表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
続く出会い
14/284

魔力と精霊分[2]

「まあ仔細はいい、とにかく循環ってのは大事であり、意味があるのさ。

 それなのに、その精霊分にしろ、例外の精霊生物にしてもどうだ?説明をきくかぎり流転してない、循環のしくみを持ってないように見受けられるんだよな……」

『それについては、我が直接答えよう』

「!?」

 アイリスの口はそのままに、口調だけが変わった。

 これはドラゴン氏!?

「あ、どうも」

 おもわず挨拶したら、うむとだけ答えてきた。

『さっそくだが、我が言った事を覚えているかね?自己紹介のときだが』

「自己紹介ですか?」

『そうだ』

 うん、おぼえているとも。たしか。

 

『我は真竜。単にドラゴンでもいい。普通の生き物ではなく、この世界の一部といってもいい。

 この世界の生き物は我らが管理しているのだ。支配しているという意味ではないが』

 

「たしか、ドラゴンは世界の一部って話でしたっけ?」

『そうだ』

 今、アイリスは目を細めて笑った。

 でもそれは人間のそれでなく、ドラゴンが目を細めた感じに似ていた。

『流転していない、循環していないという君の指摘は実に正しい。そして事実をうまく言い表している。

 簡単に言えば、精霊分そのものが外から来たもの、外来者なのだよ。君と同様にね。

 流転や循環のしくみを持ってないのはそのためだな』

「外来者……なるほど」

 もともとこの世界のものじゃないのか。

『伝え聞くところによると、精霊分はある時期、唐突にこの世界に現れたそうだ。

 それは……そう、君の語彙(ごい)にある有毒ガスのようにこの世界に大量に吹き出し、その地域の生命体を根こそぎ滅ぼしてしまったのだよ。

 ところが、浸透の境界線付近では少し違った。一部の生命体が微量の精霊分を取り込み変質を起こした。

 そればかりか、その生命たちは精霊分によく耐え、生き物としても頑丈になっていたわけだ』

「適応しちまったのか」

 毒ガスじみた危険物を取り込んで、逆に(かて)にしたってか?

 すごいな、まさに生命の神秘だ。

『適応もあるが、そもそも精霊分とはそういうものらしい。

 好んで生命体にとけこみ、なんらかのカタチで強化する。そうすることで自分の入った個体の生存率を高め、さらに繁殖によって新しい身体を得て、共に増えていく。そうした種類の、まあ、生き物のようなものらしい。

 その性質をもって、精霊……生き物のようなものと名付けられたわけだな』

 へえ。

『我らを作った者たちは協議を行い、そして最終的に精霊を排除せず、むしろこの世界に組み込んでしまう事にしたらしい。それが無謀な冒険なのか、英断なのかはまだわからないがな』

「……ですね」

 外から来た危険なもの。

 それを単に排除するのでなく、積極的に取り込むことにしたと?

 すごいことを考えるもんだ。

『ただひとつだけ問題があった。つまり無秩序に広まるのは危険だということだ』

「段階的にいかないと、みんな死んじまう?最初の時みたいに?」

『そうだ。 

 今すぐ全世界に広がってしまったら待つのは大絶滅で、生き残れる生命体は微生物程度になってしまうだろう。最終的には自然の循環に組み込まれるにせよ、まずは時間をかけ、ゆっくりと浸透させる必要があったわけだな』

「はい」

『ゆえに浸透と循環を見守り、操れる生命群を作成した……それが我ら真竜と、そして樹精王(じゅせいおう)というわけだ』

「なるほど……」

 最初から目的のあるもの。環境管理システムを司る人造生命ってとこか?

