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こうして私は無双する・みかんVer  作者: まるたん
無名のトレジャーハンターでも一攫千金の夢くらいは見る
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【2】

 塔の中に入ると、人が二~三人程度は並んで歩ける程度の広さがある通路に繋がっていた。


 最初は一気に三百人もの人間が列を組む様にして進んで行く。

 中には我先にとばかりに、列を無視して小走りに進む者もいれば、ゆっくり慎重に周囲の壁や通路を調べながら進む者もいる。


 こうやって見ると、人の性格によってダンジョンの攻略の仕方は十人十色であると言えた。


 そんな、人の性格が如実に見える中、みかんとういういの二人は集団の中に混じる形で、塔の奥へと歩いて行く。


「なんだか、あんまりダンジョン攻略って感じじゃないね」


 ういういは、少し苦笑していた。

 ダンジョン攻略を初日にやった事がなかったういういは、今の様な多数の人間と一斉に同じダンジョンを攻略しに行った経験が皆無に等しかった。


 実際問題、ダンジョン攻略と言うより遠足である。

 あるいは、徴兵されて戦争に参加している歩兵の一団として、一緒にあるいているかの様だ。


 どちらにせよ、数人のパーティでダンジョン攻略する感覚ではない。


 緊張感も余りなかった。


 正確に言うのなら、全くないと言うわけでもない。

 先行している人間が前に何人もいるとは言え、トラップが全く無くなっているわけではない。


 その証拠に、前はおろか、後ろからもたまに悲鳴があがる。

 何が起きてるのかは分からないが、恐らくなんらかのトラップが偶然その人が歩いている所で発動し、トラップにハマってしまったのだろう。


 現状だと、周囲は狭い通路で人も多い為、足元にちょうど発動寸前だったトラップがあっても、確認しにくい状態にある。

 人が多すぎるのも問題なのだ。


 ……とは言え、デメリットばかりでもない。


 先行しているメンバーが既に遭遇してるのだろうモンスターを、しっかり駆逐しているのも分かった。

 足元には、たまにモンスターの残骸らしき物が落ちている。


 人海戦術と言っても良い、数の暴力で、モンスターの脅威をもろともせず、楽に先へと向かう事が可能とも言えた。


 だが、それと同時に冒険者側にも何人かの脱落者も出て来る。

 果たして、幾人の死傷者が出ているのかなど、列をただ歩いているだけのみかんやういういには知るよしもないのだが、早々と脱落した人間は、既に二桁に到達しようとしていた。


 それら、通路に転がっている冒険者の大半は、仲間に助けてもらいつつ、早くもダンジョンの脱出を考えていたりもしたが、仲間ではない他のパーティは特に気にする事なく先を目指して行く。


 所詮は他人だから……と言うのもあるのだが、ここはまだ入り口に過ぎない。

 流石に死ぬ事なく戻る事くらいは出来るだろう……と、考えての事だ。


 ついでに言えば、明日は我が身だからと言うのもある。

 入ったばかりの入り口で、名前も知らない相手に治療魔法リカバリィをくれてやる程、人間出来た冒険者など皆無に等しいのだ。


 無駄な魔法力マジックパワーは極力控える。

 これもまた、冒険者としてクエストから生き残る為の術でもあった。


治療魔法リカバリィ


 ……だから、転がってる人間がいる度に回復魔法をわざわざ使ってるみかんの方がおかしいヤツになる。


「おい、みかん……ほっとけよ。魔法力マジックパワーの無駄だ」


「およ?」


「いや……『およ?』 じゃなくてだなぁ……」 

 

「大丈夫ですよ~。みかんさんの魔法力マジックパワーは軽く五桁はありますから~」


 みかんはケタケタと笑って言う。


 MP……つまりマジックパワーは、ステータスの一つで、マジックポイントとも表現されるのだが……まぁ、この辺の説明はいらないだろう。

 この世界におけるMPの相場は大体三桁程度だ。

 たまに四桁を越える存在もいるが、十分な魔法力マジックパワーの化け物と言える。


 しかし、たまにそれらを大きく凌駕する、文字通り桁違いの超ド級キャラがいる。

 それがみかんと言う事だ。


「……まぁ、別に良いけどさ」


 ういういは、嘆息混じりにも納得加減の頷きを返した。

 実際、ういういはみかんのふざけた戦闘力と言う物を、これまでうんざりする位見て来た。


 それだけに、分かってもいるのだ。

 消費MP5とかそこらの魔法でしかない治療魔法リカバリィなど、みかんなら一万回やっても魔法力マジックパワーが枯渇しない事など……である。


 しかしながら、余計なお節介にも見えてしまう。

 

 入り口付近で早くも瀕死とか言う、レベルの低い冒険者であるのなら、そこまで感じないのかもしれないが、少なからずういういなら、プライドが許さない。

 曲がりなりにもプロとして、このダンジョンに挑んでいるのに、アッサリ負けた挙げ句、顔も知らない相手に助けられている。


 ういういからすれば、それは恥ずかしい行為にすら映った。

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