【6】
「分かりました……では、こうしましょう。ダンジョンが復元される残り三日。この猶予までに私達の方からも腕利きの冒険者を何人か用意させて頂きます」
「う?」
「会長を含めた三人の実力は、わざわざ聞くまでもない事は存じております。しかしながら……三人で、しかも短期間の内にダンジョン攻略をしないといけないと言う条件は余りにも厳しい」
淡々と、厳しい表情のまま答えるチョッコ。
そこには、街を守る冒険者協会コーリヤマ支部の支部長であるが故の顔を見せていた。
失敗は許されない。
この一点に尽きる。
もし失敗した場合、シズの生存は不明になる。
これだけでも協会からすれば大打撃だ。
とても優秀かつ貴重な存在が、協会から失われる。
しかし、今回に限って言うのなら、シズ個人の問題では済まされない。
「会長。これはもう、コーリヤマの明日を懸けた戦いなのです。ご理解頂けないでしょうか?」
チョッコは深々と頭を下げた。
「……ふ」
シズは少しやんわりと笑みを作る。
そこから柔和な笑みを作りながら答えた。
「立派な支部長になったなチョッコ。わかった。その条件は飲もう。ただし」
シズはそこまで言った時、表情を真剣な物にする。
「もし、足手まといと思ったのなら、問答無用で置いて行く。私と同行する冒険者にはそう伝えておいて欲しい」
「了解しました。それでは早速手配をして来ます!」
そこからチョッコは慌ただしく支部長室を出て行く。
その顔には……これから超残業になるなぁ……くそぅ……とか言う感情はなかった。
……少ししか。
「よし。これでなんとかダンジョン攻略をする事は可能になった、う~」
「ですねぇ~。いや~、助かったです、シズさん~」
大急ぎで走り出して行くチョッコを軽く見据えながらグッジョップしてたシズに、みかんが満面の笑みで答えた。
「そうだな。一応、お礼は言っとくよ。ありがとう」
ういういが、ちょっと照れ臭そうにシズへとお礼を口にした。
「う? 珍しい~。ういういが私に頭下げるなんて。これは明日は大雨だ、う~。丈夫な傘を探さないと」
「なんだよ……私だってちゃんと筋が通ってれば素直にお礼だって言うんだよ!」
割りと本気で驚いたシズに、ういういがイラッとした顔を作る。
地味に喧嘩になりそうな顔になっていた所で、みかんが止める様に割って入って来た。
「まぁまぁ。とりま、なんとかなった事ですし、今日の所はご飯でも食べに行きましょう~」
こうして、シズと言う新しい仲間をパーティに加え、カオス・ドラゴンの封印作戦を着実に進めて行くのだった。
▲△▽△▲
三日後。
みかん・ういうい・シズの三人は、コーリヤマ北部にある、大きな貯水庫としても使われる巨大貯め池にやって来た。
当然、チョッコ達も一緒である。
宣言通り、数人の冒険者達を引き連れていた。
「ほむ、あれが今回のうちらと一緒に行く冒険者の人か~」
「そう見たいだな」
「う~。別にいらないのに~」
チョッコの近くにいる数人の冒険者をみて、みかんは笑みを作り、ういういは興味のない生返事をしつつ、シズに至っては最初から邪険な態度を見せていた。
見事な三者三様っぷりである。
「おはようございます。会長。それとみかんさんとういういさんも」
三人の前に立ったチョッコは社交辞令っぽくはあったが、柔和な笑みを淑やかに作ってみせる。
これに、三人も挨拶を返した。
そこから直ぐに本題に入った。
「細かい詳細は要らないでしょうから省きます。今回のダンジョン攻略に当たって、こちら側から会長達の補佐をさせて頂く方が、こちらの三人になります」
チョッコは軽く紹介した。
見る限り五~六人はいるのだが、どうやら全員がみかん達のパーティに加わるわけではなさそうである。
「まず、剣士組合から代表で、バルク・グリーンさん」
「よろしくお願いします」
チョッコの紹介の後、彼女の近くにいた、鎧の男が礼儀正しくお辞儀をした後、みかん達三人へと自分の冒険者カードを渡した。
そこでシズも自分の冒険者カードを渡す。
前々も言ったが、これが冒険者の通例の礼儀でもあるのだ。
「……ランクLですか。はじめて見ました」
鎧の男、バルクはシズのカードを見て少し顔を強ばらせる。
無理もない。
Lランクと言うのは、言ってみれば規格外のランクなので、普通の冒険者からすれば噂に聞いた事がある程度の代物なのだ。
Lランクを持つ冒険者に会う事など、一生に一度あるかどうかも分からない。
もちろん、そんな人物と同じパーティに入るとなったら、一生に一回であっても奇跡的な遭遇と言える。




