表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
続く出会い
17/284

浜辺でかまど

「今、何したのパパ?」

「え?」

 アイリスが厳しい顔をしていた。

「えっと、なに?」

「ちょっとまってパパ、えーと……」

「?」

 一瞬、アイリスの中で何かが動いたような?

 次の瞬間、

「すみません、非常事態の対話法が未確立ですので、一時的に元にもどします」

 うわ、いきなり宇宙人もどきに戻った。口調だけ。

「あーうん了解」

「パパ、今魔力を放出されたのですが、気づいておられますか?」

「あーすまん」

「なんでしょう?」

「その口調の時はパパ呼びやめてくれ頼む。名前で」

 あと表情もな。

 幼稚園児みたいな癒し系笑顔で機械音声しゃべりは勘弁してくれ、ホラーだよ。

 そういうと、最初のときの機械じみた表情に戻った。

「……では、基本モードの時は表情も停止して、呼称はハチ様とさせていただきます」

「おう悪いな。で、何だ?」

「はい」

 アイリス(素)はうなづくと、話題を戻した。

「それで今なのですが、魔力を放出されたのに気づいておられますか?」

 む?

「よくわからないけど、クラッときた時かな?」

「……なるほど。何かを喪失する感覚がありましたか?」

「そうだな、あったと思う」

「そうですか。クラッときた時ですが、頭や身体が重く感じられましたか?」

「うん、そんな感じ。それに平衡感覚もかな?一瞬おかしくなるっつーか」

「……」

 アイリスはしばらく考え込んだ。

 なぜかキャリバン号を見て、そして何か納得したようにうなづいた。

 そして唐突に「状況終了、通常対話モードに復帰します」と機械的にしゃべった。

 で。

「ねえパパ」

 お、表情コミで元に戻った。

「ん?」

「その、クラッとなったときに何か変わったことなかった?」

「かわったこと?」

「んー、このキャリバン号みたいに、なにかが突然現れたとか」

「突然現れる?……あ」

 そういえば。

 ぽんと手を打った。

「アイリス、その服と靴」

「え?」

「俺、ひとり暮らしだって言ったろ?」

「うん」

「男の一人暮らしでさ、家族もいない。

 そんな男が自分の車にさ、子供服と靴、しかも新品じゃない使い古しなんて積んでるのは変だと思わないか?」

「……」

 アイリスは黙り込んだ。

 無理もない、情報がないから判断つきかねるんだろう。

「それにさ、おかしいんだ」

「おかしい?」

「ああ。だってそれさ、昔、実家で姉貴が着てた服と一緒なんだよ」

「……服も、靴も?」

「おう。俺の記憶違いじゃなきゃ、おふくろが死んだ時に処分されてて、もうないはずなんだが」

 アイリスはまた少し考えた。

「ねえパパ」

「ん?」

「クラっときたときかその直前に、何かが欲しいとか、何かを思い出したとか、そういう事なかった?」

「今さっき?」

「そう」

「あー……包丁かな?」

「ホウチョウ?」

「そ、包丁」

 これは間違いない。

「このナイフちょっと調子悪くてさ、開閉機構も壊れかかってて無理がきかないんだ。

 で、自宅におきっぱなしの包丁を思い出して……アイリス?」

 ごそごそと荷物を探し出すアイリス。

「ねえ、ホウチョウってどういうもの?」

「どういうって、刃物だよ。料理につかうもので、このナイフより大きい。うちのはチタン製で……」

「これ?」

 ありゃ?

 な、なんでアイリスがうちの包丁を……ってそうじゃない。

「あれ?俺、包丁積んでたっけ?」

 

 いやまて。

 さすがにおかしいだろこれ。

 何がどうなってる?

 

「アイリス、それどこにあった?」

「ここの箱の底にあったよ?」

「……そうか」

 アイリスは俺の話をきいて、荷物の中から俺の包丁を見つけ出した。

 でも、俺はこの包丁を積んだ記憶がない。

 だいいちアイリスの示した箱は季節ものの箱で、普段は開けないところだ。

 そんなところに、自宅でも使ってる包丁を入れるわけがない。

 それにだ。

 たぶんこれ、アイリスの服と靴にも関係するわけで。

 うーん……。

「あのねパパ」

「?」

「グランドマスターに確認してみる。だからちょっと続けてて?」

「お、何かわかりそうか?」

「たぶん」

「わかった、悪いけど頼むわ。俺じゃワケが分からん」

「うん」

 何かがおかしいのはわかるけど、そもそも今、何が起きているのかすらわからない。

 心当たりがあるというのなら任せておこう。

 さて、仕切り直しだ。

 包丁があるなら、この成魚のクロコ・クマロはバラせるだろ。背骨とかこの辺が、俺のくたびれきったナイフじゃ無理だったとこもきっちりやれる。

 作業を再開した。

 

 

 包丁のおかげで作業は進んだ。とくに一部の硬い骨!

