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YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
探索行・中央大陸
90/284

夜とトンネル

またしても尾籠なネタで失礼します。

お食事中のかた、ごめんなさい。


 話ばかりしているのも何なので、トンネル見物もしてみる事にした。

 

 明かりをともした状態でまず、壁を見る。

 しかし。

「……おっそろしいほどよく整備されているな」

「そうかねえ?」

「ああ」

 オルガは平気な顔……自覚がないのか?

 遺跡関係は本職じゃないみたいだが、それでも素人じゃなかろうに。

 まさかこのレベルが、この世界の遺跡の常識なんて言わないよな……頼むぜオイ。

 

 まず見た目。汚れもゴミも全くついてない。

 次に触感。

 壁に触ってみると、手触りはコンクリと大差ない。だけどツルツルしている。

 ちなみに床面はというと……。

「……アスファルトより上質なんじゃねえか?」

 こっちは少し黒っぽくザラザラしていて、滑りがない。

「いやこれ、絶対に地球のアスファルト道路より品質いいぞ」

 アスファルトの油っぽさがない。

 そして滑らかで、でもツルツルっぽさはカケラもない。

 むしろ完全整備されたレース場のそれに近い。

 この路面で鈴鹿のコース作ったら、単車でギリギリまで攻めたって不安なさそうだ。

 なんだこれ。

「これで二千年ものって……なんの冗談だよ」

 状態がいいとかそういうレベルじゃない。

 明らかに。

 地球のそれよりも、はるかに高い技術でできてる。

 

 思わず、あぐらをかいて考え込んでしまった。

 

「なぁオルガ」

「ん?」

「ここの整備ってさ、再塗装とか舗装の敷き直しみたいなこともするのか?」

「む?どういうことだ?」

「そのまんまの意味だよ。要は、どういう整備をしているのかって思ってね」

 地球なら、腐食防止に定期的に再塗装するのはよくあることだ。どんな頑丈な素材でも経年変化はゼロではないから。場合によっては路面の再舗装もするだろう。

 それについて説明すると、オルガはむしろ感心した顔になった。

「そこまではやってないだろうな。

 今まで見たムラク道や各遺跡道の状況からいって、ここも清掃以上の事はしてないはずだ。むろん壊れれば修理はするだろうが」

「まじか……たったそれだけで、ここまで完璧なうえに損傷の跡もないのかよ」

 いったい、どんだけ超技術の素材なんだいったい。

 俺は途方にくれる思いだった。

 

 近代の土木建築物というのは長持ちしないと思われがちだけど、それは作り方次第だったりする。

 たとえば現代のコンクリートは百年もたないって話がよくあるけど、コンクリートは本来、数百年以上保つものだというのが日本でも公式な資料として存在する。ではどうしてそんなに保たないかというと、そういう長持ちする工法だと非常に時間がかかるので、通常はそういう作り方をしないのだという。

 実際、二千年くらい前の遺跡の中にはコンクリートで作られているものもある。

 これは古代コンクリートなんて言われて今のとは製法が違うそうだけど、れっきとしたコンクリートの一種。そして遺跡状態ではあるけれど、立派に千年単位の時間を生き延びているわけだ。

 

 でも。

 いくらなんでも。

 こんなきれいな、しかも万全の状態で二千年て……うーむ、やっぱり想像もつかないな。

「これ作った連中って、アマルティアだっけ、やっぱり例の宇宙人?」

「いや、実は不明なんだ」

 え?

