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こうして私は無双する・みかんVer  作者: まるたん
無名のトレジャーハンターでも一攫千金の夢くらいは見る
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【12】

「大漁、大漁ぅ~!」


 陽気なういういの声がやって来た。

 どうやら、ワイバーンの剥ぎ取りがおわった模様だ。


「あ、さっきはありがとう! お陰で助かったよ! ワイバーンは半分になっちまったけどな」


 ういういは苦笑いで言う。

 どうやら、まだワイバーンの取り分が半分になってしまった事が気に入らない様だ。


「相変わらずガメついですねぇ」


「だってさぁ……ドラゴンの素材って、売ると結構な金になるんだぜ? そりゃ、後ろ髪引かれるって言うかさぁ……?」


「よかったら、私達の分もどうぞ」


 青年は爽やかスマイルで言う。

 ういういの瞳がキラキラ光った。


「マジでっ! いや、悪いねぇ~っ! それじゃ早速!」


 喜びながら、もう一体のワイバーンに向かおうとした所で、みかんに襟首を捕まれた。


「……恥ずかしいからやめて」


「な、なんだよぅ……あっちが良いって言ってるんだしさぁ……」


「それでも、冒険者として最低限のマナーは守らないと。自分達で倒した物は自分の、よそはよその。これは常識です~」


「……ちっ、わかったよ」


 比較的、真剣な眼差して言うみかんを前に、ういういがやや折れる形で頷く。


「別に構わなかったのですが……でも、マナーは確かに大事ですね。わかりました」


 ジャグも少し納得混じりに答えた。


「さて、自己紹介も終わった所で、クエストの続きと行きましょうか~」


「……え? あたし、まだ名前も言ってないんだけど?」

 

 先に進もうとした所でういういが、ちょっとだけ驚いた顔になった。


「そうだっけ~?」


「そうだよ!……あ、えっと、私はういうい・ソレイユ」


「ういうい・ソレイユ?」


 その名前を耳にして、青年……ジャグは少し眉を動かした。


「そうだが? それがどうかしたか?」


「すると……君はかの有名なシズ・ソレイユ・サンスタンドの親戚筋に当たる方なのかな?」


「ああ、シズは私の母だな」


「っ!」


 あっけらかんと答えたういういに、ジャグはもちろん、隣にいたラーまで驚いた顔になる。


「まさか、こんな所で剣聖の娘に会うとは」


「本当、世の中……何があるかわかりませんね」


 二人は大きく目を開けてういういを見据えた。


「……まぁ、シズは有名かもだけど、私はただの娘だから。シズじゃないし、あれから比べたら私なんかミジンコみたいな物だし……」


 ういういは少し照れ臭そうに答えた。


「と、とにかく先に進もうぜ? もう陽も暮れて来たしさ」


 ちょうど外に出て来た関係もあり、今の大体の時間が周囲を見るだけで予測する事が出来た。

 太陽は、ゆっくりと西に沈もうとしていた。


「そうですね。中に入って、今日は休める場所があれば良いのですが」


 軽く模索する形でジャグが答える。


「まぁ、取り合えず進みますか~」


 そこからみかんが軽い口調で提案し、四人に増えた一行はそのまま先に進んで行く。


 塔の外側を一周する様な形になっていたテラスを進んで行くと、通路は階段に変わる。

 どうやら、塔の外周を使った螺旋階段の様だ。


 階段を進んで行くと、中に続いてるのだろう門があった。

 今度の門はどこか穏やかな印象を感じる。


「ボス級モンスターがいるって事はなさそうだな」


「そう願いたいとこです~」


 門の形が、そのまま先にあるフロアを意味する傾向にあったこのダンジョンだけに、穏やかな雰囲気のある門は、恐らくそこまで剣呑な事にはならないだろう。


 ギィィィィッ………


 門を開けて見ると、その先は広間の様な物になっていた。

 広間の中央には牛の頭をした、まるでミノタウルスの様な、巨大な像が設置されている。

 やけに脈動感のある像だった。

 まるで今にも動きそうな勢いがあった。

 

 両端には長い階段。

 これは多分に次の階層へと繋がっているのだろう。

 その両端から見てほぼ中央の床は水色に光る魔法陣が。


 この世界のダンジョンでは比較的お馴染みでもある、結界エリアだ。


 魔除けの魔法陣でもあるそれは、魔法陣の中にいる限り、根本的にモンスターから襲われる心配が皆無になる。

 このダンジョンを作成した者が仏心で作った休息地点かと言うと……実は違う。


 特に意図せずとも、ダンジョンの神様が必ず何処かに作るからだ。

 そう考えると、ダンジョンの神様と言うのは何者なのだろうか?

 ふとそんな事を考えてしまう。


 閑話休題。


「今日はゆっくり休めそうだな」


 ういういは穏和に語る。

 これまで、この塔に来るまでの間、みかんと交代で寝ずにキャンプを見張ったりしていたので、地味に寝不足でもあったのだ。

   

 しかし、この魔法陣にいる間なら、その心配はいらなかった。

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