【15】
ヒュィィィムッ………
ういういが狂喜乱舞して、スーパーテンションのままみかんが出した異空間のアイテムボックスへと銀をしまおうとしていた時、塔の真上から巨大な円盤の様な物が舞い降りて来た。
「……これは?」
「昇降機でしょうかねぇ~?」
始めて見たのだろうラーが、ちょっとだけハテナを頭の上に浮かばせていた所でみかんが口を開く。
「多分、この上に乗るっぽいです」
「なるほど。では乗ってみますか」
上から降りて来た円盤を軽く指して言うみかんに、ラーは頷いてから円盤に乗ってみる。
まもなくジャグも合わせる形で乗った。
そして、みかんも円盤の上に搭乗する。
「え? ちょっと待てよ。これ重いんだよ、少し手伝ってくれよ」
他方、銀の固まりをプルプルを震えながら持っていたういういが、やや焦りながらみかん達に言ってみせた。
絶対にアイテムボックスに入れない限りは、この場から離れない腹だ。
「さっさと入れなさいよ~……全く」
仕方ないので、みかんがういういの持っていた純銀の塊を手にする。
ヒョイと、まるで綿毛でも持ってるかの様な勢いで。
「……馬鹿力」
ういういは呆れる。
実際、金属の塊は重い。
純銀なら尚更だ。
ちょっとした大石にも匹敵する塊なら普通に百キロはある。
それを片手でヒョイとやれる時点でおかしいのだ。
「本当、みかんさんは色々と驚かせてくれますね……つくづく面白い人だ、貴女は」
ジャグは彼特有の爽やか笑みを作って言う。
だが、瞳の奥に存在していたろう……得体の知れない何かは、おおよそ爽やかと言う単語には似つかわしくない。
上手に言えないが、みかんはこの『何か』を、微妙ながら……しかし、確実に感じ取っていたのだ。
ハッキリと物を言うのなら、そう言う貴方も何者なのですか? と言ってやりたい所だが、敢えて口にするのをやめにした。
何となく……本当に何となくなのだが、その言葉を口にしてはいけない。
そうと第六感が告げていたのだ。
「ほら、もう用事は済んだよね? じゃあ、上に行きますよ~」
アイテムボックスに純銀を入れたのを確認し、みかんは軽くういういを促した。
直ぐに頷いて、ういういも円盤の上に乗る。
そこからみかんが再び搭乗し、全員が乗り終わった瞬間。
フィィィィン………
円盤はゆっくりとその高度を上げて行った。
「おお、すげぇ」
何気に初体験だったういういは、思わず目を白黒させて周囲を見渡す。
そうこうしているうちに、円盤は早くも上層まで到達する。
途中天井があったのだが、円盤が近付くと同時に自動ドアの様な要領で天井が開いた。
……そして。
四人が展望台と思われるフロアに到着した時、足元の円盤がスゥ……と音もなく消えた。
見る限り、そこは、
「頂上か」
ういういは言いながら、展望台の様な部分から外の情景をゆっくり見渡す。
眼下には、普段絶対に見れないだろう広大な大地が地平線の彼方までクッキリと見渡す事が出来た。
「すげぇ……良い眺めだ」
思わず感嘆の声音になってしまった。
テラスから見た眺めも最高だったが、頂上から見る眺めは更に輪を掛けた絶景であった。
他の誰も知らない世界の一部分を贅沢に独り占めした気分だ。
「いや~。なんて言うか、感動だな!」
心まで清々しい。
そうと、ういういの顔が無言で語っていた。
他方のみかんは、逆に真剣な顔になっていた。
もう、ちょっとした観光気分だったういういとは対照的だ。
「なんだよ、もう少し楽しそうにしても良いんじゃないのか?」
「そう言う、ういういさんはどうしてそこまで呑気にしてられるのか……まぁ、良いんですがねぇ」
それがういういの個性なのだから仕方ない。
みかんは胸中でのみ呟く。
「そろそろ、観光はおしまいかな?」
少し間を置いた所で、やや気遣う声音のジャグがいた。
彼の視線はやたら豪奢な門にあった。
もう、余計な事を考える必要はないだろう。
この豪奢な門の先に構えているのは、間違いない。
今回のメインターゲットである、サンダーバードが待っている。
「……なるほど。確かに呑気に構えてはいられなかったな」
ニヤリと、ういういは好戦的な笑みを作った。
「みんな、準備はいい?」
ラーが全員を促してみせる。
同時に他の三人が縦に首を振って見せた。
この場にいた四人に緊張が走る。
「開けるぞ?」
ジャグは門に手を掛け、ゆっくり開けて見せる。
キィィッ………
他の門と違い、不思議と良く手入れされている扉の様な音がした。
同時に門が開く。