「わかってないのか?」

「そうではないか、という推測は確かにあるし、一般にはアマルティア人のものだと言われている。それは事実だ。

 しかし、実は決定的証拠になるような文献がないんだ。それっぽいやつを基準に推定しているにすぎない。

 根拠のないものをそうだと断言はできないだろう?」

「……そうなのか」

 そういうとこは地球の科学者と一緒か。

「一説によると、アマルティア人が関わったと言われる過去の大工事ですらも実態は改修工事で、オリジナルはもっと、はるかに、さらに古いものだという話もあってねえ」

 へええ。

「わからない事だらけってことかぁ」

「うむ、残念ながら」

「ん?そうか?」

 ちょっと意気消沈しているオルガに俺は言った。

「それはそれで面白そうじゃないか?」

「そうかねえ?」

「だって、今わからないなら、これから解明できるって事だろう?」

「……まぁ、それはそうだねえ」

 オルガはなんか、意表を突かれたような顔をしていた。

 俺はそんなオルガを見て、そしてもう一度滑らかな路面を手でなでた。

「こんなもんを、しかも遺跡状態なのに二千年も保守してるってんだ……いったいどんな秘密が隠されているのか。俺ならワクワクするんだけどな。

 オルガはどう思う?」

「それは……フフ、そうだねえ。確かに楽しみだねえ」

 そういって、オルガもクスッと笑った。

「とはいえ、そこに至るまでの道は途方もなく大変かもだがねえ?」

「そりゃ仕方ないだろ、でも問題ないんじゃね?」

「というと?」

「真理が遠く難しいからって、学者が探求をやめるか?」

「やめないだろうねえ」

「ああ、俺もそう思う。

 たとえバカだのキチ○イだの言われようと、時には異端呼ばわりして石を投げられようと。学者ってのは真理を追いかけるもんだろ?」

「そうだねえ。

 しかしハチ」

「なんだ?」

「それがわかるハチも同類ではないかねえ?」

「いやいや、俺は学者先生じゃねえもん。学もないしな」

「いやいや謙遜謙遜、ハチは立派に学者の道にいると思うがねえ」

 そんな話をしつつ、俺たちはお互いにクスクスと笑いあった。

 

 と、そんな時だった。

 

「ん?起きたかな?」

「かねえ?」

 キャリバン号の方で気配が動いた。

 今、アイリスはラウラとササヒメを連れて寝ているはずだった。そしておそらく今動いたのは、アイリスだけだと思われた。

 俺たちのそんな予想を裏付けるように、アイリスの足がキャリバン号の天井から……厳密には屋根裏の空間を曲げて新設されたベッドルームから、にょっきりと降りてきたのだけど。

「……なんちゅー格好で寝てるんだあいつは」

 裸の足にまとわりつく布切れ。

 どうやら、俺のシャツ一枚で寝ているらしい。

 アイリスは半ば夢の中にいるようで、目がまともに開いてない。マンガのように半開きの目でフラフラしながら外に出てきた。俺たちが外にいるし魔物などもいないと判明しているから、ドアも開けたままだからなんだけど。

 で。

「……ああ、そういうことね」

 アヒルのおまるにヨタヨタと近寄っていった。

 で。

 なぜか俺の方を向いたかと思うと、なんの躊躇もなく胸のあたりまで一気にシャツをまくりあげたんだけど。

「……何をしたいんだこいつは」

「ハチに見せつけてるんじゃないかねえ?」

 だから、俺にそっちの趣味はねえっつの。

 そんなことを考えていると、アイリスはおまるにまたがった。

 そして。

「おっと」

 描写するべきでないものが、むりむりっと、うん。

 なんていうか。

 プラスチックのおまるが異彩を放っているけど、要は砂箱に猫が出すようなもんだな。

 アイリスはまだ夢の中のようで、再び立ち上がると普通に去っていった。

「って、拭かなくて……いいんだっけか」

 うーん。

 ウォシュレットでもないのにそのままって、どうも外見的に違和感あるな。

 いやいや、そんなことより。

「……もしかして、生物学的興味かねえ?」

「あたり」

 さすがにオルガは俺の興味に気づいたらしい。

 おまるに残されているモノは、その下にある魔法陣の光にてらされていた。で、見ているうちにもだんだん小さくなっていくんだけど。

「普通に人間のフンだな」

「期待していたようだけど、見た目だけでなく中身もそうだねえ」

「そうなのか?」

 竜の眷属なのに?

 だけど、そういうとオルガは微笑んで首をふった。

「竜の眷属というのは精霊分のつながりの事であって、構造的なつながりではないんだ。

 アイリス嬢は間違いなく真竜どのから生まれた眷属だが、しかし構造的にはまったくの人間なのさ」

 へええ。

 俺は少し考えて、そして言った。

 

「なあオルガ」

「ん?」

「それじゃ、あいつが肉ニクって肉ばかり食べたがるのって」

「ただの好き嫌いだねえ」

「……明日から食事を同じにしよう」

「おやおや」

 オルガは俺の顔を見て、おもしろそうに笑った。


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