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YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
町へ行こう
33/284

戦闘

 砂漠の景色の向こうに町が見え始めた。いかにもオアシスにうかぶ町って感じだった。

 ほう、あれがバラサか。

 だけど、その周りには飛空艇が1、飛竜が少なくとも10、そして兵士と商人らしき男。

「地上班っぽいのがいないな」

 人はいるけど馬車が見当たらない。

「たぶん、飛空艇だけで飛ばしてきたんだよ。あの数の飛竜なら乗せられるから」

「そうなのか?」

「飛空艇って、もともと輸送用らしいよ」

「なるほど」

 アイリスとボソボソ話をしていると、商人風の男が数名の兵士と近づいてきた。

 でも、近くには来させない。

「アイリス」

「わかってる」

 また、風による声の中継を頼む。

 ただし、今度は海辺のときとはちょっと違うのだけどね。

『そこまでだ。それ以上近づくなら海辺での襲撃者の仲間とみなし、防衛のための行動に入る』

 男は眉をしかめたが、笑顔を作り直した。

「なにか誤解があるようですね、私はモコーといいまして、ただの商人です。

 旅の方とお見受け致します。貴方様のお名前を伺ってもよろしいですか?」

「名前?ああ、俺のなまえか?ハチだ。

 あんたらの言い方だと、異世界人ハチとでも──」

 っておい、名前言ったらこっちの話なんか聞いてやしねえ。

 なんか背後で騎士らしいのがやってんだけど?

 アイリスが何かやったのか、その声が拡大されて俺の耳にもとどいた。

【どうかね?】

【隷属魔法が効きません。どうやら偽名のようです】

【おや、異世界人にしては知恵がありますね。誰かに入れ知恵されたかな?】

【ハイラス殿、何とか本名を】

【うむ、まちなさい】

 

 ……っておい、名乗った瞬間に「お名前ゲット!」って隷属かけたのかよ。

 

 アイリスやドラゴン氏に聞いちゃいたが。

 こいつら本当に、異世界人なんか人間と思ってないんだな。

 

 で、モコーでなくハイラスなのな。

 どうせハイラスのほうも偽名だろうけど、ハハハ、息するように嘘をつく奴って、やっぱこっちにもいるんだなあ。

 

(アイリス、今のとれたか?)

(ばっちり中継もしたよ?)

(オーケー、これからの会話も続けてくれ。日本語なら翻訳つきでな)

(わかった)

 

 アイリスとやり取りをしている間にも、再度男が話しかけてきた。

「ハチどの、ひとつお伺いしたい」

 おいおい。

 あいにく俺も短気なほうなんで、かちんと来た。

『ひとの名前だけ聞いて返答もしないで再度質問かよ。おまえ何様?』

 しかしそれに対する返答はない。やはりこっちを対等の存在と見てないようだな。

 無視して自分のことだけ言い出しやがった。

「ハチどの、我々の世界では、名前は重要な意味をもつのです。

 異世界の方は、平民でも名字を持たれるとか……偽名ではなく本当の名前を『ふるねーむ』で伺いたい」

『お前、俺の話きいてないのか?こっちの話に対する返答はないのか?』

 しかし自称モコーのハイラスとやらは、こっちの話は聞かずに名前名前と自分の要求だけを押し付けてくる。

「ハチどの、再度申し上げる。

 初対面の者に偽名で名乗るのは、この世界では極めて無作法とされております。事実、これで権力者に手打ちにされた者もおるのですよ!

 正直、私も大変不愉快に思いました!さあハチどの、あなたの実名を!!」

 今度は恫喝(どうかつ)かよ。

 ははは……だめだこりゃ。

『その言葉、そっくり返すわ。先に実名を名乗れや、お前がな』

「は?さきほどモコーと名乗りましたが?」

『偽名じゃねえか』

 そこでアイリスがタブレットを見せてきた。

 ……なるほど、よし。

『そもそも、お前は通名だって、ハブ……ん?なんだ?ジーニアスってのは国名か?ほうほう、いちおう政治家なのか。ニセ商人ってやつか。ああごくろうさん』

 おや、さすがにギョッとしたか。

 そりゃあビビるだろな。誰にも告げてない名前や所属を初対面の異世界人に言われそうになったら。

 どうせこれも通名なんだろうけど。

 

 ま、いい。

 まともに会話する気がないようだから、こっちも続ける意味もないだろ。

 俺は早々に対話を切り上げ、日本語で話すのもやめた。

 背後のバラサの人々にわかりやすいよう、南大陸の言語に切り替えて会話を続ける。

 

『ま、茶番はいいわ。

 こっちの話は一切きかないばかりか、俺の名前を聞きだして隷属魔法をかける事しか頭にないようなんで、バカにもわかるよう大事なことだけ言うわ』

 そこまで言うと、俺はいったん言葉を切った。

『バラサの周囲にいる自称人間族だっけ?敵対者すべてに最終通告する。

 俺に対して隷属魔法を仕掛けた行為をもって、お前たちを立った今、正式に俺の敵と認定した。

 これ以上俺の邪魔をするなら、次からは容赦せず攻撃者は殺す。

 これは脅しではない。必ず実行する』

 ここで一度切り、あえて軽い言い方でとどめ。

『おまえらもさ、わざわざ日本語を使ってくる程度の知恵は持ってるんだろ?だったら、警告ですむうちにおとなしく引いとけよ?この程度なら、おまえらの頭でも理解できるよな?以上!』 

