馬鹿な冒険者に福音の到来【7】
一歩間違えれば、荒野と化していた……などとは思えないばかりに。
「……ま、なんにせよ。これはこれで、良かったのかも知れないな?」
ミナトは、醜い醜態を余す事なく曝け出している、二人の女神を軽く見据えながらも、やんわりと微笑んだ。
◁◁◁◀︎◀︎
時間は過ぎて、時刻はぼちぼち午後四時を回ろうとしている。
「……さて、今日は何を作ろうかな〜?」
太陽も傾き始め、あと少しすれば夕暮れになるだろうキータの街にある商店街の一角で、気楽を絵に書いた様な口調で答えていたのはリオだ。
本日は、夕食を作る当番でもあった為、学校の帰り道に街の商店街に寄って、夕飯に使用する食材を購入しようとしていたのだ。
余談だが、リオは六限目で授業が終わる日は大抵、夕飯を作る役になっていたりもする。
進学校でもある為、基本的には七時限目がある日も多いのだが、それでも六時限で終わる日もあったりする。
まぁ、エリート組と言うか、特待組は毎日七時限は当然……日によっては八時限目もあったりするのだが。
成績では負けていない物の……と言うか、普通にぶっちぎってしまってはいる物の、リオは特待生では無かった為、六時限で終わる日は普通に帰宅してしまうのだ。
余談序でに言ってしまうと、ニ学年からは特待組に混ざらないか?……と、担任から言われていたりはするのだが、丁重に辞退する予定である。
基本的にリオは、兄とお金に困らない程度の職にありつければ、それ以上の事は望んでもいないし、多少は割りに合った就職先を見付けると言う目的だけで、今の学校に通っている。
……よって、今以上に学業へと精を出す必要なんでなかったのだ。
更に言うのなら……
「……最近のお兄は、モテ期なのか何なのか……本当、おかしな位に綺麗な女に好かれているからなぁ……」
……なんぞと、吐息混じりに答えているリオの台詞通り、勉強ばかりもしていられない。
少し前とは、全く環境が異なるのだ。
シリアだけマークしていれば、後はさしたる脅威など微塵も無かった時代が懐かしい程だ。
野良女神と言う、予期せぬ異分子が現れたかと思えば、次は始まりの女神までミナトへと色目を使い始めて来たのだから……まぁ、リオからすれば、予想外オブ予想外!
一体、どんな間違えが発生すれば、その様なおかしな事案が発生すると言うのか?
ハッキリ言って、リオも気が気ではない。
また、リオの中にあったミナトへの気持ちも、ここ少しの間で大きく変わった。
きっと、パインと言う……目に見えて分かる脅威がやって来た事が、リオにとって大きかったんじゃ無いのか?
今にして思うと、そんな気がする。
ミナトの事を無駄に馬鹿にする風潮が高い割に、いつもいつもミナトの側に居ては、引っ付いて離れない。
これで、実は『つい最近まで恋愛感情を封印されていた』と言うのだから驚きだ。
そして……。
「パインさんの感情が元に戻ったと言う事は、これから先は更に厳しくなるのか……」
リオは独りごちながらも項垂れた。
……そう。
リオにとっての脅威は、更に上昇している。
もう、自分が本当の妹ではない事をミナトには伝えているし、リオもリオでミナトを諦めるつもりは、もはや塵も芥も無い。
あるのは前進のみ!
だからして!
「……あれ? シリアさんも買い物?……そして、その格好は何? 良く分からない服装をしてるね?」
商店街でバッタリ会った……までは理解出来るが、バッタリ会った格好がチアガールと言う、もはや『あなたはどっかの怪しいお店で働いている人ですか?』と言いたくなる様な風体を見せるシリアには、絶対に負けたく無い!
「あはは……えぇと、ちょっと色々あってね……」
地味に呆れた顔になって言うリオに、シリアはちょっとだけ苦笑混じりになって声を返した。
先程も述べた通り、今のシリアはチアガールとしか、他に表現出来ない様な格好をしている。
流石にポンポンを持っている様な事は無かったが、ふつーに誰かを応援してたのか? と言いたくなる様な格好としか、他に表現する事が出来なかった。
一応、全身をすっぽり覆い隠す様な、大きなフードを身に纏っている為、後ろから見る限りだと、単に全身フードの格好をしている様にしか見えないのだが……前の部分は開いている為、正面に立っているリオからすれば、チアガールの格好をしている事が丸分かりである。
それだけに疑念しか浮かばない。
果たして、シリアは……どうして、他人を全力で応援しちゃおう的な格好をしていると言うのか?




