【16】
開けた先にあったのは、丸い光。
巨大な光の球だった。
「……これがサンダーバード?」
鷲じゃないのか?
ういういは片眉を捻る。
「多分、ヤツは超自然現象と呼ばれているから、姿や形は幾らでも変えられるのかもです」
「じゃあ……目の前のが、私らのメインターゲットで間違いないのか」
しかし、それでも釈然としないなぁ……と、内心で呟くういういがいた。
『人の子よ』
声がした。
球の方から聞こえる。
恐らく……否、間違いない。
サンダーバードの声だ。
「しゃべった?」
ういういは仰天する。
正直、ただの大きな球にしか見えない物が、まさか言葉を吐き出すとは思いもしなかった。
『何ゆえ、この地を荒らす? ここは太古より勇者に試練を与える場』
サンダーバードと思われる球体は、淡々とした口調で問いかけて来た。
今ではおとぎ話レベルではあるが、この塔は勇者が一人前になる為に作られた試練の塔だった。
しかし、それから何百年もの時を越え、今ではその話を知る者すらわずかな状態になりつつある。
「昔はそうだったかもですが、今じゃただのダンジョンでしかないです。部外者だってこの塔に挑戦する時代なのですよ」
「そうだ! よって私は、お前の素材を売る為に来た!」
「清々しい位、欲望に忠実ですなっっ!」
胸張って、己の強欲さ加減を叫ぶういういに、みかんが思わずツッコミ半分の叫び声を上げた。
『愚かな人間よ……己が欲望のまま、この地を荒らすか……』
パリ……パリパリィ………パリパリッ!
巨大球体から、幾ばくかのスパーク音がやって来る。
「……ありゃ、ごめん、怒った?」
ういういは苦笑する。
そりゃ怒るよと、みかんは呆れ眼になっていた。
見れば、ラーやジャグの二人も吐息混じりにういういを見ている。
「い、いやさぁ……ほら、私ってさぁ……昔から素直過ぎる所があってさぁ」
ういういは、言い訳がましい台詞を言い出し始める。
しかし、素直であれば良いと言う訳ではない。
時と場合によっては、本音と建前を使いこなす必要があるのだ。
『欲望の為にこの地を荒らした罪、万死に値する!』
刹那、光は大きく形を変え、大きな大鷲に変化する。
赤い燃える様な翼、鋭いクチバシ。
全てを切り裂けそうな凶悪な爪。
そこには、これまでとは次元の違う強さが存在していた。
「……冗談だろ」
ういういは、思わず呆けてしまう。
常識外れのエネルギーが、周囲を渦巻く。
正直、予想以上だ。
いや……超過している!
「こ、こんなのに勝てる訳が……」
思わず逃げ腰になるういういを前に、ジャグが攻撃を仕掛ける。
ミノタウルス染みた像との戦いで得た補助魔法は、まだ効果が切れていない。
熟練度レベル99は伊達ではない模様だ。
「でやぁっっ!」
音速を遥かに越える超速でサンダーバードに突き進む。
ドォォォォンッ!
「ジャグっ!」
ラーが叫んだ。
尋常でない速度で突き進むジャグを正確に捉えたサンダーバードが、文字通り光速で雷を落として来たのだ。
早すぎて、ういういには何が起こったのかすら分からなかった。
分かった事は、突進して行くジャグがいきなり稲光と共に大爆発した事だけ。
その一撃で、ジャグの半身が燃え尽きた灰の様に溶けていた……これだけだ。
直後、ラーがジャグの元に近付く。
「しっかり! しっかりして!」
「す、すまない……ラー……ぶはっ!」
ジャグは盛大に口から血を吐き出す。
そして意識を失った。
一瞬後、みかんは魔導式を頭に紡ぎ出し、
上位復元魔法!
ジャグに向けて回復魔法を発動させる。
これによって、ジャグの半身は見る間に回復したが……意識までは回復しなかった。
結果、戦闘不能と言う形になる。
「絶望に変わりはない……ってか」
ういういは額から、いやな汗が流れるのを、自分でも感じていた。
戦況はかなり苦しい。
今の一撃はジャグであったが、あれが自分であったとしても、なんらおかしくない。
比喩でもなんでもなく、光の早さの攻撃など、避けようがない……と言うのが、ういういなりの答えだ。
音速とは文字通り桁が違う。
「くそ………」
苦り切った顔になり、玉砕覚悟で特攻を掛けてやろうかと思っていた時だった。
「いいでしょ~。みかんがやってやるです~」
ういういの後ろから、ずいっとやって来たみかんがいた。
そんなみかんは、普段とは確実に違う……戦意に満ち満ちた、まるで狂戦士の様な顔をしていた。




