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【1】

 この物語を読んでくれた全ての方へ。

 少しでも幸せがやって来ますよ~に!


 この物語は同一の世界と同一の時系列を持つ三つの物語の一つです。

 よかったら、同じ物語であり、違う物語でもあるこちらも読んで見て下さい。


 https://ncode.syosetu.com/n1229ew/

 夜も更け、辺りは本格的な闇色に変わろうとしていた。


 パチパチ………


 町外れの街道沿いにあるのだろう、比較的大きな野原にキャンプする事を決めた彼女は、軽く焚き火を起こして遠くを見た。

 彼女の視線の先にあるのは、翌朝に向かう予定となる『オナハの塔』だ。


 この世界にあるダンジョンは特殊で、一定の時間が経過すると、ダンジョンの中に存在するあらゆる物や者が復活する。

 一説によると、この世界を作った創成者が、退屈しない世界を作りたいと願い、それを具現化した事から、この世界の常識になったと言われている。

 

 実際問題、神話レベルのおとぎ話なので、それが本当なのかどうかを知る術もないが、本当に一定期間が経過すると、ダンジョンが完全にリセットされ、攻略済みだった筈の物が全て元に戻る。


 ……そう。


 全て『元に戻る』のだ。

 それは、攻略前に存在していたのだろう、レア・アイテムであったり、超強力な魔導器であったり、凶悪なボスモンスターのレア素材だったり。


 とにかく、全てが元に戻されるのだ。


 一定期間と述べたが、復活までの時間はダンジョンによって異なる。

 また、復活はダンジョンを完全攻略されてからである為、完全攻略をされない限りは復活しない。


 どこをどの様にして完全攻略とするかは、ダンジョンによって異なるのだが、一般的には最上層または最下層のボスを倒せば完全攻略と言う形になるのが通例だ。


 さて、御託を並べてしまったのだが、この上で再び本題に話を戻そう。


 焚き火をしながらキャンプを張っているこの地から見える、巨大な塔『オナハの塔』は、明日で攻略されて丁度一年を迎える。

 そして、普段通りならば明日、塔は未攻略ダンジョンに戻る予定だった。


 今までの記録が正しいのなら、オナハの塔は、攻略後一年でキッチリ未攻略に戻っている為、ほぼ間違いなく明日の正午十二時に、未攻略ダンジョンに生まれ変わる。


 そして、まだ誰も踏破していない、未開の地に変わるのだ。


 ダンジョンは復活すると、その中身まで全て変わってしまう性質を持つ。

 その結果、元来なかった物があり、あった物がなくなっていたりもする。

 手に入れたかったお目当ての物が消えていた事だってある。


 ……だが。


 それでも……唯一、一つだけ変わらない物も存在するのだ。


 この塔のボスだ。


 この塔のボスである、ティンミウクプクだけは、どんなにオナハの塔が再構築されても、必ず存在していた。


 分かりにくい名前だが、これは地元クシマ国での名前であって、世間一般的にはこう呼ばれている。


 空飛ぶ超自然現象……サンダーバードと。


 世界広しと言えど、サンダーバードがボスとして君臨しているダンジョンは非常に少ない。

 それ故に、サンダーバードから手に入るとされる『雷鷹の瞳』の価値は非常に高い。


 現時点での取引額は五千万と言われている。

 

 オナハの塔はダンジョン自体も極めてレベルの高い高難度ダンジョンとしても知られており、一筋縄では行かない。


 だが、その見返りも大きい。


 上手く踏破し、サンダーバードを倒して、雷鷹の瞳を手にいれれば、時価五千万は下らない幻のお宝を自分の手中に納める事が出来るのだ。


 かくして、一攫千金に燃える二人のトレジャーハンター達が、新たなるお宝探しのクエストに挑戦しようとしていた。


「明日は塔攻略だな。さて、どうなる事か」


 焚き火を挟み、黒髪の少女は近くにいた茜色の髪をした少女に口を開いた。


 どちらも、端整な顔立ちをした綺麗な少女だった。

 服装も旅人の衣装ではなく、もっと女の子らしい格好をしていたのなら、街を少し歩いただけで男が寄って来そうではある。


 しかしながら、その見た目とは裏腹に、背中まで伸びる可憐な黒髪の少女は、右腰の剣で万を越える大量のモンスターを葬って来た剣の達人。

 他方、茜色の髪を短く切り揃えていた少女は、あらゆる攻撃手段を高次元に展開する、歩く反則超人でもあった。


「オナハの塔は前にも一回行ってたんだけど、その時は先に攻略されちゃって、お宝も大したのが残ってなかったんだよなぁ」


 黒髪の少女は、とほ~って顔になる。

 一方、茜髪の少女は全く口を開かない。

 何故か、無言を貫いていた。


「……? なにかあったのか?」


 不思議になって焚き火の向こう側を除き込む。

 その先には、悠長なばかりに鼻提灯を作ってた茜髪の少女の顔が。


「って、寝てるのかよ!」


 実際、ここまで長旅ではあった。

 それだけに、疲労が溜まって寝てしまったとしても、なんらおかしくはない。

 密かに、魔法を使えば簡単にここまで来れるのだが、それじゃつまらないと、その手段を使う事が可能だった茜髪の少女により却下を受けていた。


 こうなると、中々の長旅で……街から馬車に乗って塔付近の街まで三日。

 そこから徒歩で更に二日を必要とする。


 塔の入り口に辿り着くだけで、片道五日も掛かってしまうのだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 全て『元に戻る』のだ。 ダンジョンは復活すると、その中身まで全て変わってしまう性質を持つ。 元に戻らないって事では?
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