 そういうと、俺はキャリバン号をわざとわかりやすいよう、音をたてて始動した。

「アイリス。悪いけど、念のため出来る限りの防御をかけてくれる?」

「わかったけど、いいの?あんな安い挑発して」

「うん、わざとだからいいさ」

 お人よしのマヌケな異世界人と思ってる相手にあからさまに嘲笑されたんだ。来るだろ。

「そっか。でも反撃どうするの?」

「俺は車の中だから打ち返せないだろって?」

「うん」

「それは何とかするよ」

「……そうなの?」

「おう」

 まあ、見てなって。

「アイリス、タブレットをダッシュボードにセットしてくれ」

「あ、うん」

 台にセットされたタブレットには、周辺マップと敵対マークがずらり。

 うわあ、見事に敵対マークでまっかっか。

「赤マークだけ表示してくれ……行くぞ」

「うん」

 キャリバン号を徐行させ、ゆっくりと彼らのそばを抜けていく。

 と、その瞬間だった。

「!」

 ゴワン、と大きな音がして、キャリバン号がぐらぐら揺れた。

 これ、思ったよりだいぶ強力じゃねえか?

『行ける、高位階の単体攻撃なら届くようです!』

『よし撃て!あの車輪をねらえ!動けなくして、生意気な異世界亜人を今すぐ引きずり出せ!』

 

 たぶん撃ってくるとは思ってたけど、まったくためらいもないとは想定外だった。怒りなりなんなり主張してくると思ってたわ。甘かったか。

 まあ、いい。

 そっちがそうくるなら。

 

『どうやら警告は無駄だったようだな。反撃する』

 窓を少しだけ開けて、そこからマテバの銃口を出した。

 

 狙い?そんなものはいらない。

 この銃ってつまり、ガキの頃に読んだ漫画の……あの左腕の仕込み銃と原理的には同じものだ。ただ俺は左手があるから仕込み銃にしてないし、あの主人公の銃みたいな超絶性能はないが。

 だけど、そのエッセンスはちゃんと拾い上げたつもりだ。

 アイリスが魔力銃と呼ぶこれは、アイリスが言うようにどこまでも個人武器。なにせエネルギー源も、制御も、何もかも俺の意思次第なので不安定で、なおかつ燃費もすこぶる悪いんだ。皆に平均的な装備を求める軍や警察みたいなとこの装備品には全く向いてないだろう。

 

 でも、それでいいんだ。

 だって。

 全てが俺個人に帰結するってことはつまり……『照準』だって俺の『意思』でどうにでもなるんだから!

 

 タブレットの敵対画面を見ながら、俺は続けて引き金を引いた。

 

 タンタンタンタンタン……!!

 

 あの男を始めとする数名が倒れるのが見えた。

 周囲が驚き動く。隊列が乱れる。

 ……よし、道が開いた! 

 アクセルを踏み込み、連中の脇をすり抜けたんだが。

「!」

 ひとり飛び出して来やがった!しかも両手を広げて!

 武装してない女、民間人!?なんでここに!?

 思わずブレーキングしようとしたんだけど。

「だめ、パパ走って!!」

「!!」

 アイリスの声に俺はビクッと反応し、瞬間、言われるまま逆にアクセルを踏み込んでしまった。

 どん!という音がして、キャリバン号が激しく揺れた。

 

 対人事故だ!

 し、しま、やっちまった!

 でも。

 

「敵起き上がる!」

「!?」

 さすがに、おったまげた。

 本当にその女は、普通に立ち上がってきたからだ。

 

 マジかよ。

 いくらキャリバン号が軽いったって車ではねたのに、どんな化物だよ!!

 

「強化魔法だよ!」

「!」

 あ、そうか!それで平気なのか!

「はやくパパ!」

「この!」

 何か唱えようとしている女。

 考える前にアイリスの指示が来て、俺は再びアクセルを踏んだ。

 さっきより小さい衝撃。すっころぶ女。

 

 くそ、まだ動くのか!

 む、武器まで持ってやがる、やばい!

 迷わず、またマテバの銃口を出して引き金を引いた。

 バン!

 女は頭をぶち抜かれ、今度こそ倒れた。

「パパ、それどうなってるの?」

「そういう銃なんだよこれは!それより走るぞ!」

「あ、うん」

 女の死体をやり過ごし、俺は走り出したのだけど。

「パパ、もうゆっくりでいいよ」

「え?あ」

 そう言えば、人間族が誰も追ってこない。

 もしかして、さっきの女……女だよな?偽装した化物じゃないよな?

 とにかく、あれの位置あたりが限界だったのか?

 ……ああ、それで無理矢理止めようとしたのか。

「結界の中に入ったよ、まずは勝ちだね」

「とりあえず、そのようだな」

 俺はため息をついた。

 

 そしてその瞬間、吐き気が来た。

 

「パパ大丈夫?」

「ああ……悪い」

「いいよパパ、キャリバン号をそこに停めて?手続きはアイリスがやるから」

「でも」

「大丈夫!」

「……すまん、頼むわ」

 壮絶な気持ち悪さの中で、俺はそれだけ答えた。


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