最下級の冒険者であっても、混沌龍へと挑む事なら出来る【19】
ガードで混沌龍の突進を凌いだユニクスだったが、
ボウゥゥッ!
その瞬間、混沌龍の口から炎が吐き出される。
「……なっ!」
ユニクスは、咄嗟に右へと避けたのだが……。
バチィッ!
混沌龍のブレスから逃げる形で避けた所に尻尾の一撃が飛んで来て、成す術もなく直撃を喰らってしまう。
「ぐぁっ!」
尻尾の一撃を喰らったユニクスは、苦悶の表情を作りながら吹き飛ばされた。
「……ほむぅ。これはちょっと釣り合いが取れてないですねぇ」
一方的にユニクスが押されている戦況を見て、みかんは少しだけ眉を寄せた。
「やっぱり、補助魔法が無いと厳しいかな~?」
そうと、誰に言う訳でもなく答えていたみかんは、
超攻撃力上昇魔法レベル99!
超防御力上昇魔法レベル99!
超身体能力上昇魔法レベル99!
すかさず、ユニクスへと補助魔法を発動させた。
『……なっ!』
直後、混沌龍がおもむろに不本意な顔になった。
無理もない。
元から、単独で戦うと言う約束だったと言うのに、横からフォローを入れられたからだ。
しかも、かなり反則的な魔法でもある。
『貴様ら、汚いぞっ!』
約束を破るなと言わんばかりに非難する混沌龍。
しかし、みかんはしれっと声を返した。
「別に回復魔法とかはしないですから、そこは安心してほしいです……てか、本当は三人で戦っても良い所を、敢えて一人にしているんですから、この程度のオマケ位は目をつむって欲しいわけですよ~」
「……ちっ」
混沌龍は、苦い顔を作りながら舌打ちした。
実際、額面通りの戦力で言うのなら、みかんやリダも戦闘に参加している筈だし、補助魔法だって当然発動されている筈だ。
この位は目を瞑れと言われたら、もうそれで頷くしか出来ない。
……地味に不本意ではあるのだが、混沌龍はこの条件を飲む以外に他の選択肢を与えられてはいなかったのである。
仕方なく、混沌龍は補助魔法でパワーアップしたユニクスと戦闘を再開して行く。
他方、尻尾の一撃で吹き飛ばされたユニクスは、先程とは段違いの素早さで混沌龍へと突き進む。
補助魔法が発動していたのに気付いているのかどうかが微妙ではあったが、防戦一方では文字通り勝負にはならないと考えた事だけは間違いない。
ユニクスは一気に間合いを詰めると、勢いそのままに拳を振るう。
ドンッッッ!
混沌龍の腹部へと矢の様に突き刺さる一撃は、
『ぐふぁ……』
思わず腹部を両手でおさえてしまうまでの強烈なダメージを与えていた。
すかさず正面に回ったユニクスは、両手で腹部をおさえた事でがら空きになった顔面目掛けて右足を振り上げる。
ドカッッ!
大きさ的に言うのなら、人間とビルぐらいの差があったと言うのに、その大きさの差をもろともしないユニクスの蹴りは、混沌龍の下アゴをクリティカルヒット。
サッカーボールを蹴り上げたかの様な勢いで、混沌龍が飛んだ。
しかし、上空に高々と吹き飛んだ所でピタッと止まった混沌龍は、次の瞬間、逆に下へと落下するかの勢いで、下方にいたユニクスへと飛んで行った。
ガッッッ!
己の体重を全て乗せる感じで右手を振り抜いた混沌龍の張り手は……しかし、ユニクスの右手にアッサリ止められてしまった。
少し前に繰り出した突進の時とは全く違った。
両手でなんとかガードしていた前回とは違い、今回は片腕だけ。
しかも、かなり余裕を見せていた。
それは態度や表情だけには終わらない。
繰り出した混沌龍の張り手を右手でいなす様にガードすると、開かれた指の一本を両手で抱える様につかみ、そのまま一本背負いの要領で投げ飛ばして見せる。
「うぉりゃあぁぁっ!」
ぶんっっ!
綺麗に投げ飛ばしたユニクスは、飛んで行った混沌龍目掛けて自分も飛んで行く。
直後、吹き飛んだ到達予測地点へと先回りしたユニクスは、
ドゴォッ!
吹き飛んだ勢いも利用する形で、正面から渾身の正拳をぶつけた。
「はぐぁ……っっ!」
混沌龍の口からどす黒い鮮血が吐き出された。
「……う~ん」
そこまでの戦況を軽く見ていたリダが、ちょっとだけつまらない顔になっていた。
「ユニクスに補助魔法を掛けると、今度は混沌龍がボコボコにやられ過ぎてつまらないな」
……とは言え、混沌龍に同じ条件を与えてしまえば、今度はユニクスが一方的にやられてしまうだろう。




