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YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
新・家族旅行?
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異邦人

 つけられた蔓草だけど、最低限の制御をこなせるようになった。まぁ動かせるようになっただけなんだけど。

「ただ動かすだけでなく色々できるぞ」

「そうなのか?」

「うむ、何より魔法を使う際の触媒にもできる。魔法陣にも応用できるだろう」

 へえ。

「ま、そういうのはおいおい覚えればいいさ」

 え?

「ちょっと待った、それ俺がやるってこと?」

「アイリスも聞きたい、それパパにできるの?」

 当然のようにアイリスも反応した。

 俺も無理じゃないかと思う。

 魔法陣の発動は試してないからわからないが、そもそも俺は普通に魔法が発動できない。訓練の時にも試したけど、さっぱりだったからな。

 なのに、発動させるばかりか、さらに蔓草を触媒にして魔法を使うだって?

 うーん、到底できるとは思えないぞ。

 だけどオルガは「いやいや」と笑った。

「異世界から器物を召喚できる魔力と制御力があるんだぞ?魔術が使えない理由にはならない」

「それはそうだけど、でも」

 アイリスの否定的な反応に、オルガは「ウム」とうなずいた。

「真竜殿の主張はわたしの理解している。『異世界人は魔法の発動がうまくできない』という懸念だろう?

 通常の方法では発動困難か、できても制御が難しい。

 これは確かに事実だ。わたしも同意見だな」

「うん」

「それはわかっている、そして、その上で専門家として言わせてもらうよ。

 アイリス嬢、そしてハチも聞くがいい。

 異世界人がどうして魔法の発動に問題があるか、それは異世界人のココロの有り様が我々と違うからというのは確かに事実だが、それは要するに「やりかたがわからない」だけであって、使えないという事ではないんだ。

 実際、それを証明した事例をわたしはいくつか知っている」

「事例?」

「人間族たちさ。

 彼らは異世界人を縛り、洗脳や思考制御をかけて道具として使っているわけだが……。

 実はね、この状態にされた事があり、なおかつ生きて自由を取り戻した者が少しいるんだが、彼らは制御下で使った魔法をそのまま引き継いで使えたんだよ」

「え」

 なんと。

「わたしはこの点に興味をもち、実際に取材して確認もした。

 その結論を言おう。

 異世界人が魔法を使えないとされているのは『最初のきっかけ』がないせいだ。おそらく間違いない」

「最初のきっかけ?」

「つまり異世界人とは、砂漠で生まれ育ち、泳げるって事自体をそもそも知らない子供のようなものさ。

 水とは貴重な飲み水であり、泳ぐなんて考えた事もない子供に突然泳げといっても無理だ。海に投げ込んでもパニックを起こし、そのまま溺れてしまうだろうね。

 だけど。

 当たり前だが異世界人もゼロから水にふれ、泳ぎを学べば泳げるはずってわけさ」

「たったそれだけの話なの?」

「驚くのも無理もないが、どうやらそうらしい。

 この世界の人間なら、母親の胎内にいる時から魔に触れている。魔があるとは自然なことなのさ。

 でも君たち異世界人には、それがない。

 魔法・魔力というものを、そういうレベルで全く知らない君たちに、いかにうまく認識させるか。

 この難しさこそが、異世界人の魔法習得の難しさというわけさ」

「……はじめて聞いた」

「だろうな、現時点でこれを公式に表明した人族はいない事になっているからね。過去にはいたのかもしれないが、少なくとも記録には残ってない」

「そうなんだ」

「おそらく、だよアイリス嬢。あくまでこれはわたしの推測だ」

「うん、でもありがとう」

「どういたしまして」

 アイリスとオルガ、なんだか仲がいいたいだな。今のオルガの発言も、ドラゴン氏の眷属であるアイリスをかばったものだろうし。アイリスも気づいてるようだし。

 うむ。

 女性陣の仲がいいのは好ましいことだな。

「ところでオルガ」

「ん?」

「異世界人を取材したって?」

「うむ、興味をもって何人か取材したぞ。最後に取材した男はなかなかおもしろかった」

「男?」

「うむ」

「オルガさん、男ってもしかして」

 アイリスが誰か、知っているらしい者の名を出そうとしたんだけど、それをオルガが制した。

「あーいやアイリス嬢、たぶん言いたいのは『凶刃(きょうじん)』の事だろうけど、そいつじゃない。某国の研究所で密かに飼われてた個体でね、おそらく真竜殿もまだ知らないだろう」

 え?

 ドラゴン氏が知らない?

