【15】
「凄いわ! なによ、やればちゃんと出来るじゃない! うふふっ!」
ひたすら様々なポーズを取らされた挙げ句、キャピキャピなトーンの女言葉を使いまくるリダを見た所で、女性はご満悦な顔になっていた。
他方、リダは精神力をゼロに果てしなく近い所まですり減らしていた。
顔は真っ赤な状態で、瞳から地味に涙が出ていた。
額からは妙な汗が流れており、思いきり強張っていた。
フルフルと身体全体を震わせていたリダは心の中でのみ呟く。
死にたい……と。
いや、これ何の罰ゲーム? てか、私はどうしてこんな事してるんだ? これってやる必要があったのか?……とか、そんな事ばかりを脳内でぐーるぐる渦巻いていた。
だが、その甲斐もあってか? 女性の機嫌を急上昇させていた。
「こ、これで良いわよね? えぇと……そろそろ、私達はここを通りたいんだけど……?」
精神のライフポイントが危険値にまで到達して来た所で、リダは女性へと半ば懇願する形で言って見せた。
一応の笑みは作っていたし、まぁまぁの愛らしさとかもギリギリ醸し出せていた感じではあったが、内心は穏やかではなかった。
「そうね。じゃあ、そろそろお開きにしましょうか」
女性はニッコリと満面の笑みを作りながら答えた。
やった! 遂に私はやり遂げた!……そうと、リダは女性の言葉を耳にした時に、心の中で感涙して見せる。
……そして。
「貴女、気に入ったわ。だから特別に私が直接貴女を試してあ・げ・るっ!」
「……は?」
リダはポカンとなった。
目はテンで、口はあんぐり。
ハニワみたいな顔になっていた。
取り敢えず、現状を把握する為に、リダはハニワ状態のまま女性へと質問してみる。
「つまり、試練みたいなのがあって……アンタと何かやると?」
「そうね? 単純明快にバトルするのが良いのかしらね?」
「………」
リダは無言になった。
絶句状態になっていたリダは、ハニワ状態のまま四つん這いになって真っ白になっていた。
つまり、こうなる。
戦闘を避ける為に、女性の要望を素直に飲んだ。
そしたら、女性に気に入られて戦闘をする事になった。
つまり、最初からハッ倒してた方がマシ。
「うぁぁぁぁぁぁっ!」
リダは発狂した!
もう、これでもかと言うばかりの勢いだ!
喉がはち切れんばかりに叫んだリダは、
超攻撃力上昇魔法レベル99!
超防御力上昇魔法レベル99!
超身体能力上昇魔法レベル99!
龍の呼吸法【極】
怒りの顔そのままに、補助魔法と補助スキルを一瞬で発動させた。
刹那、瞬時に能力が上昇した事で発生した余剰エネルギーが、リダの周囲から衝撃波として放たれた。
「……え?」
女性は唖然となった。
補助魔法も補助スキルも珍しい事ではないのだが、発動した瞬間に、余剰エネルギーが放出されてしまう様な、凄まじい補助魔法や補助スキルなんか見た事がなかったからだ。
他方のリダは、完全に狂乱状態になっていた。
「……ふ、ふふ……あはははっっ! もう良い! 面倒だ! ソッコーでテメーぶちのめして、全部終わりにしてやるっ!」
完全にキレてる状態のリダ。
フラウとユニクスの二人は、微妙に顔を青くさせていた。
「……これ、私達が後で八つ当たりされるとかないよね?」
一抹の不安を吐露するフラウに、ユニクスは口だけを動かして答えた。
「可能性はあると思う」
「……だよねぇ」
こんな事になるのなら、女の子言葉でキャイキャイやる役を自分でやれば良かったと後悔するフラウ。
しかし、後悔と言うのは、先には立たないと相場では決まっている。
こうして。
「ごめんなさいすいません、もう逆らわないから許して下さい」
戦闘が開始されて、わずか数秒程度でボコボコにされてしまった女性は、リダにペコペコと何回も頭を下げるハメになって行くのだった。
▲△▽△▲
一方、その頃。
みかんチームは、普通にムカデ爺の背中に乗った状態のまま、全く苦労をする事なくダンジョンの終点まで向かおうとしていた。
「いつも、こんな感じだったら楽なんだけどな」
根本的に冒険者らしい行動と言うか、そもそも冒険していなかった現状に、ういういは笑みで答えて行く。
楽してお金を稼げるのなら、それにこした事はないからだ。
しかし、みかんは言った。
「毎回これだったら、稼げるお金も無いに等しいですよ?」
今回のダンジョン攻略に当たって、全くお金を稼いでいないと言う事実に。
実際、戦闘もなかったが、その代わり宝箱もなかった。
正確に言うと、ムカデ爺の背中に乗っていたので、あってもスルーされていた。
「なるほど……これが毎回じゃ意味ないな」
守銭奴は、お金にならない事実を知った事で、物の観点を変えた。
どうやら、本当にお金の事しか考えていない様であった。