 三尾をしっかり解体完了。

 形態からして雑食の魚だろうし、生態もよく知らないから内臓は使わない。

 刺し身とか生食も避けよう。そのあたりは調べてからだ。

 魚の寄生虫は怖いしな。万が一ってことがある。

 ちょっと考えて、内臓は波打ち際付近にまとめて捨てた。

「……干しカゴあったよな?」

 今食べる分だけ切り取って、あとは干そう。

 干しカゴは一度使ったきりで、それもネットで調べて干し飯(ほしいい)づくりに使ったんだよな。ほら、出先で炊飯器がなくてさ。釣りしながらその横で、炊きすぎたご飯を干したんだよな。

 お、あったあった。荷物の底に、青い三段の干網が出てきた。

 何とか使えそうだな。

 解体した一本のクロコ・クマロをなるべく薄く適当なサイズにカットすると、その三段に並べた。

「……一匹ぶんか」

 大物すぎて、一匹ぶんしか入らない。

 残りは仕方ない、丸ごと屋根の上で干そう。

 キャリバン号にはルーフキャリアがある。

 ここに網と、その下にビニールを敷いて、その上に。ビニールは干すためというより、魚の汁で屋根を錆びさせないためだけども。

 何か所かで固定する。このまま走るならもう少し工夫がいるけど、とりあえず。

 よし。

「……よし、じゃあ海の成魚を焼いてみますかね」

 実験がてら食べたのは川ものだし、小さかったしね。

 カセットコンロに焼き網をのせて、じりじりと焼き出す。

 でも、すぐに間違いに気づいた。

「……だめじゃん」

 この焼き網、遠赤とかじゃないやつだ。

 つまり。

 カセットガスの火とこの焼き網じゃ、魚に火がちゃんと通らないぞと。

 仕方ない、火を起こすか。

 とりあえず火を消して、薪を集めることにした。

 

「お、あるある」

 前に嵐でもあったのか、流れ着いたらしい薪が波打ち際から離れたところに散乱してた。

 海の流木らしく脂分が抜けきってるが、まあ乾いてればいいだろ。

 とりあえず、火付きのよさそうなのを少し拾って戻った。

 あと、松ぼっくりっぽいのもあったので、コンビニ袋にいっぱい回収。

 軽く石組みで土台を作る。

 風、よし。風向き、よし。

 包丁とナイフでやわらかい木を削ってケバ立たせてる。

 紙は今後貴重かもだから、とことん現地材料で火をつけよう。

 ふむ。

 アイリスは……まだドラゴン氏と話中かな?

 耳に手をあてて話中なのを見つつ、こっちはケバ立たせた木に火をつける。

 で、その火を燃えやすそうな小さい薪と、松ぼっくりぽいのに移していく。

「……おっと」

 火は俺の想定よりはるかに早く、強く燃え始める。

 最近は焚き火も厳しくなり、こんな風に火を起こすのは久しぶりなんだが、どうにかなったようだ。

 しばらくすると薪の一部が完全燃焼を開始して、ちゃんと輻射熱(ふくしゃねつ)も出始めた。

 よし、いけるか。

 即席かまどに焼き網を置いて、今度こそ魚を配置。

 いい感じのそれを調整してると、アイリスが戻ってきた。

「終わったか?」

「うん。えーと、何かすることある?」

「おお、悪いけど薪を拾ってきてくれるか?こういうの」

「わかった」

 そういうと、アイリスは再び行ってしまった。

 炭が増えてさらに火力が安定してきたので、焼き網の横に空間を作ってみる。あとでお茶でもいれようかと。

 うーん……これ以上の薪だと、ナタが欲しいとこだね。

 どこに置いたかな、ナタ。焚き火セットにあるはずだが。

 そんなことを考えつつ、視界の隅っこに動くものが見えた。

「うわ」

 なんだあれ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