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最下級の冒険者であっても、混沌龍へと挑む事なら出来る【17】

「そうですねぇ……どうやら、勇者の啓示を受けたユニクスさんの力は、みかんやリダの予測を大きく上回っているのかも知れないです」


 他方のみかんも笑みを作ってから答えた。


「はは……どうなんでしょうね? それでも、お二人の足元にも及びませんが」


 褒め称える感じの二人に、ユニクスはやや照れ隠しの苦笑を見せた。

 その後に続いた台詞は、一見すると謙遜にも取れる物だが、実際はユニクスなりの本心でもある。


「正直、私はまだまだこれからだと思っているのですよ」


「そこは仕方ないかもです。だって勇者レベル1って感じですもん。普通のレベル1とは違って最初から反則的に強いですが、逆に言えばこれから幾らでもグングン成長しますし、その成長率も反則的に高いのですから……まぁ、なんてか」


 みかんは、ちょっとだけつまらない顔になる。


「……勇者のステータスって、ズルいと思うんですよ……本当に……」


 後半はぼやきにまで発展していた。


「それは私も思う……インチキ紛いなレベルでサクサク強くなるとか……これだから勇者は……」


 隣にいたリダもブラックな思考を地味に醸し出していた。


「あ、あのぅ……」


 ユニクスは微妙に困った顔になる。

 別に自分の意思で勇者になった訳ではないし……勇者であったとしても、そんな顔をされる言われもない。

 けれど、なんか自分だけズルしてる悪いヤツみたいな扱いをされていて……なんとも微妙な心境に陥ってしまった。


 他方の混沌龍は、ポカンとなってしまう。

 ハッキリ言って隙だらけだったからだ。


 普通に攻撃出来そうな勢いだった。

 ……いや、この隙に逃げ出す事の方が先決だろうか?


 ただでさえ規格外な二人を相手にしないといけないと言うのに……この上、さっき吹き飛ばしたユニクスまで戻って来たとなっては、ヒャッカの勝機など万が一にも存在しないだろう。


 幸運にも、三人の意識は自分へと向いていない。

 今が逃げるチャンスだ!


 思ったヒャッカは、頭の中で魔導式を組み立てて行く。

 程なくして、彼女の近くにあった空間が捻れた。


 どうやら、ヒャッカは空間転移魔法テレポートが使える様子である。

 一般的には禁止されている魔法でもあるのだが、そんな決まりを混沌龍が守る筈もない。

 人間が作ったルールをわざわざ厳守してやる必要などなかった。


 ……あとは、この捻れた空間の中にさえ入れば、ヒャッカは遠くへと一瞬で逃げる事が出来る。


 そう思った時だ。


「……ああ、良い忘れていましたが、空間転移魔法テレポートは使わない方が良いですよ? 逃げるかも知れないと思って、しっかりと魔導トラップを仕掛けて起きましたからねぇ~?」


 みかんがゆったりとした声音でヒャッカに答えて行く。

 

 刹那、


 ブゥゥンッ……!


 歪んだ空間から、得体の知れない何かが溢れ出て来た。


「……? な、なんだこれはっ!」


「そうですねぇ? 貴女のお仲間みたいな存在です。宇宙の神秘……ダークエネルギーかもです」


 唐突に吹き出す、謎の物体に悲鳴染みた大声を上げるヒャッカに、みかんはしれっと言って見せた。

 

 程なくして、リダがポカンとなる。


「……は?」


 みかんの言った言葉が正しいのであれば、宇宙の中に存在する超自然エネルギーの集合体みたいな物が、ヒャッカの作った歪んだ空間から溢れ出て来たと言う事になる。


「ちょっ……バカなのか、アンタわっ!」


「大丈夫ですよぉ~? この空間にいる限りは、大した事にはならないですから~」

 

 何て物を出すんだと言うばかりに怒鳴ったリダへ、みかんは陽気にパタパタと手を動かして答えた。

 

 だが、陽気な笑みを作っていたみかんの表情は間もなく消え……うっすらと冷淡な瞳を浮かべて真剣な眼差しをヒャッカに送ってみせる。

 そして言った。


「ただ、その空間に一歩でも踏み込んだら最後……永遠にダークエネルギーの中に閉じ込められて、二度とこの空間に戻る事はないですがねぇ……?」


「………」


 ヒャッカは絶句した。

 慌てて、歪んだ空間を元に戻す。

 万事休すだった。


 空間転移魔法を使用する事も出来ないとなれば、いよいよ八方塞がりと言える。


「……こうなったら」


 一か八かに賭けるしかない!


 思ったヒャッカは、三人目掛けて特攻を仕掛け様としてみせた……その時。


「ちょっと待った」


 リダがヒャッカにストップを掛けた。


「おお、気が合いますね、みかんも同じ事を言おうとしてたです!」

 

 ワンテンポ置いて、みかんも同調する感じの声音を吐き出して来る。


「……な、なに?」


 ヒャッカはポカンとなった。

 奴らの言う事をバカ正直に聞いてやる必要はなかったのだが……つい、素直に身体を止めてしまった。


 自分は何をやっているんだろう?……そうと嫌悪するヒャッカがいる中で、


「このまま三人で戦ったら、百パーセントこっちが勝つ……てか、勢い余って秒殺しかねない。そこで、だ?」


「そうですねぇ……三人の内、誰かを一人をヒャッカさんが選んで戦って貰い、勝てたらヒャッカさん勝ちって事でどうでしょ?」


「そうそう、それを私も言いたかった」


「………へ?」


 ヒャッカは、ただただポカンとなる事しか出来なかった。

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