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こうして私は無双する・みかんVer  作者: まるたん
最下級の冒険者であっても、最頂点の冒険者とパーティを組む事だってある
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【12】

「風神と雷神を本当の意味で扱うには、血の滲む努力が必要なんだ……これからもな」


 ういういは、そう答えてげんなりした顔をみせつつ……反面、活き活きした笑みも向けた。

 彼女からすれば、それが本音なのだろう。

 けんなりする程の修行が、まだまだ自分には必要ではあるのだが、その先にある自分の強さには興味があるし、その域にいつかは到達してやるぞと言う意気込みもある。


「私はまだまだ弱い……本当の剣聖シズからすれば足元にも及ばない。だからこそ、私は強くなる努力を、決して怠らないのさ」


「素晴らしいです、ういういさん!」


 小粋に笑ったういういに、フラウは感動した。

 ひた向きに純粋に、ただ自分の目標に向かって突き進むその姿が、フラウにはとっても格好良く見えた。

 貪欲に強さを求めてるだけかも知れないが、それでも思う。

 その努力の姿勢は素敵だな、と。


 そんな、一通り感動していたフラウがいた所で、


「おおおっ!」


 ういういは、瞳を凛々に輝かせる。

 カイザートレントを倒した事で、どこからとなくやって来た宝箱を見て。


「今回は私が倒したからな! 私んだぞ!」

 

 そうと叫び、一目散に宝箱へとダッシュ。

 

「………」


 フラウは唖然。

 今まで、なんかどっかストイックに見えたういういが、違う意味でストイックな人間に見えてしまった。


「がめつさも、冒険者には必要なのかな……?」


 自分に言い聞かせる様な感じで言う。

 これにはユニクスも苦笑する事しか出来なかった。


「そうかも知れないわね」


 二人が揃って苦笑を浮かべる中、ういういは宝箱を開けてみせる。


 中身には、枝の様な物がぎっしり入っていた。


「……なんだこれ?」


 取り合えず、一本だけ取って見る。

 ……良くわからなかった。


「ほむぅ……これはさっきのトレントの枝っぽいです~」


「……なんだと?」


 そこからひょっこりやって来たみかんに説明され、ういういはポカンとなる。


 正直、トレントの枝などそんなに高い価値がないからだ。

 それと言うのも、トレントは世界的に言えば結構ポピュラーなモンスターでもあり、倒せば普通にもぎ取れる凡庸素材でもある。


「……一本100マール位にしかならないのかよ」


 ういういはガックリとうなだれる。


「いいえ~。これはカイザートレントの枝なのです。樹齢数千年とも言われる貴重な魔樹の枝です」


「……なぬ?」


「トレントは、言ってみれば出世魚みたいなモンスターなのです。成長するに従って、名前を変えて行くのですよ~」


「ほうほう」


「普通にそこらを歩いてるトレントでも、樹齢七~八年は経ってるです。これが二十年を越えるとビックトレントになるです。更に樹齢百年を越えるとキングトレントと呼ばれる、物凄く大きい樹になるのですが、更に更に樹齢が延びて数千年となると、山みたいな巨大樹になり、名前もカイザートレントって名前になるのです~」


 それが今回の巨大樹となる。

 

「カイザートレントの枝は、数千年を必要とする、超レアな枝なのです。気が遠くなるまでに果てしない時間を経て、やっとこの枝になるのです」


 出来た枝は、滋養強壮の薬にしたり、魔導師の杖にしたりと色々な使い道がある。


「思うに……その枝一本でも軽く百万とかするです」


「まじかっ!」


 ういういは本気でびびった。

 普通に見ると、単なるトレントの枝にしか見えないからだ。

 しかし、目に見える物とは別の、魔力的な物で行くと、それは全くの別物だったのだ。


「一部の研究者達なら、喜んで買うです。素材屋よりもその道の人に直接売った方が良いかもですねぇ」


「なるほど、そうしよう!」


 ういういは陽気に頷くと、そのままのテンションで嬉しそうに枝をみかんが持っているアイテムボックスの中に入れて行った。


 他方、視点を別に移すと、


「どうやら終わった様だな」


「う~」


 後ろで能天気にお茶を飲んでいたリダとシズの二人が、シートをたたんでからフラウとユニクスの元へとやって来た。


「……本当に助けてくれないんだね」


 フラウは少しむくれた顔になってリダに言った。

 リダはちょっとだけ苦く笑った。


「私が直接やってたら、お前らの為にならないからな。自分で悩んで苦労して、そうやって成長するんだよ、人間ってのはさ」


「そうかも知れないけど……」


 しかし、フラウは思ってしまうのである。

 リダとも一緒にクエストをこなして行きたかったと。


「ま、次は少しは手伝うからさ。取り合えず、次に行こうぜ?」


 半分誤魔化す形でリダは言うと、いつの間にか出現していた階段に向かって歩いて行った。


「むぅ………」


「あはは……」


 少し頬を膨らませるフラウと、淑やかな笑みを保持していたユニクスは、スタスタと歩いて行ってしまうリダの後を追う形で歩いて行くのだった。 

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