「ハチ。

 真竜殿たちの情報は、あくまで眷属や各種族の信仰者によるものだよ。決して、森羅万象に神のごとき目を光らせているわけじゃないのさ」

「そうなのか」

 なるほど、それは想定してなかったな。

「問題の人物だが、どうもこちらに来た時点で百歳を超えていたんだそうだ。しかも捕縛した時点で、まだ若返りしていなかった。

 魔力があれば若返るだろうけど、それをさせるのは危険だ。いちど束縛を解除しなくちゃいけないからね。

 だけど、道具として外で使い潰すのはもったいない。

 それであまり無理をさせず、主に研究用途に使われていたらしい。

 真竜殿たちが知らないのは、おそらくそのためだろうね」

「それが目覚めて逃亡したと?」

「うむ、かれこれ二年くらい前の話なんだけどね」

「へえ」

 フムフムと思っていると、なぜかオルガが苦笑した。

「ハチ。この案件は君にも関係するんだが?」

「え?」

「え、じゃない。二年前といえば君の出現の前兆である2つの魔震(ましん)を検出した一件なわけで……ハチ?」

「あの、オルガ?マシンってなんだ?二年前?」

 さっぱりわからん。

 それに、二年前のことがどうして俺と関係すんだ?

 

 でもそういうと、オルガは盛大にためいきをついた。

「アイリス嬢、なんでハチに話してないのかねえ?」

「え?あの、え?」

「ああ、もうわかったねえ……話す以前だったか」

 オルガはまたもやためいきをついた。

「オルガ、ためいきをつくと幸せが逃げるらしいぞ」

「ご心配はありがたいが、絶対逃がさないから問題ないねえ。がんじがらめに縛り尽くして……ああでも、おいしいとこだけはむき出しにして閉じ込めるなら問題ないねえ」

「どこ見て言ってんだよ!何するつもりだよ!?」

 まったくもう。

 

「まぁ話を戻そう。ハチ、おそらくなんだが、君は一瞬でこの世界に転移してきたと思ってるだろう?」

「違うのか?」

 違うとしたら、それはものすごく初耳なんだが。

「転移してきた君にとっては一瞬のことだったろうけど、実はこの世界から見ると、異世界のものが現れるのはタイムラグがあるんだ。しかも安定してなくてね、原因はよくわかってないんだが」

 へえ。

「君の場合、だいたい二年前なんだが2つの魔震(ましん)と呼ばれる現象が確認された。

 どういうものかの説明はここじゃ置いておくけど、これは君と、そしてキャリバン号のものじゃないかと推測される。

 それで、当たり前だがこれは各地の研究者などがキャッチした。わたしもこれで気づいたクチだよ」

「……」

「ところが、この事件がきっかけでひとりの異世界人が脱走した。魔震の騒ぎのどさくさに、人体実験されていた研究所を抜け出して自由になったようなんだな。

 その者はしばらくかけて力を蓄えてしっかりお礼参りをしたあと、どういうきっかけなのか聖国の末姫のハートをゲットしてしまったらしくてね、かの国の大聖女の前で結婚の誓いをしたそうだよ」

 ほう。

 なんか自由人なやつがいるんだな。

 でも。

「お礼参り……たったひとりで国家機関に逆襲したのか。どんだけ怪物(チート)野郎だよ」

 きっと、俺みたいなボンクラとはレベルが違うんだろうな。

「なんでも元軍人らしい。しかも普通の軍人でなく、情報将校か何か、単独で危険な任務にも赴くたぐいの事もしていたんじゃないかね」

「というと?」

「実験のために脳に書き込まれた魔法なんだが、ただ引き継いだだけでなく独自に研究し、威力を桁外れに高めたらしいんだな。

 そればかりか、もともとの戦闘力も半端じゃないらしくてな。異世界のものと思われる武道に魔法も組み合わせ、なかなかに厄介な存在になっているそうだよ」

「元軍人か。すると日本人じゃないってことか」

 まさか、旧帝国軍人って事はないよな。

 しかし。

「いや、聞いたところだと日本人だぞ?お歳のせいか少し君とは違う言葉遣いだったが」

「そうなのか」

 むむむ?

「どうしたハチ?」

「いや、元軍人ってとこにひっかかってるんだが」

「ほう?」

「日本はもう何十年も前に正規の軍は廃止になってるんだ。

 まぁ自衛隊という組織が事実上の国防軍だと思うけど、でもどうだろ?自衛隊の人が見知らぬ異世界で、自分を軍人って名乗るもんかな。どういうことだろう?」


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