最下級の冒険者であっても、混沌龍へと挑む事なら出来る【6】
「深層心理にダイブすると言うのが地味に危険だから、そこらをもう少し煮詰めて話し合う必要はあるかも知れないが、その路線で行動を起こした方が良さそうだな……よし、私の案は却下にしようか」
リダは肩をすくめて答えた。
心情的に見ても、街の住民達を考慮しても、みかんが提示した内容の方が優良だ。
「いえ、取り敢えず第二の案件として保留にして起きましょうか」
しかし、みかんはやんわりと笑みを作ってから、首を横に振った。
これに、ちょっとだけリダは不思議そうな顔になる。
「……? みかんの案だけで十分行けるんじゃないか?」
「最悪の状況も熟慮しないといけないです。リダの案は色々と想定した上で、最悪のパターンに陥った時に適用されると予測出来ます。つまり、考えておいて損はないと言う事ですねぇ」
「なるほど、なんだかんだで戦闘になってしまった時の作戦として考えるって事か」
「そうなるです」
頷くリダに、みかんも即座に頷きを返した。
……その後、二人の話し合いがしばらく続いて行く。
途中、ユニクスやフラウがやって来て、話し合いに参加しようとも考えたが、結局は話の輪に混ざる事が出来ずに、ただ二人の会話を耳に入れるだけにとどまった。
それは、その場にいたシズも同じである。
「う~……う~……」
シズの場合は耳に入れているのかどうかも怪しい感じではあったが。
根本的に会議の類いが苦手だったシズ。
仕事の会議でも良く居眠りをしてしまうシズ。
こんなんでも冒険者協会では国代表をしているのだから世も末だ。
そして……そんな国代表であっても困らないクシマ国は、なんとも平和な国と言えるだろう。
何はともあれ。
一時間程度後に、リダとみかんの二人による話し合いは終了し、
「それじゃ、まずはみかんの案を第一、私の案を第二案件として考えて、その状況に合わせて行動するって感じで良さそうだな」
「そうですねぇ~。とりま、今回の案に適合する状況になった時は、必然的にそっちを優遇する形で行動するのが良いかもです」
互いに情報を伝え合い、今後の方針をより明確な形に変えて行った。
まとめると、こうなる。
現時点での目標は、五大池に封印の魔法陣を設置する。
ここは、これまで通りだ。
そして、混沌龍の催眠魔法を解除する方法は、彼女の深層心理に潜り込む作戦で行く。
この作戦で深層心理に潜り込むのは、カグ・カサブの二人と、みかん達のパーティー。
リダ達はお留守番となる。
これは、もしこの作戦が失敗した場合、誰かが後釜を引き受けないと行けないからである。
その後の方法はどうあれ、みかん達が失敗して戻ってこなかった時は、リダ達が第二部隊として催眠魔法の解除をやり遂げると言う二段構えの状態を作った。
リダの提案した内容については、保留扱いではあったがちゃんとシミュレーションする形で一定の話し合いがなされ、戦闘するに当たっての作戦も用意して行く。
可能であるのなら、この作戦にならない方向で行きたい所だが、想定される予測の一つとして考えて置く必要はあるだろう。
……と、この様な形で全体的にまとまった。
「それじゃあ、後は実際に行動に移すだけかもですねぇ」
「そうだな。明日の昼間にゴヒャク池の迷宮を攻略しようか」
話し合いも終わり、明日の昼間に行動を開始する所が決まった所で……。
「今日は、ぱぁ~っと飲もうぜぇっ! 多分、私にとってクシマで飲める最後の酒になりそうだしな!」
リダが一瞬でタガを外して来た。
みかんはちょっとだけ苦笑した。
そして、ちょっとだけ気になった。
「リダ達はフラウさんやユニクスさんの里帰りに便乗して、コーリヤマ観光をする為に来ていたんじゃなかったのです?」
みかんが知る限り、そうと聞いていた。
もしそうであるのなら、混沌龍の一件が終わったとしても、そのまま観光の続きに変わるだけの筈だ。
しかし、リダの口振りからするのなら、その後は直ぐにコーリヤマの街を後にする様な感じだった。
「何か急用でも出来たです?」
「急用と言うか、野暮用かな?……私にも良く分かってないんだけど、ニイガが大変な事になってるらしい」
「……およ~」
やや考える仕草を作りながら答えたリダに、みかんはちょっと眉を捻った。
取り敢えず、大変な事になっていると言う事だけは分かった。
「それじゃあ……この一件が片付いたら、みかんもニイガに行くです。きっと助けは多いに越した事はないでしょうからねぇ」
その後、みかん達とリダ達のパーティーがイリVerの後半に殴り込みを掛ける形で登場する事になるのだが……Ver違いで展開している物語の内容なので、ここでは余り触れないで置く事にしよう。




