【19】
「およ~」
「う~」
びっくりする様な大きな門が、空からドスンと落ちて来て、みかんとシズの二人はちょっと驚きつつも、門を開けて見せる。
「ここのラストかな?」
「多分、そうだな」
門が開いて行くなか、やや緊張した面持ちのフラウが答えると、リダが軽く相づちを打って見た。
「次は私達が頑張る番……そうよね? フラウ?」
隣に立っていたユニクスがフラウに微笑みながら答えた。
フラウはコクリと頷いた。
結果的にではあったが、世界樹の杖とか言う、べらぼうな代物を貰ってしまったのだ。
この恩を返す意味でも、次のダンジョン攻略では何らかの役には立ちたい。
そうと、フラウは真剣に考えていた。
他方、ういういは最後尾の辺りをゆっくり歩くスタンスを取る。
素直に物を言うのなら、もう今日は他のみんなに任せたい所だった。
思えば、最初のカイザートレントもういういが戦っている。
合成獣戦も、身から出た錆とは言え単体で戦っていた。
結果、一万マールと言う大出費を被ってしまった。
後はよろしくって本気で言いたい。
そんなういういの気持ちを汲んだかどうかは定かではないが、みかんとシズの二人がズンズンと先行する形で足早に進んで行くのだった。
進んだ先は……前回のゼンポー池でも見た事がある、だだっ広い空間だった。
「……ここは?」
フラウは周囲を軽く見渡した。
前回の時もそうだったのだが、本当にただの広間だ。
他には何もない。
「ここで終点かな?」
リダもフラウと同じ感じで辺りを見渡しながら口を動かしていた時だった。
ポウゥゥ………
広間の中心から、淡い紫色の光が浮かんだ。
「……敵でしょうか?」
ユニクスは答えて、攻撃態勢に入ろうとした。
「……いや、どうだろう?」
だが、間もなくリダが軽く制止する。
そこから再び口を開いた。
「敵であるにしては、敵意ってのが薄い……いや、ない」
「……言われて見れば」
リダの言葉にユニクスは納得した。
確かに、これから攻撃しようと言う感じには見えない。
だからと言って、油断も出来ないのが実際の所なのだが、
「みかんやシズの態度もな? おかしいんだよ」
言ったリダは、みかんとシズの二人を指差す。
みかんとシズの二人は攻撃する態勢どころか、むしろ友好的な笑みまで浮かべて、中央に浮かんでいた光の近くに立っていた。
しばらくして、みかんは言った。
「おかえり、カグちゃん!」
「う~! おかえり~!」
ワンテンポ遅れて、シズも嬉しそうに答えた。
他四人の頭に大きなハテナが浮かんだ。
おかえりって何?
訳の分からない事を言う二人を前に、思わずみかんとシズを抜かす四人が同じ事を考えていた時だった。
光が具現化して、少女の形に変わった。
紫の長い髪を腰まで伸ばしていた、なんとも可愛らしい女の子に。
「………は?」
ちょっと予想してない展開だ……と、リダは心の中でのみ嘯く。
何故、そうなるのか? 理由は全く分からないのだが、一つだけ確かな事だけは分かった。
「敵ではないみたいだな」
「……そうですね」
だったら、早くそう言えよと、顔でつまんなそうにぼやいていたリダと、そんなリダに苦笑してしまうユニクスの二人がいた。
「……どうなってるの?」
フラウは近くにいたういういに聞いてみる。
みかんと一緒にいたういういなら、知っているかなと思って尋ねてみた。
「………さぁ」
知らなかった。
ういうい本人も聞かされてなかった事実に直面して、機嫌が悪くなっていた。
「そ、そう……」
取り合えず、そっとして置こう……と、フラウなりに気を遣った。
そんな中、みかんとシズの二人の前にいた少女は、陽気な笑顔を満面に作りながら答えた。
「ただいま! みかん、シズ!」
そして、二人に抱き付いてみせる。
とっても親しい間柄である事だけは、誰の目からも理解出来た。
「そかそか~。思えばカグは、ここのダンジョンの守護神だったんだもんね~。あの時は本気で泣いたよ~」
「う~! シズさんも泣いた! 全シズが泣いたけど、復活してくれて本当に嬉しい! う~!」
みかんとシズの二人は、カグと呼ばれる少女を優しく抱き止めながら、彼女の無事を心から喜んでいた。
……いたんだけど。
「あのさぁ……盛り上がってるトコ悪いんだけど、こっちはなんでそう言う感動シーンになるのか、さっぱりなんだよ」
水を差す様で、少し気が引けたが、そこでリダがみかんとシズの前にやって来て、事情を聞きに来る。
見れば、他の三人も事情がサッパリ飲み込めない顔をしていた。




