【15】
『強欲な冒険者よ! 欲に目が眩んだ者の末路は常に悲惨だと言う事を思い知らせてくれよう!』
合成獣は鬼の首でも取ったかの様な勢いでしてやったりと威勢良く叫んでいた。
「だから、欲に目が眩んだバカはういういさんだけですって!」
「う~! うちらは関係ない!」
みかんとシズはそうと抗議する形で叫んでから、後方に下がった。
ういういは嫌な予感がした。
自ずと、汗が額から流れ出た。
「まさか、私一人で倒せと?」
「当然!」
「う~!」
「えぇぇぇ………」
速攻で頷かれた二人を見て、ういういは項垂れた。
そんな三人の会話を、つい呆気に取られる形で見てしまった合成獣がいた。
余りにも緊張感がなくて、ついつい三人の会話の一部始終を見てしまったのだ。
そこらでハタッとなる。
俺は何をやってるんだと思った。
それはこっちが知りたい。
『わっはっはっ! まずは貴様からか! 良いだろう! 掛かって来い!』
合成獣はやはり威勢良く叫んで見せた。
「……ちっ」
ういういは舌打ちする。
「じゃあ、みかん。せめて補助魔法くらいくれよ」
「しかたないなぁ……」
ういういが合成獣に対峙して、半片手剣を抜いた所で、みかんが渋々と補助魔法を描けた。
超攻撃力上昇魔法レベル99
超防御力上昇魔法レベル99
超身体速度上昇魔法レベル99
ういういの能力がドドーン! と上がった。
『………………………は?』
これに驚いたのは合成獣だ。
どう考えてもおかしい魔法だったのだ。
一応、合成獣も補助魔法を使える。
それだけに、この魔法の意味を思いきり知っていたのである。
『お、おま……お前! き、汚いぞ!』
「は? なんでだよ? 仲間の補助魔法もらっただけだろう?」
『いや、今のは補助魔法とか言うレベルじゃなかったろう! 反則だぞ、反則!』
思いきり文句を言って来た。
ういういは吐息混じりだった。
「……じゃあ、どうすれば良いんだ?」
『補助魔法をするにしても、もっと現実的なのにしろよ! 例えば攻撃力上昇魔法レベル25とか!』
「そんなの、こっちの勝手だろ? バカなの? おたく?」
ういういが鼻で笑った。
合成獣の顔が見る間に真っ赤になった。
『だ、誰がバカだコンチキショウ! 良いだろう! その条件でやってやる! 後で吠え面かくんじゃねぇぞ!』
「……どうも」
良く分からないけど、このまま戦っても大丈夫だと言う事が分かったので、それ以上の言及をやめにした。
こうして、ういういと合成獣の戦いが始まる。
合成獣は、即座に魔導式を紡ぎ出し、くるっと尻尾を向ける。
尻尾は蛇になっていて、蛇の口から強烈な炎が吹き出た。
しかし、補助魔法で早さが格段に上がったういういは、蛇が炎を口から吐き出す頃には、
「……いや、おたくやっぱりバカだろ?」
もう既に合成獣の眼前にまで迫っており、
ザンッ!
逆に尻尾を斬られてしまう。
ういういの視点からすると、わざわざ自分から尻尾を斬られに行っている様に見えた。
それ故に言ったのだ。
おたく、やっぱりバカだろう? と。
実際、そこまで頭は良く無さそうだ。
『うるさい! うるさいっ! これでも喰らえ!』
上位陽炎魔法!
頭は悪いかも知れないが、凄い魔法は使える模様だ。
リダVerを見ている方ならご存じの方もいるかも知れない。
こっちではまだ未登場だが、リダのクラスメートでもあるルミ姫様が使う必殺の魔法がこれだ。
説明はそこでしているので、今回は割愛させて頂こう。
「およ~」
上位陽炎魔法が発動した所を見て、みかんは少しだけ驚いた。
右手にはお茶が入った湯飲みが握られていた。
「う~。まさかここでもこの魔法を見るとは思わなかった。ズズッ……」
隣にいたシズも意外そうな顔になっていた。
両手にはやっぱりお茶が入った湯飲みが握られていた。
てか、煤っていた。
「って、アンタら! 戦う気あんのかよ!」
ういういのツッコミが飛んだ。
当然、答えなんか聞くまでもない。
戦う気がないから、お茶飲んで見ているのだ。
……本当に緊張感のない連中である。
「くそっ!」
上位陽炎魔法が発動し、太陽の炎が召喚された所で、ういういは苦い顔になった。
「さっき、必殺の風神剣を使ったばっかだって言うのになぁ……」
そしてぼやく。
風神剣は威力も凄いが、消費SPも凄い。
そして、SPを回復するポーションは一つ一万マールとお高い!
「くそっっっ!」
ういういは激しく舌打ちした!
こんな事なら、宝箱を開けなければ良かったと心から後悔した!




