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こうして私は無双する・みかんVer  作者: まるたん
最下級の冒険者であっても、最頂点の冒険者とパーティを組む事だってある
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【2】

「ともかく、私の事なんかどうでも良いんだ。問題は、頭にキノコでも生えて来そうな、アンタのツラにあるんだよ」


「いきなり大概な事を言うな、君も………」


 真面目な顔して最初から失礼な言葉を放って来るリダにバルクは顔をしかめた。

 そもそも、だ?


「君、歳はいくつだ? まだ十五~六に見えるんだが?」


 バルクが述べた通り、今のリダの外見はどう見てもハイティーンにしか見えない。

 そんな少女とも表現出来るだろう女の子が、マグナムボトル片手に自分の元へとやって来たのである。

 ハッキリ言って異様としか言えなかった。 


「お前は、なんだ? 人を見かけで判断するのか? 固定観念ばかりで物事を決めるといつか痛いメに遭うぞ?……いいか? 世の中には絶対の二文字は存在しない。これが分からない人間は、まだまだ人間初段だ」


 リダは心底つまらなさそうな顔になって言う。


「……そうかもな」


 バルクは俯きながらも肯定の言葉を口にした。

 この言葉は、今の彼にとってドンピシャでテキメンの言葉でもあったのだ。


「何だい何だい? 更に落ち込んじまって? ここは酒場だぞ? 少しは楽しそうにしろって話だ! それが出来ないなら、笑える様に私がしてやろうじゃないか」


 答えつつ、リダはニッと快活に笑った。

 遠回しながら、悩みを聞いてやると言っていたのだろう。

 バルクは思わず苦笑する。


「変な女の子だ」


 だが、不思議と悪い子には見えない。

 理由はないが、なんとなくバルクの第6感がそうと言っていた。


「変じゃないとは思うがな? まぁ、いいさ。取り合えずはアンタの話しを聞こうじゃないか」


「そうだな……」


 そこからバルクは語り始める。

 内容は今日のダンジョンでの出来事。

 ゼンポー池のダンジョン攻略をするパーティに選出され、意気揚々と向かうも……単なる足手まといにしかならず、スゴスゴと第一層目で引き返して来た一連の流れを、おおまかにリダへ答えて行った。


「ほうほう、なるほどねぇ……それはアンタも自信をなくすかも知れないな」


 バルクの話しを耳にしてリダも納得加減の言葉を口にする。

 密かにリダにも似た様な過去があった。

 そして、やっぱり目前にいるバルクと同じく、相手の実力をランクで判断していた時もあった。


 しかし、ある日を境に、その考えは大きく間違っている事を嫌でも痛感させられる時が来てしまうのだった。


「まぁ、なんてんだ? ランクは確かに便利だ。相手の名前も初めて知った時なんかはさ? 簡単な目安があった方が楽だと思う……思うけどさ?」


 そこまで言ったリダはいつになく神妙な顔になった。


「そんなちっぽけな物差しだけじゃ、人間の全てを理解する事なんか土台無理って話しなんだ……冷静に考えれば当たり前の事さ。けど、まぁ……それでも冒険者を長くやってるとさ? それが分からなくなる時がある。だから、アンタの気持ちはスゴく分かるぞ!」


 言い、リダはバルクの肩をポンポンと叩き、手にしていたマグナムボトルを、カウンターに置いていたコップに並々と注ぎ、一息で飲み干した。

 中々に豪快な飲みっぷりだった。

  

「見ていて清々しい飲み方だね」


「そうだろう? 酒ってのは楽しく飲む必要もある。見ていて気分の良い飲み方のほうが、相手も喜ぶってモンさ!」


 少し驚くバルクに、リダは水素より軽い口調で陽気に語っていた。

 でも、少し飲みすぎな気もしなくはなかった。


「……ありがとう」


 バルクはニッコリと朗らかに笑みを作ってからお礼を言った。


「あん? あたしゃ、アンタにお礼を言われる筋合いなんか無いと思うんだがね?」


「いや、君のお陰で、だいぶ気持ちが軽くなった。本当、君は不思議な子だね」


 朗らかな笑みのまま、バルクは答えた。

 実際、本当に不思議な女の子だとしか他に表現出来ない。

 さっきまでは名前も知らない相手なのに、なぜか話しやすくフランクに物を言ってくる。

 こんな事を普段されたらイラッと来るかも知れない位に失礼な態度を当然の様に見せているのに、ナゼか許せてしまう。


 この辺もまた、バルクにとっては不思議な部分であった。


「君と話せて良かった。楽しい時間をありがとう」


 そこで、バルクは軽く席から腰を浮かせる。

 彼女と話せた事で、何かが変わった。

 そんな気がした。


 本当は何も変わっていないのかも知れないけど……しかし、そう思えてしまうのだから、結局やっぱり先程と同じ答えが出てしまう。


「不思議な子だよ、君は」


 爽やかな風の様な笑みを涼しげに作り、バルクはその場を後にしたのだった。


「……う~ん。あたしゃ、普通に何もしてない気がするんだがねぇ……」


 他方で、気分良く酒場から出て行ったバルクを見て、リダは不思議そうな顔になっていた。

 リダの視点からすれば、別段特別な事はしていない。

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