【9】
まさに圧倒的だ。
その後も、シズの独壇場が続く。
どうやら、このエリアは主にアンデット系のモンスターがメインなのか、根本的に不死のモンスターとばかり遭遇するのだが、出会って五秒と経たずして、シズが問答無用で倒して行き、そのままスタスタと何事も無かったかの様に歩を進めるだけに終わっていた。
「これが伝説のランク……Lランクの力か」
その一部始終を見ていたバルクが戦慄を覚える。
心なしか鳥肌が立った様な気持ちになった。
他方、それは他の二人も同じだった。
キウイとマサトの二人も尋常ではないシズの力を前に、ただただ呆気に取られる事しか出来なかった。
一方で、みかんとういういの二人はと言うと?
「そか~。ここは鍾乳洞になってるんですねぇ。たまには趣があって良いかもです~」
何処と無く観光気分になっていたみかん。
「おっほ~! これは赤の宝石じゃないか! 最近のゾンビは良いのを持ってるじゃないか!」
見事にただの追い剥ぎになっていたういうい。
シズが倒したモンスターの残骸をそれとなく漁っては、金目の物があったら頂戴すると言う、コバンザメの様な事をしていたのだった。
「……ふん、最下級の冒険者らしい振る舞いだな」
バルクが二人の評価を更に下げていたのだが、余談だ。
「おい、ういうい。そんなセコい事するのなら、お前が戦え」
「……は?」
ニコニコしながらアンデットを追い剥ぎすると言う、実に珍妙な事を続けていた所で、先頭にいた筈のシズに首根っこを捕まれた。
首根っこを捕まれ、ジタバタともがきつつ……しかしシズの腕力には無力だったのか、そのまま先頭にまで強引に連行されてしまう。
「そんなの、母さんがやれば良いだろう?」
「私は疲れた。お前の方が若いんだ。キリキリ働け。う~」
言い、先頭まで連行した所でシズの束縛が解けた。
「……母さん、だと?」
バルクは少し驚く。
見れば、他の二人にも動揺の色が見えた。
二人の会話にもし間違いがないのであれば、そこの最下級の冒険者は剣聖であるシズの娘となる。
そして、なんのためらいも無く言うのだ。
働け、と。
「ったく、人使い荒いなぁ……」
ぶちぶちと文句を口にしつつ、ういういは剣を抜いた。
全身包帯だらけのミイラが複数現れたのは、そこからすぐの事だった。
……そして。
「……ば、ばかな」
バルク達、冒険者協会から斡旋されて来た組は大きく目を見張った。
ミイラ達はやはり一瞬で倒されて行った。
強いて言えば、シズの様に何をしたのか分からないと言う訳ではないと言う所か。
否、それだけに……尚の事、良く分かった。
襲って来るミイラを軽やかにかわし、するりと柔軟な態勢で抜けると、鮮やかな剣撃で一刀の元に相手を仕留めて行く。
凄惨であるのに華麗で……かつ、エネルギッシュな攻撃だった。
「こ、こんな事が……」
バルクは愕然としながら、ういういの戦闘状況を見据えていた。
身体の震えが……止まらなかった。
その辺で、バルクの近くにみかんがいた事に気づく。
そして、みかんは笑顔で答えた。
「これで分かったです? 最下級の冒険者だからと言って、必ずしも最弱であるとは限らないのですよ~」
▲△▽△▲
一行は更に奥まで進んで行く。
途中、迷路と罠に苦労されされたが、どうにかこの階にある最奥のエリアにまで到達した。
「……行き止まりか?」
バルクが誰に言うわけでもなく呟いた。
最奥と思われる場所は崖になっており、そこから先は滝の様に流れる水しかない。
そうなると、ルートを間違えたのだろうか?
「いいえ~。ここで当たっているです~」
「う~。そうだねぇ。ここは昔と同じだった~」
答えた二人は、崖の近くに手を向ける。
すると……。
ポウゥ………
紫色の光が床に浮かんだ。
しばらくして、魔法陣の様な紋様を描くと、その中央にドアの様な物が出現した。
「なんだこれ?」
ういういはちょっとだけ面食らう。
「ここの迷宮と言うか、この階のボスは魂を選ぶんですよ~」
「魂を選ぶ?」
なんだそれは? と言いたくなる顔のういういがいた。
「そう~。良くも悪くも質の高い魂を好むのです」
「その魂の価値に見合う者が、手を向けると、入り口が開く。う~」
結果、扉が眼前にあるのは、そう言う理由なのか……と、一応の納得をして置くういういがいた。
完全な理解は出来ていないけど、そう言う物なのかと曖昧に納得して置いても良いかなと思えた。




