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こうして私は無双する・みかんVer  作者: まるたん
無名のトレジャーハンターでも一攫千金の夢くらいは見る
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【17】

『たかが人間風情が……勇者としての資質もない無力な者が意気がりおるわ……』 


 サンダーバードは威風堂々とした態度でみかんを見据えた。

 まさに強者の余裕。


「ハンッ! そっちこそ、たかが鷲風情が人間様にタメ口利いてんじゃねーです!」


 他方のみかんも明らかな喧嘩腰で、サンダーバードの眼前にまで来て啖呵を切って見せた。


 瞬間。


 カッッッ!


 激しい稲妻がみかんの周囲に現れる。

 しかし、雷光が周囲に走ったと思われた『だけ』に終わる。


『……なんだと?』


 サンダーバードに若干の焦りが生じる。


「だから言ってるです。人間様をナメるんじゃないと」


 言い、みかんはニィ……と微笑みながら右手を広げた。

 そのてのひらには、激しいスパーク音を出す雷が。


「この程度の雷、吸収する事くらい造作もないです」


 顔では言っていた。

 避けるまでもない、と。


『……ほう、面白い』

  

 凄まじい雷をアッサリと吸い取ってしまったみかんに、サンダーバードは少しだけ楽しそうな声音を吐き出して見せる。


『ならば、これならどうだ!』


 その瞬間、


 バリバリバリィッッッ!


 サンダーバードの口から強烈な稲妻が放出された。

 稲妻は空気抵抗など皆無に等しいと言わんばかりの速度でみかんに突き進み、そのまま直撃して見せた。


「……は? 馬鹿なのかよっ!」


 流石に直撃を喰らうと思っていなかったういういは唖然とした顔のまま叫んで見せた。

 だが、その心配は全くの無用だった。


「ふぅ~……良いマッサージですねぇ。肩凝りが最近酷くて~」


 稲妻の直撃を受けた筈のみかんは、ケロっとした顔をして、軽く首を回して見せる。


『馬鹿な……』


 流石のサンダーバードも驚きの声音が転がって来る。


「馬鹿? 馬鹿だと思うです? 世の中は広いのです。お前程度のモンスターなんか、ごろごろしているのです」


 ……とは言え、やっぱりこれは少し異常だなと、内心でのみ付け足して。


 それと言うのも、みかんの予測では眼前のサンダーバードの実力は、ういういが頑張れば勝てる程度の相手と予測していたからだ。

 このダンジョンの難易度がSと言うのもある。

 

 ここから予測するのなら、サンダーバードの実力はS帯程度。

 一緒に同行しているジャグと同等の実力である筈なのだ。


 ところがどうだろう?

 今のサンダーバードは確実にジャグの能力を越えている。

 戦力的には同じかそれ以上だろうういういの二人を入れても、勝てる可能性は薄かった様に見られる。


 これこそが、この世界に生まれている、謎の異常現象。

 異彩詳細全くの不明だが、なぜかモンスターの強さが異常に上昇している不思議現象だ。


 そして、この現象がそのままサンダーバードにも当てはまるのだ。


「ま、世界がおかしな事になっていたとしても、別に対処出来ないレベルではないんですがねぇ」


 言い、みかんは右手に魔力を込め、頭の中に魔導式を紡いで見せる。


「バイバイ鷲野郎。次はみかん見たいな可愛い子に生まれて来る事を祈ってるからね」


 超炎熱爆破魔法フレインダムド


 ドォォォォォォォォンッ!


 周囲に尋常ではない超爆発が起きた。

 凄まじい高次元の大爆発。

 まさに桁違いの威力があった。


「……よしっ!」


「よし、じゃないよっ!」


 一拍置いて正面を確認したみかんは、右手コブシをギュッと握りしめる。

 そこから、ういういに軽く叩かれた。


「痛いなぁ……なにするのさ」


「なにって、お前……幾らなんでもやり過ぎだろうがっ!」


 ヒリヒリするのだろう頭を擦りながら言うみかんに、ういういが眉を思いきり釣り上げて叫んだ。


 二人の正面には、もう何もない。

 強いて言えば、ただの虚空だ。

 先ほどまで存在していた巨大な鷲は、まるで最初から居なかったかの様に、跡形もなく消し飛んでいたのだった。


「完全に消滅させてどうするんだよっ! ヤツの素材ごと完全に無くなったじゃないかっ!」


「ああ~」


 消滅した素材は、幻のお宝でもある雷鷲の瞳。

 時価五千万也。


「ま、いいじゃん。さっき純銀をドロップしたしさ? 今さら五千万っぽっちで文句言わなくてもさぁ?」


「文句言うわっっっ!」


 むしろ弁償しろとでも言いたい顔をしていた。

  

 その時だった。


 ゾクッッッッッ!  


 ……と、背筋が凍った。

 今までは何となくだった物が、確実にかつ露骨に感じる様になった。


「……な、なんだぁ?」


 ういういも感じたらしく、思わず焦りながらも後ろを振り向く。


 明らかな悪寒の正体は、うっすらと不気味な笑みを作っていた。

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