【12】
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他方、こちらはみかんチーム。
一層目から二層目の階段を抜けて、次のフロアに入った。
二層目もまた雪山の続きらしい。
但し、先程と違ってかなり視界が狭まっている。
「今度は雪山の中にある森林地帯って感じだな」
そうと、ムカデ爺の背中に乗っていたういういが答えた通り、そこは雪山の森。
普通にムカデ爺の背中に乗っていなかったら迷う事間違いなしな森林地帯だった。
「ほむ、今回のダンジョン攻略は楽チンですねぇ」
結果的にではあるのだが、ムカデ爺の背中に乗ってるだけでダンジョンをスイスイと移動してるだけで終わっているだけに、みかんは笑みを作りながら言う。
「まぁ、正確に言うと攻略しに来た訳ではないし、これで良いんじゃないかな?」
すると、隣にいたカグが笑みを笑みで返してから言った。
「そ~だねぇ。あはは~」
カグの言葉に、みかんは素早く相づちを打った。
一応、攻略をしないと行けない目的もある事はあるのだが……元来の目的は別にあった。
……そう。
これは、カグがこのダンジョンの主でもあるカザブの元へと会いに行くと言う所が重要なポイントだった。
ういういは知らないだろうが、みかんやシズの二人は知っている。
カグとカザブの関係を。
そして、二人は知っている。
カグとカザブ……二人の間に長い長い時を経てようやく芽生えた愛の物語を。
そして……二人は知っている。
カグとカザブ……二人の間に生まれたラヴストーリーの結末を。
悲劇の始まりは、ここからスタートするのだ。
「………」
徐々に近付いて行く、目的地を前にして……カグは自分でも無意識の内に浮かない顔を作っていた。
「う~」
そこでシズが、カグの肩をポンと叩いてから、
「う!」
一万マール札を出した。
……どーやら、このボケが気に入ったらしい。
「あはは……大丈夫だよシズ。私はお金に困ってないから」
「そうか、これで少しは元気になってくれるかと思ったんだけど……残念、う~」
シズはちょっとだけしょげていた。
会心のボケを放ったと自分では思っていたのかも知れないが……いかんせん、何回もやり過ぎた。
……ではなく。
シズとしては純粋に元気になって欲しい気持ちから、励ましていたのだ。
但し、ゲンキンにはなっても元気にはならないと言う事実に、ここら辺で気付いた。
もっと早く気付いても良かった気がするが、そこがシズさんクオリティなのだ。
「カザブは、きっとあの時にやった事を後悔してる」
そこでシズが真剣な顔になってカグへと言う。
カグは目を伏せた。
「そこは……きっと、そうだと思う……それは私の願望からそう言ってる訳じゃなくて、カザブの性格を考えると、そうなるんじゃないかなって思う……だけど」
そこまで答えたカグは、完全に消沈した顔になって呟いた。
「それでも、ちょっと思ったの……やっぱり、私はカオス姉には勝てないのかな……って」
「勝つか負けるかは、同じ土俵で物を言う時だ。カグとカザブの関係……そして、カザブとヒャッカの関係は、私から見ても全く異質の関係。同じ土俵ではないと思うんだ、う~」
「…………」
「う? カグには兄弟姉妹はいない?」
「いない……と言うか、親すらいないかな」
シズの質問に、カグはフルフルと顔を横に振った。
土着信仰から生まれた守り神だっただけに、根本的な生い立ちが人間とは全く違っていたからだ。
「う~。兄弟姉妹がいないのは分かった……けど、カグ? 親はちゃんといる。この街に住む地元の人間だ。この地元民がカグを望み……そして、信じた。この気持ちからカグは生まれている」
「あはは、そうだね。だから私は守り神なんだと思う」
「じゃあ、カグ? 街のみんなは好きか?」
「そりゃ当然だよ! 街のみんなを守って生きるのが私の使命だからって言うのもあるけど……それとは別に、街に行くとみんな優しくしてくれたし、一緒にいて楽しいし……嫌いになんかなれないよ」
「そうだろう?……それなら、カグ? 街のみんなとカザブ……比べたらどうなる? う?」
「………」
シズの問い掛けに、カグは無言になった。
しばらく考え……悩み、そしてシズに答えた。
「それは比べては行けない事だよ。だって、そもそも考える観点が根本から違うんだもの」
「う! その通り。だから、同じ土俵で考える事は出来ない」
そこまで答えたシズは真面目な顔になって再び答えた。
「カザブとヒャッカの関係も、これと同じ。基本的なトコが違う。そこは最初から優劣を決めるべき観点ではないと思うんだ、う~!」
言ったシズは、瞳をキュピ~ン☆ と光らせてからグッジョブして見せた。




