【22】
「……うん。みかんの気持ちは良くわかる。きっとお姉ちゃんもそれを望まない」
そこでカグは言った。
とても強い意思を込めて。
「今は封印しよう……そして、いつかお姉ちゃんの正気が戻る方法を手にいれた時、開封させて欲しい」
「うん、みかんも協力する! いいね! やろう!」
「う! シズもやる~!」
「みかん! シズ! ありがとうっ! あんたらはやっぱり私の親友だよ~っ!」
決断するカグを中心に、三人は互いに肩を寄せ合いながら、嬉々とした盛り上がりを見せていた。
それ以外の四人は見事に蚊帳の外ではあったが、微笑みながら三人の姿を見据えていた。
五十年前にあった数々のドラマ。
悲しい事も多かったけれど、きっと楽しい事もあって……故に生まれた三人の友情が、ここに再び復活したのだ。
決して茶化して良い場面には見えなかった。
こうして。
「じゃあ、次のダンジョン復活は三日後! 今度は二つあったねぇ」
みかんは思い出す様に言う。
「……? そうなるんだね」
今一つ状況を掴めていないカグは取り合えず話しの流れを軽く耳にする感じで言う。
ついさっきダンジョンと共に復活したばかりのカグからすれば、それは当然の事だった。
五十年の眠りから覚めたばかりと一緒なのだから。
「う! そうなる~。次はサカブ池とナナ池だ。う~」
「サカブとナナか……成る程。じゃあさ? サカブ攻略とナナ攻略は同時にやる感じかな?」
「みかん的には、そうしたいかな? リダもいるし」
言って、みかんはリダを見た。
「……私?」
いきなり話しを振られ、リダはキョトンとなった。
「そそ~。リダはこう見えて冒険者協会の会長で、みかんが引く程の強さなんだよねぇ」
「逆だ逆! 私がアンタの強さにドン引きしてんだよっ!」
リダは思いきり心外を顔で作っていた。
「リダ様は確かに反則級だから、みかんさんの言いたい事も分かりますかね……」
程なくしてユニクスがボソッ……と口を動かす。
直後、リダにキッ! と睨まれて速攻で目線を明後日に反らした。
「ナナ池の方はリダにお願いする予定だった~」
「う~。いいね!」
みかんの言葉にシズが満面の笑みでグッジョブして見せる。
「……まぁ、構わないけどさ」
リダも一応の相づちを打った。
別行動を取る事自体にそこまでのデメリットはない。
リダの視点からすれば、みかんやシズがいなくなると、ユニクスやフラウの面倒を完全に自分だけで見ないと行けない……だけの話しだった。
そもそも最初からそのつもりだったし、むしろ三人になる事で、ユニクスやフラウも色々と経験する事が多くなる可能性もある。
簡素に言えば、メリットもあると考えたのだ。
「じゃあ、私達はナナ池に行く……これで良いのか?」
「そうしてくれると助かるです」
素直に引き受けてくれたリダに、みかんは感謝の気持ちも込めて満面の笑顔で返答してみせた。
「……と、言う事で、みかん達はカサブ池の攻略になるです」
「う! わかった!」
「私は宿屋で待機で良いのか?」
ガンッ!
そこでういういがちゃっかり言うと、シズのゲンコツが返事代わりにやって来た。
「お前もカサブ組だ! う~! その位、空気読め!」
「いったいなぁ……冗談だよ!」
ゲンコツを喰らったういういは、軽く頭をさすりながら口を動かしてみせた。
「じゃあ、私もみかんやシズ……えぇと、この子は誰?」
そこでカグが不思議そうに、頭をさすっていたういういを見て尋ねた。
「あ~。んとシズさんの娘でういういさん~」
「ええええっ! し、シズって……結婚出来たんだね」
「うううぅぅぅぅっ!」
驚いた顔して叫んだカグに、シズは失礼千万と言わんばかりにむくれた顔になっていた。
……かくして。
「じゃあ、ういういさんも含めて! カグ池の守護者してます、カグです! よろしくね!」
新しい仲間を得たみかん達は、次なるダンジョンを目指して鋭気を養う形を取って行くのだった。
次回に続く




