【13】
三人が先行する形で次のエリアの階段を降りて行く。
ちょっと広めの通路みたいな感じの階段を降りて行くと、やがて明るい場所に出た。
やって来た場所は木々の中腹辺りだろうか?
なんとも妙な気持ちになってしまう。
階段を下って行った先は、どこかの大きな大樹の中腹ら辺であったからだ。
感覚からすると、降りて行った筈なのに、何故か登っていると言うおかしな感覚だ。
地面はなく、大きな幹と葉っぱだけだった。
下を覗き込むと、地面が遥か彼方にあった。
落ちたら、間違いなく死ぬ。
「……なんでこんなトコに」
思わずたじろぎ、躊躇して階段の通路から抜け出せないフラウを尻目に、リダは顔色一つ変える事なく、葉っぱが敷き詰められているだけの場所に足を乗せていた。
そして、まるでそこが地面であるかの様に、極々当たり前の状態でリダはスタスタと歩いて行く。
「………」
これ、大丈夫なの?……と、ドキドキしつつも床の様に敷き詰められた葉の上へと足を下ろす。
普通の地面と同じだった。
つい、目を白黒させてしまう。
「おい、どうしたんだよフラウ? 遅いぞ?」
「あ、うん……えぇと……そうだね」
色々と言いたい事はあるのだが、どう答えて良いのか分からないフラウがいた。
降りて行ったのに実は登っていて、葉っぱに見えるのに実は地面と同じで……もう、何がなんなのか分からない。
本当にダンジョンは常識なんか最初からない場所なんだとしか、他に表現する事が出来なかった。
しばらく進んで行くと、樹がまるで螺旋階段になってる感じで、葉っぱの地面が続いているのが分かった。
しばらくは螺旋状になってる葉っぱのスロープを進んで行く形になりそうだ。
そんな事をぼんやりと考えていたフラウがいた所で、
バサッ………バサッ………
鳥の羽根音らしい物が遠くから聞こえて来た。
「フラウ、気をつけて!」
直後にユニクスが顔を引き締めてフラウに叫んで見せた。
同時に視線をユニクスが見ている部分に移すと、そこには人間の倍はあるだろう巨大なガーゴイルが数体、空の彼方から飛んで来ているのがわかった。
空中を滑空しながら、フラウとユニクス、リダの三人へと奇襲を仕掛けるガーゴイルは、自分達が持っていた武器をそれそれ使って攻撃をして来る。
数体いたガーゴイルは、それぞれ違う武器を持っていたのだ。
冒険者のパーティなどと同じで、片手剣と槍、弓と杖と言う……なんともバランスの良い装備を身に付けて戦闘を開始する。
最初に突撃して来たのは、片手剣をもつガーゴイルだった。
『オラァッ!』
恐らく、人の言葉が話せるだけの知能があるのだろうガーゴイルは、血気盛んに突入する形で片手剣を振り抜いた。
……が、振り抜いた相手が悪かった。
『……え?』
片手剣を振るったガーゴイルは呆けた。
全力で振り抜いた筈の剣が、途中でピタッと止まった。
止まったのは、リダの眼前。
「ほ~。私を真っ先に狙って来るとは……お目が高いねぇ」
リダはニィ……と笑う。
正直、余り良い笑みではない。
なんと言うか、悪者染みた笑みだ。
他方のフラウとユニクスは青ざめた顔になっていた。
今までの経験上、リダがあんな笑い方をした時は、決まってロクな事にならないからだ。
「……あのガーゴイルは、もう気にしなくても良さそう」
「そうね」
フラウとユニクスは他のガーゴイルに目を向ける。
その辺で、みかん達三人が追い付いて来た。
そして、何事もなかったかの様に追い抜いて行った。
「お先~」
「上で待ってるです~」
「う~」
ういういは軽く右手をヒラヒラやってた。
みかんは笑顔で言ってから、ポンポンとフラウやユニクス、リダの肩を叩いて見せた。
シズはいつもの様にう~とだけ言って、グッジョブしてた。
「……なんなの、一体?」
明らかに、仲間が戦闘してますって感じなのに、当然と言わんばかりにスルーして上を目指して行く三人に、フラウは目を点にしてしまった。
「簡単な事だ」
そこで、リダがフラウに言う。
次の瞬間、
ボンッッッッ!
リダの近くにいたガーゴイルが爆発した。
一見すると超炎熱爆破魔法にも似ていたが、恐らくそれより下位の爆発魔法を使ったのだろう。
威力が低く感じた。
しかし、それでもガーゴイルを一瞬で消し去るのには十分だった。
「この程度の雑魚くらい、自分らで処理しろって事だ」
目前にいたガーゴイルを消し去ったリダは、虚空にいる別のガーゴイルに向かって手を向ける。