 これは……予想よりはるかにSFな存在だったんだな。ドラゴン氏。

『幻滅したかね?』

「いや、人知を超えたロマンにファンタジーもSFもないでしょ」

 俺は少なくとも、そういう派だ。

『精霊生物が自然の存在ではない、というのはそのためだ。本来ありえないものを無理に生命体にしてしまっているからで、自然界ではありえない形態なのだよ。君がアイリスと名付けてくれた、この子を含めてね。

 そして、精霊分が現時点で、自然界を循環していないのもそういうことだ……かなり浸透がすすんでいるものの、今もまだ早すぎる、くまなく循環されては大量絶滅の引き金になってしまうだろう』

「……」

 生き物たちの進化をみつつ、どこかのタイミングで組み込むわけか。

 なんともまあ、責任重大なお仕事だなあ。

『ご名答だ。そしておそらく、その日は遠い未来ではない。そしてその日こそ、我らの使命も終わるだろう』

「そうなんだ。遠くないってことは、どのくらい未来なの?」

『この星の時間で、そうだな。あと20万年もかからないだろう』

「……なるほど」

 そりゃ天体スケールじゃ一瞬だろうけど……尺度が違ったか。

『そういえば、魔族から接触があったのだったな。

 この世界の人間において通常生物は人間族だけだ。それ以外のドワーフ、水棲人、獣人、そして魔族、これらはすべて混在生物になる。

 モノづくりに特化したドワーフ、水中に特化した水棲人、魔に特化した魔族などだな』

「……なるほど」

 人間族が精霊分をとりこむことで、これからの世界に合わせて進化しているわけか。

「質問いいですか?」

『何かな?』

「まず、根本的なことですけど。俺が魔力持ってるのって、どうしてなんでしょう?」

『元の世界では、そんなものもってなかったのに、かね?』

「はい」

『現場を見たわけではないから推測になるが。

 どうも問題の精霊分だが、この世界の外側にも、その周囲にまとわりつくように莫大な量があるらしいのだよ。

 で、君たち異世界人がこの世界に落ちてくるとき、この精霊分に汚染されるらしい。

 本来なら間違いなく死亡するだろう量なんだが、世界間渡航に何か秘密があるのか、君らの多くが、莫大な精霊分を帯びてこの世界に現れるようだね』

「……」

『当然だが、莫大な精霊分はそれに比例する膨大な魔力も呼び込む。一気にね。

 そして多くの異世界人は突然の環境の変化に驚き不安に襲われ、無意識にその魔力を使うのだよ』

「魔力を使う?」

『そうだ。

 我の推測に間違いがないなら……君はそのクルマ、だったか?それを地球から呼び寄せるのに使ったのではないかな?あと、この世界に合わせた調整も行ったかもしれないな。おそらく無意識にだが』

「!?」

 それは。

「なるほど……たしかに、そう言われると辻褄のあう事が多いですね」

 そうだ、そうだよ。

 俺が先に来て。

 そして、クルマがないとパニックを起こした直後にキャリバン号が現れた。しかも、ただのガソリン車だったのに、魔力で動く謎仕様になって、しかも道なき道も浮いて走れるようになってた。

 そしてそれは、他でもないこの俺が願った結果であると。

 ……どうして異世界にきちまったかって根本的な問題は別として、魔力とかキャリバン号とか、今までの細かい状況、全部答えがでちまったな。

「なるほど……考えることもアリそうですけど、よくわかりました。ありがとうございます」

『なんのこれくらい』

「で、もう一件いいですか?

 オルガ……接触してきた魔族の女性ですけど、その、アイリスは彼女が俺をその、お誘いしてるって言うんですよ。これについてなんですが」

『ふむ、というと?』

「さっきの話だと、彼女は魔族。種族が違うわけですよね?それって」

『いや、そこまでの違いはないぞ。そういう意味ではどれも人族だし、交雑も可能だぞ』

「こ、交雑!?」

『うん?そういう意味の質問ではなかったのかね?』

「いやいやいやいや!違っ……い、いや、うん、そ、そうなの、かな?」

 一瞬、夢にでてきたオルガの身体がちらついてしまった。

 ちくしょう、なんかムラッときた。

 まて、子連れだぞ俺!

 これじゃ発散もできないし……しまったな。

『まあ、こんなところだ。精霊が、精霊分がどういう存在かについては理解できたろうか?』

「はい。だいたいは」

『よろしい。

 おなじ情報はアイリスにも与えてあるので、あとで質問があればするといい。ではな』

 そういうと、アイリスの身体がピクッとはねた。

「……行っちゃったか?」

「うん」

「そうか」

 俺は前に向き直り、ハンドルをにぎり直した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