【7】
余談だが、Lランクと言うのはLegendの頭文字から取った特殊ランクの事で、SS+の更に上のランクになる。
根本的には規格外のランクなので、一般的には存在してるのかすら怪しいレベルなのだ。
実際、バルクもシズの冒険者カードを見て、はじめて本当にLランクがあった事を実感した。
「幻のLランクを持つ方と一緒のクエストを受注出来る事を光栄に思います」
「う?」
何やら、大袈裟なくらいにかしこまっていたバルクを見て、シズはハテナ顔になってしまった。
間もなく、バルクはみかんとういういのカードも手にする。
冒険者協会のダンジョンに入ると言う事もあり、体裁上の冒険者になる必要があったのだ。
ただ、当たり前だが、こないだ成り立てである。
「………?」
バルクはみかんとういういの冒険者カードを見て小首を傾げてしまった。
二人とも、D-だからだ。
見事な最下級の冒険者だったからだ。
「これは、なんの間違いですか?」
D-と言えば、元気にスライムやらゴブリンやらを狩りに行くのが関の山クラス。
到底、五十年周期の超ダンジョンに挑む冒険者とは思えない。
「間違ってないですよ~?」
「一昨日、冒険者登録したばっかだしな、私らは」
「ふざけてるのか?」
バルクは苦いに顔になった。
ダンジョン攻略は命懸けだ。
そんな命を懸ける場所に、こんなアホな最下級冒険者と一緒になんか行けるか!
そうは思ったが……同時にLランクのシズも同行している。
こんなチャンス、もう一生ないだろう。
「精々、死なない様にするんだな」
バルクはむすっとした、不本意極まりない顔でみかんとういういの二人を睨んでいた。
「なんだよ? ランクで人を見下すのか? バカなのか?」
「まぁまぁ、確かにうちらは一番の新人のペーペーなわけだし~」
ムカッと来たういういに、みかんがすぐさま止めに入る。
その反面、
「そこの鎧さんも、人を数値やランクで判断してる様では、まだまだ半人前ですよ~? ちゃんと一緒にクエをやってから答えを出した方が良いですねぇ」
にっこりと毒を吐いてみせた。
なんだかんだで頭には来ていたみたいだ。
みかん達とバルクに険悪なムードが漂う中、魔導師のマサト・キネクスと、回復師のキウイ・チャイの二人がそれぞれ自己紹介してみせた。
互いに冒険者カードを渡し会う。
そして、二人がみせた態度はバルクと全く同じ物だった。
Lランクのシズに敬服し、最下級のみかんやういういを見下すと言う、もはやテンプレなのかと言いたくなる様な、わかりやすい態度だった。
一通り、自己紹介も終わり、後はダンジョンに向けて出発するだけとなった。
情報では本日で丁度五十年目を迎え、ダンジョンの復元が行われる。
現時点ではただの池にしか過ぎないここも、本日の十二時……つまり、ダンジョンの復元と同時になんらかのアクションが発生する。
果たして。
十二時になった、その時。
ゴゴゴゴゴッ………
周囲に地鳴りが響き、
ザザァァァッッ!
池の中央が盛り上がり、激しい水しぶきと同時に、巨大な建物の様な物が浮き上がって来た。
「これが、カオス・ドラゴンの封印をしたダンジョン?」
ういういは誰に言うわけでもなく呟いた。
みかんは頷く。
「正確には五大池の一つ、ゼンポー池の迷宮です~。昔は上位悪魔の巣窟でした~」
「ほぅ……そりゃやっかいだな」
みかんの言葉にういういは軽く頷きだけを返す。
面倒だとは思うのだが……それでも尚、思う。
負ける気はしない。
「上位悪魔の羽が高いんだよなぁ……」
「まぁ~た、そんな事ばかり言う」
早速、素材の品定めを始めたういういに、みかんはちょっとばかり口を尖らせたが、まもなくふふふと笑った。
ういういらしい言葉だと、つい思えてしまったのだ。
「う~。それじゃあ、出発するか」
シズが周囲に軽く促しをいれる。
この言葉に全員が頷きを返した。
メンバーは六人。
無名のトレジャー・ハンター改め、最下級冒険者のみかんとういうい。
戦士のバルク、魔導師のマサト、回復師のキウイ。
そしてLランクの剣聖・シズ。
六人はシズを先頭にして、池から浮き上がって来たゼンポー池の迷宮へと、向かって行くのだった。
◎○●○◎
「ふ~。やっと着いたか」
コーリヤマの街中で止まった馬車から、一人の少女が降りて来た。
銀髪の長い髪をそれぞれ両サイドに束ね、俗に言うツインテールに近い髪型をしていた、端正な顔立ちの少女だった。
見た目からすると十五~六歳と言った所だろうか?




