【2】
ガチャッ
ちょうどそこでユニクスが帰って来たのか、部屋のドアが開く。
「ただいま帰りました」
ドアを開けたのは二人の予測通り。
ユニクスは、いつも通りの淑やかさを見せながら部屋の中に戻って来た。
「おかえり、遅かったね」
リダは言う。
次のダンジョンの下準備がしたいと街に買い物へと出掛け、そのまま数時間が経過していたのだ。
昼過ぎに出て行き、陽もとっぷりと暮れた頃、ようやく帰って来た感じだ。
「次のダンジョン攻略は私達三人と聞いていたので、つい色々と買い込んでしまいまして」
「ああ、そう言えば次は私らだけでやるんだったな」
ユニクスの言葉に、リダは思い出した様に答えた。
「相変わらず余裕だよね、リダは」
フラウはやっぱり少しだけつまらない顔で言う。
見る限り、ユニクスもフラウもかなり不安と緊張で一杯と言う感じだったのにも関わらず、リダだけやたら余裕だからだ。
それも余裕ぶっているのではなく、本当に余裕そうだからつまらない。
出来れば演技でも良いから緊張していて欲しいのだ。
「私だって緊張はしてるぞ? 初見のダンジョン攻略で、しかも一発攻略しないと行けないんだからな?」
「それにしては、全然余裕そうに見えるんだよ……」
「まぁ、仕方ないわよフラウ。リダと私達とでは格が違うと言うか、経験も違うんだから」
「そこは分かるんだけどぉ……」
けど、一緒に同じ立場になって同じ様に悩みながら一喜一憂したいと思うフラウもいたのだ。
我が儘なのは分かっているし、相手が天下の会長なのだから、緊張の度合いが違うのも理解出来る。
しかし、それ以前に同級生で一緒に学園生活を送っていた仲間でもある。
……だから、少しでも同じ感覚を共有したいと願ってしまうのだ。
常に高い所から見下ろされてる気分にいるのが、どうにも耐えられない。
そんな複雑な気分にさせられているフラウを前に、リダはニッと快活な笑みを作った。
「いいねぇ……そう言う劣等感。悪くない、悪くないよ」
「それは、私をバカにしてるの?」
フラウは思いきり眉を捻った。
「違う違う! そうじゃない。私もさ? 昔、そう言うのがあったからさ。まぁ、そこも捉え方次第ってヤツなんだけどさ? ここでテンション下がってやる気をなくすヤツとさ? 逆に不屈の精神を持って、こなくそ! いつか絶対私もアンタ見たいになってやるそ! って思うヤツの二種類あるわけだ」
「まぁ、言いたい事はわかる」
「だろ?……で、今のフラウは良い意味での劣等感……不屈の精神を持って、私に接している」
いつか、アンタみたいになってやる! 今に見てろよっ!
……と、言う気持ちだ。
「そう言うヤツはちゃんと延びる。そうなりたいと言う目標が目に見えてるからな」
「………」
フラウは無言になった。
悔しいがその通りだった。
今も、リダが同じ感覚で一緒になって悩んで欲しいと思ったのは、結局……自分もリダと同じになりたいと言う願望の裏返しでもある。
それだけに、何も言えなくなってしまったのだ。
「それよりユニクス。こんな遅くまで買い物なんて……買う物が、そんなにあったのか?」
「え? 当然じゃないですか」
リダに尋ねられ、ユニクスは淑やかな微笑みのまま、
ドンッッ!
と……大きな布袋を部屋のテーブルに置いた。
「……なにこれ?」
「私が知りたいわ」
フラウとリダの二人は目を白黒させた。
「まず、これがポーション詰め合わせ。半額セール中で安かったからつい多目に買ってしまいました。次にお菓子セット。で、これが薬草と毒消し草の調合セットで……」
……以後、こんな感じでユニクスの講釈が始まった。
どうやらユニクスは、二人が考えている以上に慎重で几帳面で安全策をこよなく愛する……衝動買いの鬼だった模様だ。
次回、ユニクスを買い物させる時は、無駄に買わない様に見張っていよう……そうと心から思うフラウとリダの二人がいたのだった。
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数日後。
みかん・ういうい・シズ・カグの四人は途中まで一緒だったリダ・フラウ・ユニクスの三人と別れた日に、本日の目的地でもあるカサブ池にやって来た。
予定であるのなら、本日の正午に迷宮が復活し、他の五大池と同じく池の中から迷宮の入り口が姿を現す事になっている。
果たして、迷宮は予定通りに出現した。
ザザザァ………
ザッパァァァンッ!
他と同様に、池の中央からダンジョンの入り口が浮かんで来る。
「行きますか~」
浮かんだダンジョンを確認した所で、みかんは周囲の三人を軽く促しつつも、迷宮に向かって進み始めた。




