最下級の冒険者であっても、混沌龍へと挑む事なら出来る【20】
「……まぁ、ユニクスさんが、今回の趣旨をちゃんと分かっているのであれば、それで良いのかもですよ」
微妙な顔になっていたリダがいた所で、みかんがやんわりと笑みを作りながら声を掛ける。
……そうなのだ。
わざわざ一人だけで戦闘をする事にした目的がここにある。
三人で攻撃を展開した場合、勢い余って混沌龍を討伐してしまう可能性がある。
もちろん、そうならない様に注意をするつもりだが、どこでどうなるのなんて言うのは、実際にやってみないと分からない。
しかし、一対一と言う条件であるのなら、互いに相手がどの程度なのかを確認する事が出来る。
傍目八目を置く事で、より正確に戦況を判断する事が出来るのだ。
今回のポイントは、戦況を冷静かつ正確に把握する所にあった。
もっと言うのなら、混沌龍のコンディションを逐一確認したい所にある。
混沌龍を弱らせて、催眠魔法を書き直す事……それが、みかん達の目的であったからだ。
戦況を見る限り、ユニクスがかなり優勢。
補助魔法の有用性と必要性が如実に現れた結果と表現しても過言ではない。
このまま一気にユニクスが押し切る事だって、決して夢物語ではないだろう。
そうと、ちょっと前のみかんやリダの二人は思っていた。
その時だった。
『……まさか、こんなヤツを相手にまで、私の最終形態を見せる事になろうとはな……』
防戦する事が多くなり、一方的に打ち負かされる危険性も色濃くなって来た所で、巨大混沌龍状態だったヒャッカは独白する。
そして……小さく呟いた瞬間。
ゴゴゴゴゴッッ…………!
大地が揺れた。
「……何?」
いきなりの地震に、ユニクスも思わず反応して周囲を見渡す。
そこで気付く。
これは……突発的に起こった地震ではないと言う事に。
「大地が……震えている……?」
何らかの理由で磁場が狂い始め、地盤が揺れ始めた。
その理由は不明だ。
……いや、違う。
揺れの中心にいたのは、巨大な混沌龍だった。
ここから考えても、答えは一つしかないだろう。
混沌龍のエネルギーにシンクロした大地が震え始めたのだ。
「……こ、こんな事が……?」
大地を揺るがす程の膨大なエネルギーが、混沌龍を中心にして放出されている?
……いや違う! 逆だ!
どう言った方法を使っているのかなど、ユニクスは考えも付かなかったが……今起こっている現象だけなら分かる。
揺れ動く大地から、大量のエネルギーを吸い取り……それらを全て自分の身体に吸収している。
果たして。
揺れが収まり、大地からエネルギーを吸収したのだろう混沌龍は、人間の姿に変化していた。
それは、ヒャッカとしての姿と述べて良い。
ただ、瞳が赤く……まるで血で瞳を染めたかの様に真っ赤だった。
「くっくっく……お前が、私をここまで追い詰めて来るのは、流石に予測外ではあった……誇っても良い。貴様は十分に強い」
人間の姿に戻った混沌龍は、ニィ……と妖艶な笑みをアリアリと見せ、余裕たっぷりにユニクスの眼前にまでやって来る。
「………」
ユニクスは無言になった。
但し、絶句ではない。
若干の焦りはあった物の……思った。
まだ行ける……と!
「それは、称賛の言葉と取ろう……もっとも? それであっても、私は今いる三人の中で最弱である事に代わりはないんだがな?」
ニヤリと好戦的な声音と態度をみせた。
お前にある余裕と同じかそれ以上に、私の方にもあるんだぞ?……と言う事を無言でアピールしていた。
「面白い……それじゃあ、第二ラウンドと行こうか」
再び、ユニクスとヒャッカの激しい攻防戦が始まった。
瞬き出来ない程の拳と蹴りの応戦だった。
互いに自分のスタミナを一切気にせず、己の意地と意地のぶつかり合いとも言える攻防と言える。
ユニクスの裏拳が飛ぶ、それをヒャッカはギリギリで身体をのけぞらせて避けると、のけぞった勢いをそのまま利用して、浮いた右足をオーバーヘッドキックの要領でユニクスの顔面にぶつけて来る。
ガッッ!
オーバーヘッド状態で蹴り込んで来た足を右手でガードしたユニクスは、次の瞬間左手で、ヒャッカの足を掴む。
更に、足を掴んでヒャッカの動きを一瞬だけ封じた瞬間に、ユニクスの右足が動く。
動き的にはローキックなのだが、オーバーヘットの体勢で蹴り込んで来た関係上、逆さまになっていた為……ヒャッカの顔面にユニクスの足が振り抜かれる。
……と、次の瞬間、
「……っ!」
何かを察知したユニクスはピクリとなり、ヒャッカの顔面を蹴り抜こうとした足を止める。
逃げる様に足を引っ込めた時、
ゴォォォォォォッ!
ヒャッカの口から物凄い勢いでドラゴンブレスが放たれた。




