【20】
「余程、あのカオス・ドラゴンを恐れたのでしょうか? 封印の力は例え残り一つであったとしても、カオス・ドラゴンが自分の力で即座に開封する事は出来ない様に造られている。……もっとも、ダンジョンが復元してしまう以上、残り一つになってしまった場合、三日以内に再び封印を施さない限り、結局は開封されてしまうのですがね」
「封印のままにして置く方法はないのか?」
……とは、ういういの声だ。
事情は少し掴めたが、未だに分からない事の方が多い感じではあった。
「簡単な事です。再び復元されたダンジョンに赴き、もう一度封印すれば良いだけの事」
つまり、攻略しろと遠回しにみかん達へと述べているのだろう。
本当に何がしたいのか。
道化師の真意はみかんにも全く見えない。
しかし、それでもやらないと言う選択肢は存在しなかった。
「みかんとしては面白くない話だけど、乗ってやるです」
「そう言ってくれると、私は信じておりましたよ、みかんさん」
にこやかに笑みを作った。
やっぱり、どこか毒々しさを感じすにはいられなかった。
「それでは……私はこれにて失礼させて頂きます。くれぐれもコーリヤマのダンジョン攻略をお忘れなく………」
この言葉を最後に、道化師は音もなく消え去った。
後に残ったのはういういとみかん……そして、サンダーバードを倒した事で出現した宝箱だけ。
「……って、お宝あるじゃん!」
そこで気付いたういういが、スペシャル素早く宝箱に飛び付く。
中身がミミックであったのなら、誰よりも先に喰われるタイプだった。
ガチャッ!
パァァァッ!
宝箱を開けた瞬間、眩いばかりの光りがやって来た。
なぜ、こんな演出をするのか知らないが、この光が宝箱から放たれた時、それは超が付く程のレア物が中に入っている事を意味していた。
果たして。
「……本?」
ういういは片眉を捻った。
「スキル・ブックかな、これは」
「なんだ、それ?」
「文字通り、スキルを覚える為の書物ですよ。正確には魔導器に近いですね。読むと言うより、使うと本の中に存在するレアな技術を勝手に習得する事が出来るのです」
「読むと言うか、使えばいいのか?」
「そです~。早速使ってみるといいです~」
「使う……ねぇ」
今一つやり方が分からないから、取り合えず一頁だけ捲って見た。
中には何も書いてなかった。
「……なんだこれ?」
白紙のページを見てういういは不思議そうな顔になる。
ういういの頭の中に、得体の知れない文字が勝手に超速で入って来たのは、ここから間もなくの事だった。
「……な、なんだこれ……気持ち悪い」
見た事もない、紋様染みた文字が次々と頭の中に入って来ては消えた。
全くもってサッパリ良く分からない現象であるし、言葉にどう表現して良いのか分からない不思議さのある体験でもあった。
しばらくして。
「……魔法、なのか?」
「うぉう。魔法だったか」
みかんは、少しだけ申し訳ない顔になった。
それと言うのも、だ。
「あたしゃ、魔法力が限りなくゼロに近いんだがなぁ……」
つまり、習得しても使いこなせない。
それでも、ギリギリ一回は使えるらしく、
「まぁ、いいや。何故か使い方が分かるし、一回やって見る」
一応、試しに使って見る事にした。
仕組みなんかさっぱりだが、頭に魔導式を思い浮かべる。
別に誰彼に習ったわけではなく、スキルブックを使った事で無意識に自分でやっていた。
断罪の雷!
カッッッ!
ドォォォォォォォォンッ!
「………………うそだろ?」
放った当人がビビっていた。
魔法を発動した瞬間、あたかもサンダーバードが降臨したかの様な強烈な雷が降ってきた。
そして、一瞬の稲光の後……極めて高密度の雷と爆発がほぼ同時に起こる。
「お~。上出来じゃないですか~。すごいすごい~」
「た、確かにすごいんだけどさ……」
そこからういういは頭を軽く手でおさえていた。
「なんか、スゴい頭痛が……」
「ああ、MP切れですねぇ~。まぁ、そこは何回か使うとじきにMPが増えて、そのうち大丈夫になって行くです~」
みかんはニコニコと答えた。
「そう言う物なのか?」
「そう言う物なのです」
結局、やっぱり良く分からなかったういういではあったが、一応の納得をしておく事にした。
頭痛が酷くて、あんまり頭を使いたくなかったからだ。




