【6】
これまであった熱気が一瞬にして冷気が競り勝ち、辺りは少し肌寒いレベルまで急激に温度が下がる。
同時に、これまで完全に透明と化していた階段が白く濁った状態で二人の眼前に現れた。
「階段だったのか」
「急ぐです!」
白く濁った、ガラスの様な階段が現れた直後、みかんは素早く階段を駆け降りた。
「?……おい。待てよ、みかん」
「ういういさんも急ごう! 多分、ここは………」
ゴゴゴゴッッッッ!
駆け降りながらみかんが叫んだ時、マグマだった部分から地鳴りがした。
マグマ『だった』と言うのは他でもない。
先程の氷魔の吹雪によって一気に温度が下がり、中央のマグマが全部ただの岩になってしまったからだ。
このままであるのなら、例え下に落ちても死ぬ事はないだろう。
強いて言えば、ほんのり暖かいかな? 位だ。
但し、このままであるのなら……である。
「……な、なんだ?」
「驚いてる場合はないです! 早くっ!」
「わ、わかった!」
二人は、白濁色の階段を、半ば転がり落ちる勢いで駆け降りて行く。
そして、みかんとういういの二人が階段を降りきり、眼前にある門にやって来た直後。
ドッパァァァァァンッッッ!
マグマが噴火した。
あたかもそれは、怒髪天を衝く勢いだ。
「うぉわぁっ!」
岩と化した部分から突発的に吹き出たマグマに、思わずういういは手で身体をカバーしようとする。
しかし、そんな事をすれば灼熱の溶岩が手に掛かるだけだ。
「……くっ!」
思わず苦い顔をしてしまったういういがいた時、
ポウゥゥゥ………
みかんの手から淡い光が生まれ、ういういの頭上に光の壁が出現した。
この壁によってマグマの雨がシャットアウトされる。
「こっちです! 急ぎます!」
ドンッ!
体当たりにも似た勢いで門を開けたみかん。
同時にういういも門へとダイブする位の勢いで突入して行った。
そこから素早く門を閉めた。
「はぁはぁ………ふぅ」
いや~な汗が出たのだろうみかんは、肩で息を吸いつつ、額の汗を拭った。
「今のはなんだったんだ?」
「多分ねぇ~? あのマグマにとって、氷魔の吹雪で凍らせる事も反則行為だと判定したと思うんですよ~?」
今一つ、状況を掴み切れていなかったういういを前に、みかんは軽く説明をして行った。
「反則行為?」
「そうです。多分、みかんの予測なのですが、あのマグマには幾らかの知能……と言うか、意思が存在していたんじゃないかなって、思うわけですよ~?」
その証拠に、浮遊魔法をした事で、マグマはみかんを襲っていた。
つまり、それを反則行為と見なしてみかんを襲った物と考えられる。
そうなって来ると、答えは早い。
元来の方法でちゃんと進む分には何もしなかったかも知れないが、しかし、みかんは魔法を使って強引に階段を出現させてしまった。
マグマにとってそれは、十分な反則行為だったに違いない。
そこで怒ったマグマが、みかんとういういを素早く排除しようとしたのだ。
だが、氷魔の吹雪によって岩になってしまったマグマはすぐに行動する事は出来なかった。
マグマはこの岩になってしまった部分をどうにかする必要があった。
結果、わずかばかりの時間が生まれたのだ。
この期を逃さず、みかんは急いで階段を渡り、門の向こうへと向かおうとしたのだった。
こうして、現在に至る。
「最初、怒ったマグマがこの門を突き破って来たらどうしようって、少し不安でもあったんですがねぇ」
みかんは苦笑して答える。
実際、そうなったら笑えないのも事実だが、今の所は門からマグマが飛び出て来る様子はなさそうだ。
「取り合えずはだい……」
大丈夫そうだな。
……そうと答えようとしていたういういだったが、言葉はそこで止まってしまった。
その瞬間、床から炎の様な物が吹き出て来る。
吹き出た炎はそのまま人形になった。
『キシャァァァァッッ!』
更に口から雄叫びの様な物まで上げて来た。
その数、ざっと十体。
「およ~」
「……大丈夫では無さそうだな」
少し驚いた顔のみかんがいる中、ういういが苦笑しつつも腰に差してあった剣を抜いてみせる。
見る限り、片手半剣と言った所か?
片手剣よりも刀身が長く、両手剣よりも少し短い。
全体的に赤い片手半剣を腰から引き抜いたういういは、
「はぁぁぁぁっ!」
気合いそのままに素早く人形になった炎の化け物へと突き進んで行く。