【14】
しばらく進んで行くと、更に見張らしの良い広間の様な所にやって来た。
そして、そこが終点の様子である。
広間の半分程度は大きな池の様になっており、仮にその先を泳いで渡ったとしても、大きな鍾乳洞の壁の様な物が見える。
「行き止まりか?」
「そのよ~ですねぇ」
「う? けど、多分……」
シズがそこまで言った時だった。
ザザァ………
水面が小刻みに揺れた。
小刻みな揺れは、時間と共に段々と大きな物になって行く。
やがて、波状の波に変わると、池の中央部分に大きなヘコみが生まれた。
ザッパァァァァァン!
ヘコみが生まれた瞬間、池の中央から巨大な蛇の様なモンスターが出現した。
「………………え?」
一見すると、ビルの十階分相当のとてつもなく大きい蛇にも見えるが、明らかにそれは大蛇ではない。
池からフワリと浮いて、その全身を三人の前に現した姿は、伝承等でも有名な水のドラゴン。
「リ、リヴァイアサン?」
「あ~。もうここに来たか~」
「う~。そうだね~。今回は早かったね~」
驚きの余りたじろいだういういを前に、二人は予定調和と言うばかりの態度を示した。
理由はとてもシンプルだ。
ここの迷宮のボスが何であったのかを、前々から知っていたからである。
「え? えええっ!」
他方、今回が初のういういからすれば、まさに寝耳に水。
まさか、本格的にヤバいモンスターがやって来るとは思わなかった。
「な、なんでこんなヤツが……」
「さぁ……とりあえず、この迷宮を作った人に言って下さいよ……そんなの」
ひたすらふためくういういに、みかんが他人事の様に言う。
実際、みかんが分かる事と言えば、五十年前もここでリヴァイアサンと戦った事のみだった。
そして。
「まさか、まぁ~たコレと戦うはめになるとはねぇ」
かったるそうな顔でぼやいた。
心の底から面倒臭そうな顔になっていたみかんを尻目に、シズは少しだけやる気になっていた。
「う~! 汚名挽回! 名誉返上だう~!」
「いや、バカだろ? 汚名挽回しちゃだめだろ? 名誉返上するなよ! てか、名誉がないだろ、今回のあんたには!」
「うるさい、う~! ともかく、ここはシズさんが倒すんだ、う~!」
スラリと、シズは腰の剣を抜いた。
『……ほう』
リヴァイアサンの方から声がした。
『お前は確か、いつぞやの……』
懐かしむ様な声音を吐き出す。
恐らく、一層目の死神と同じく、シズの風貌になんらかの記憶があるのかも知れない。
『今度は、前の様には行かないぞ?』
心なしか、楽しそうに答えた……様に見えた。
今から五十年程前、シズはみかんと二人でこの迷宮に挑み、そして打ち勝った。
シズが持つ追憶の記憶を辿ると、戦闘を半分楽しむリヴァイアサンの姿が思考の片隅に残っている。
特段、リヴァイアサンが好戦的と言うわけでもない。
戦う事を好むドラゴンでもない。
しかし、強者と認めた相手との戦いは痛快であったのかも知れない。
その真意は定かではないのだが。
「行くぞっ!」
普段からは想像も出来ない真剣な顔になって、シズは素早くリヴァイアサンに立ち向かって行く。
尋常ではない速さだ。
身体上昇魔法を受けたわけでもないと言うのに、その速さは軽く音速の二倍以上にまで到達している。
もはや天外な身体能力でリヴァイアサンに突き進むシズ。
だが、相手も負けてはいなかった。
ピシュッ!
まるでレーザーのような水鉄砲が無数にシズを集中的に襲う。
驚異的な正確さで、音速の倍近いシズの身体目掛けて飛んで来る。
それを当たり前の様に避けつつ、リヴァイアサンに突進したシズは、
「剣聖の力……受けるがいいっ!」
必殺! 風神・百烈斬!
一瞬にして強烈な剣圧を出現させる。
文字通り百はあった。
ういういが使う風神剣と恐らく同じ代物なのだろうが、根本的なレベルが違った。
ヒュドドドドドォォォッッ!
風を切る刃の筈なのに、標的に当たると爆発していたシズの必殺剣は、まるで集中砲撃したかの様な勢いで幾重もの大爆発を起こした。
もはや、異様な光景である。
百もの刃と風神の爆破を受けたリヴァイアサンは、アチコチにダメージを受け、身体中の至るところに爆発と剣激の傷を残していた。
しかし、完全に倒れる所までは至らなかった。
『腕を上げたな……嬉しいぞ!』
喜びの言霊をシズに吐き出すリヴァイアサン。
ザザザァ………
同時に波がゆっくりと荒立つ。
程なくして、波は大きくなって行き、巨大な波に変化して行く。
ダイダラウェーヴ!
ザザザァァァァァッ!
巨大な波はリヴァイアサンを中心に、
ザッパァァァァァンッ!
シズをひと飲みしてしまおうと、一気に加速し、流れ込む!
「うぉわっ!」
直後、とばっちりを食いそうなういういが叫んだ。
同時にみかんが動き、ういういを魔法の絨毯に乗せて上空に逃げた。
リヴァイアサンのターゲットは飽くまでもシズのみ。
思い、みかんはういういと一緒に上空へと逃げたのだ。
予測通り、大波は上空に逃げた二人など無視して、地上のシズだけを狙った。




