアクションがあるでしょ!」

「例えば?」

「『えぇ!?』とか『そうだったのか!?』とか『君があの!?』みたいな」

「えー、そうだったのかー、君があの?」

「感情がっ!込もってなぁぁい!!」


 そう言って床をジタバタと暴れるマイン。勿論、床は埃が積もっているので「ハクション!」と2発目を容赦無く打ち込んでいた。

 この精霊、ここの管理人とか言っておきながら掃除なんかは全くしていない様である。


「うぅ…もういい…それより貴方、お名前は?」

「エイト」

「分かったわ、エイトね!でもエイトさっきから反応薄くない?冷たくない?」

「いや、お前とまともに喋ると疲れそう…な予感」

「予感!?ねぇ、予感で冷たくしてるの!?しかも初対面で失礼すぎない!?」


 ロリっ娘…違った。マインがキンキン騒ぐので、そろそろ真面目に対応しようと思う。


「わかった、わかった。一回落ち着けって」

「落ち着いて無いのはエイトのせいなんですけど!」

「そう言えば、マイン最初に言ってたよな?人が来るのは久しぶりって。資料庫なんだし人くらい来るだろ?」

「スルーなの!?ま、まぁいいわ。前は頻繁に人が来ていたのだけれど…1ヶ月くらい前から誰も来なくなっちゃったのよね~」


 1ヶ月前と言うと、ミリスが言っていた国が変わっていたのと時期が被る。


「一回だけおーさまが来たんだけど、何故か私を呼び出さなかったし…何か変だったから私も陰から見てたの」

「王様は何を探してたんだ?」

「うーん、感情についての本だったかな?」

「感情?」

「うん、「感情操作の仕方」とか物騒なタイトルの本だったと思うよ」


 感情操作…他の権力者達にそれを使って洗脳紛いの事をしたのだろうか?

 これは確認してみるのが早いか。


「マイン、俺にもその本見せてくれるか?」

「いいよ、ちょっと待ってね!」


 マインがちょいっと指を動かせば、一冊の本が本棚から飛び出してくる。

 先程は見ていなかったが、なるほど確かにここの管理者なのだろう。本の場所を正確に覚えていなければこんな芸当は出来ないハズだ。


「これだよ」

「あぁ、ありがとう」


 礼を言ってから本を受け取る。表紙には確かに「感情操作の仕方」と書いてある。

 まずはサラッと目次を見てみる。



1,相手の感情を理解する

2,相手に同調する

3,相手をリラックスさせる

etc…


 こんな感じの内容がずらずらと合ったが、本当に軽く感情を動かせる程度の様なので、多分違うと思う。

 ならば何故、こんな本を読んで行ったのかは謎になるのだが、今は考えても仕方ないだろう。


「よし、この本は確認できた。ありがとな、マイン。それじゃ次は「精神干渉」に関する本を持ってきてくれないか?魔法やスキルの本だったら嬉しい」

「良い様に使われてる気がするけど…ま、いっか!わかった、精神干渉ね」


 そしてさっきと同じ手順で俺の前に積まれていく数々の本。今度は大分数が多い。


「こっちから右半分が魔法書、こっちから左半分がスキル集だよ」


 スキルの取得条件は良く分からないので魔法を先に読み始める。

 すると早速1ページ目から使えそうな魔法が記載されていた。


「『精神防護(マインドプロテクト)』…ね」


 この魔法はその名の通り、精神を守る事の出来る魔法だ。謂わば精神に着る鎧である。

 今のところ敵は、一般に「精神干渉系」と呼ばれる魔法、またはスキルを使用してくると予想している。

 そうなってくると、怖いのは見えないところからの攻撃だ。物理的な攻撃ならば回避するなり防御するなり対応できるかも知れないが、精神干渉は恐らく見えない。

 試した事は無いが語感からしてそんな感じがする。


「えっと、詠唱は…『理よ、心を守れ』か…イメージで無詠唱が出来れば良いんだが」


 記述によれば精神というのはその人の一部の特殊な魔力の流れの事らしい。

 取り敢えず、魔力を掴んだ時の様に意識を底の方に沈めて行く。すると、魔力の流れが見えてきた。

 暫く潜っていくと渦の様になっている魔力の流れが見えてきた。恐らくこれが特殊な流れってやつだと思う。

 そしたら後は簡単だ。これを守る様にイメージをすれば良い。この流れが壊れてしまわないように大事に大事に。

 精密な魔力制御はまだ出来ないが、これくらいなら大雑把にでも出来そうだ。

 精神ってもっと繊細なイメージだったが守るだけなら魔力量でごり押してもなんとかなるらしい。


 そして魔法が完成したので、意識を底から引き上げる。


「何か変わった感じは…しないな」


 見た目に変化があるとは思わなかったが、感覚が少し変わるかと思っていたのだが、特になんともない。

 効果がしっかり発揮できているかも分からないが、まぁそれはいいだろう。


「ふーん、初めてにしては上手く出来てるじゃない!でも私からするとムラがあるわね。それだと隙間から入られちゃうわよ?」

「隙間?そんなのあるのか?」

「そうよ!今のエイトの『精神防護(マインドプロテクト)』は頑丈な網なの!網目よりも大きな精神干渉は通さないけど、網目よりも小さければ簡単に通してしまう。そんな感じね!」


 そう言ってドヤ顔をするマイン。ちょっとウザいが、欠けている物を教えてくれた事で相殺しておく。


「実演してあげるわ!今から私が『精神接続(コネクト)』の魔法を使って貴方の精神に干渉してみるわね!」


 そう言って、また指をちょいっと動かせば、直ぐに俺の体は動かなくなった。


「どう?動けないでしょ?私なら力尽くで押し通っちゃう事も出来るんだけど、今回は網目を通らせて見たわ!」

「………」


 そう言ってまたドヤ顔をするマイン。そんな事より速く魔法を解いて欲しい。動けないわ、喋れないわで結構キツいのだ。

 しかし、現実は非情だ。マインはすっかりと自分の世界に入ってしまい、「この魔法でイメージするのはね~」とか「他にもこんな魔法があるの!」とかそんな事を延々と話している。


「この魔法を方陣魔法で使うと、より効果が強力になって、持続時間が延びるの!…ねぇ、さっきから反応が無いんですけど!もっと褒めて讃えてくれてもいいんだよ!?」

「………」


 もちろん、今まで聞いた話はどれも有用な物だったので、褒めて讃えはしないが、質問はしたかったし、反応だってした。

 しかし、如何せんマインの魔法が掛かったままでそれを伝える事も出来なかったのだ。それは無理な相談である。


「んー?石みたいに固まっちゃってどうしたのよ!…あ。私が魔法使ったんだっけ…てへ☆」


 そう言って「今解くから怒らないでよ~」と言いながら魔法を解いてくれた。


「いや、勉強になったぞ。ありがとな、マイン」


 怒られると思ってうずくまっていたマインはその言葉に一縷の希望を見いだしたのか恐る恐る顔を上げる。


「そ、そうよね?これくらいで怒るエイトじゃないわよね?」


 俺は、完全に顔を上げたマインの額にゆっくり手を伸ばし…思いっきりデコピンをしたのだった。 

 

今日は2話投稿…したかったなぁ

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