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最下級の冒険者であっても、混沌龍へと挑む事なら出来る【10】

『時は来ました』


 ポゥ……


 声と同時に、淡い光がユニクスの周囲に出現し、優しく包み込んで行く。


 ……そして。


『優しき悪魔……いいえ、人間になったユニクスよ。貴女に勇者としての称号とその能力を託します』


 どこからとなく聞こえて来た声は、この台詞を最後に消え去った。


「………なんだったのだろう?」


 まるで狐に摘ままれたかの様な気分だった。

 自分でも良く分からない。


 なんの脈絡もなく光が差し込んで来て、何だか良く分からない内に光が霧散していた。


 けれど、判然としている事が一つだけある。


「何だろう?……力がみなぎって来る」


 別段、何か外見が変わったと言う訳ではない。

 強いて言うのなら、中身が変わったと言うのが正確な表現だろうか?


 結局、声の主が何者であったのかは分からないが……確か、勇者としての称号と能力を自分に与えると言っていた。


 ……そう。


 この瞬間、勇者・ユニクスが誕生したのである。

 神の啓示を受け、正式に勇者としての力を得たのだ。


「おい、ユニクス! 大丈夫かっ!」


 そこでリダが物凄い形相で、勢い良く飛んで来た。


 比喩でもなんでもなく飛んで来たリダは、


「……お、お前……本当にユニクスか?」


 思わず、こんな台詞を吐き出してしまった。

 ユニクスの中では結構な時間が経過していた感覚なのだが、実はそれ以外の存在は時間的に一瞬だった。


 リダの視点からするのなら、ユニクスが謎の光に包まれた様にしか見えていない。

 そこから一瞬にして光は消え去った。


 光が消え去った後、残ったのはユニクスだけであったのだが、その姿……否、内に秘めているのだろう力が段違いに違った。


 これまでギリギリLマイナスのラインを上回っていた程度の能力だったユニクスが、現在は無印Lのライン付近まで上昇している。

 一見すると同じLマイナスに見えるかも知れないが……実は違う。


 最上位でもあるL帯にもなると、根本的に能力の幅が大きくなるからだ。

 

 分かりやすく、数値で比較すると良いかも知れない。


 例えば、D帯のステータスがあったとする。

 攻撃力が10程度だったとする。

 この場合だとD-が、無印D程度の実力と認められる数値は大体15程度だ。


 次にL帯。

 仮に最初の攻撃力が18,000だったとする。


 これがLに成り立ての基礎攻撃力だとすると、無印L相当の攻撃力は300,000とかになる。

 レジェンドと言うランクは、冒険者協会が定める最高のランクにして、反則的な能力を持つ存在を想定して作ったランクである為、対応する数値も驚異的に大きい。


 元々、上位のランクに行けば行くだけ簡単にランクアップする事が出来ないシステムになっているのだ。

 最上段に位置するL帯は、まさにその象徴とも言えるだろう。


 よって、これまでの攻撃力が18,000だったものが……例えば250,000に変わってもランク的には同じと言う扱いになる。


 ……はてさて。

 余談もそこそこに。


「やばいな……それ。一気に私達を抜かすんじゃないかって勢いのレベルアップしてるぞ……一体、何があったんだよ?」


 もう驚く事しか出来ないリダ。

 特に探索魔法サーチをした訳ではないが、リダの場合はある程度までなら見るだけで相手の実力が分かる。


 ……故に、ユニクスはあの一瞬で別人になったとしか、他に表現する事が出来ないレベルだったのだ。

 

「それが……私にも良くわかってないのです」


 ユニクスは肩をすくめて苦笑した。

 これが、ユニクスなりの正直な感想だった。

 本当に、全くもって分からない。


「ただ……声がしました」


「声?」


「はい、そうです……声の主は私に勇者の力を授けると言い残して、消え去りました」


「………」


 リダは無言になった。

 そこから、両腕を組んで唸り声をあげる。

 心なしか、変な汗までかいている様にも見えた。


「とうとう、本物の勇者になったのかよ……」


 そして、現在のユニクスは勇者一年生。

 抽象的に言うのなら、勇者へとクラスチェンジして勇者レベル1に変わった。


 つまり、それは……今の基礎ステータスはレベル1と言う事になる。

 ハチャメチャな延び代だった。


「くそ……何処の世界も、勇者と賢者はスーパー優遇されてるんだよな……こっちは思いきり努力してるって言うのにさぁ……はぁ」


「あ、あのぅ……リダ様? 今、リダ様の周囲に凄い負のオーラが見えるのですが……気のせいですか?」


 こうべを垂れるリダに、ユニクスは苦笑する事しか出来なかった。

 

 ちょっと、呑気な空気が二人の間に生まれる。


 ……だが、そんな悠長な事をしている場合などではなかった。

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