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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

さよなら幼なじみ

作者: はるいち



それを見たのは偶然か必然か――





私には維知衣と果江という、2人の幼なじみが居る。


私達は小さい頃から、どこへ行くにも、何をするにも3人一緒。



親に内緒の森の探検、真っ直ぐに伸びる道の果てへの冒険。


虹の向こうを目指す旅に、秘密基地。


近所のテリトリーを巡る、悪ガキ共との小競り合い。



ヤンチャな私達は日々冒険や悪戯に明け暮れ、怒られたり呆れられたりだったけど、あの日々はキラキラしていた。



中学生になっても相変わらず3人一緒に過ごし、当たり前のように、高校も3人一緒の学校へ。






私達の関係が、少しずつ変化していったのは何時からだったか。



2人を誘っても断られることが増え、2人から誘われることも徐々になくなった。


きっと勉強が忙しいから――多分委員会で忙しいから。



自分を納得させる言い訳を考えてはみたけど、ある日見てしまった。


誘いを断られた日に、2人が一緒に居るのを。



知らず身体が震え、呼吸が荒くなる。



2人のもとへ駆け出したい衝動に駆られた。



まだよ、まだ解らないじゃない。――きっとこの後、新しく知り合った相手と交流を深めに行くのよ。そして絆が深まったら、私に紹介してくれるのよ。


知らない間に新しい仲間を増やし、私を驚かせる作戦ね。



自分を納得させる言い訳をし、心を落ち着かせた。







放課後、ただただボンヤリと窓の外を眺める。



どのくらいそうして居ただろう。暗い教室に独りきりだ。


いつの間にか、部活動をしていた生徒の声も聞こえなくなっていた。



教室を出ると人の気配のない暗い廊下が、薄気味の悪さを醸し出している。



最近観た映画を思い出す。


夜の学校を徘徊するゾンビの群れ―


今この瞬間、向こうの角からゾンビ達が―



自分の思い付きにちょっと震えた。




普段なら、誰かが下校を促す声を掛けるのに、今日に限って無いなんてどういうこと?まさか門を閉められてないよね…?



嫌な感じにドキドキしながら、急ぎ足で暗い廊下を進み階段を下りれば、明かりと声が漏れている教室が。



開いてるドアの前に立てば、机や椅子を移動させ、広く空いたスペースで抱き合いながら、維知衣と果江が口付けを交わしていた。


それは軽く触れるものじゃなく、お互いを貪り合うような激しいもので、いやらしい音が静かな教室に響いている。



とっくに私に気付いてるくせに、2人は口付けを止めるでもなく貪り合い、そのうち維知衣の手が、果江のスカートの中へ滑り込み、湿った音を出す。



明らかにこんな場所でするべき行為じゃない。



慣れた維知衣の手つきが、これが初めての行為じゃないことを物語っている。



私に隠れてコソコソと、こんなことを繰り返していたのかもしれない。



何か言うべきか言葉を探してると、さして時間も経たないうちに、意識のない女子を荷物のように担いだ数名の男子が現れた。


彼らが女子を床に寝かせると、維知衣が手を、果江のスカートから出す。



ズルリ―



その手にあるのは、大きめのナマコほどの長い物体。


物体は、分泌液にまみれた薄い膜で覆われいる。



男子の1人が女子のスカートを捲った後下着を剥ぎ取り、露になった場所を維知衣が暫しまさぐった後、手に持っていた物を、体内に全て入るように挿入した。




ゾッとした。


おぞましさに身体が震え、今すぐそんなこと止めてと叫びそうになる。



女子は未だ目覚めていない。このまま目覚めずに事が終わった方が、幸せかもしれない。――なのに、目覚めてしまう。



「…え…?」


自分の身に何が起こってるのか、理解出来なかったのだろう。


私が彼女の立場だったとしても、何が起こってるのか理解出来ず間抜け顔になるってものだ。だってそうでしょ。目覚めたら男子に囲まれてるとか意味が解らない。


しかも下半身は露出している。



「…あ、…え?幹雄君?」


どうやら男子のうち1人は知り合いだったらしい。この状態で、それが救いになるかどうかは疑問だけど。


女子の状態なんか気にも止めず、維知衣は自分のモノを露出させ、それを合図に男子達が女子の腕や足を押さえ――維知衣は一気に貫いた。



「あぐっ!!ぁあっ、やっ、やだあーッ、幹雄君助けッ――」




勿論幹雄君とやらは助けない。女子を押さえてるから。



先に挿入された物を、しっかり奥に到達させるような動きを見せた後、躊躇のない動きで、維知衣が中に仕上げを施したのが解った。


「ぁ、ぁぁ…、嘘…」




その後は、女子を押さえていた男子達が代わる代わる――






「育児袋の卵達に、定期的に栄養を与えておくように。」


「はい。」



一度目の“栄養”を与えられた、放心状態の育児袋(女子)は、男子達により教室から運び出されて行った。



その後、すぐやって来た別の生徒達に、私は腕を掴まれ、乱暴な扱いで果江の前に突き飛ばされ転んだ。



「痛ッ」

「ほんとアンタってドンくさいわね。維知衣もそう思うでしょ?」


「ああ。」


「維知衣は…、果江が良いの?」



維知衣は侮蔑まじりの瞳で私を見た。



「当然だ。…出来損ないの能無しのお前ではなく、俺は果江が良い。―果江はスペアだと言うが、お前は何だ?スペアにすら何もかも劣るお前に、一体何が出来る?何も出来やしない。何も出来ない存在など価値がない。」



私達は何時も一緒だったけど、2人より全てが劣る私は、ハッキリ言って足手まといだった。


2人はそんな私と行動を共にしていたけど、言葉の端々やちょっとした時に、見下されているようなところが見え隠れしてたように思う。


私は2人の態度を、気付かない振り、見ない振りでいた。


だって、少しでも長く側に居たかったから。



思えば維知衣は、何時だって果江の味方だったな…。





「名ばかりの出来損ないより、私の方が女王に相応しいと思わない?」



果江の問いかけに、周りが頷く。



蔑む目が、お前などいらないと如実に語っている。



私の味方なんて1人も居なくて、誰もが私を必要じゃないと言う。胸の奥底に隠しておいた感情が、今にも顔を出してしまいそう。



立ち上がり、スカートの埃を払う。



「そんなわけで、アンタはここで処分――」



果江は最後まで言葉を紡げなかった。何故なら―





ブジュ―



私の手に心臓を握り潰されたから。



水に手を浸すように、何の抵抗もなく胸を貫けた。



「身体柔すぎじゃない?ちゃんと鍛えないと。ねぇ聞いてる?――ってもう死んじゃったの?」



片手で頭を押さえてから、突っ込んでた手を抜き、果江の頭に手をかけ、ミカンを二つに割るように割る。

剥き出しになった脳のなんと美味しそうなことか。



血と脳の匂いが混じりあい食欲をそそり、グウとお腹がなった。…ちょっと恥ずかしい。



行儀悪いけど、片手で喉を掴み、もう片方の手で脳ミソを鷲掴み頬張った。



私は脳ミソが大好物だ。



脳ミソの中でも特に、裏切り者の脳ミソが大好きだ。


どうしてかは知らないが、裏切り者とそうじゃない者の脳ミソを食べ比べると、裏切り者の方が何倍も良い味がする。




ずっと泳がせて育つのを待った甲斐があった。



何度欲望に負けそうになったことか。


歓喜に震える心の赴くまま、殺っちゃわないでホント良かった。



んん…、滑らかな舌触り。そして口の中に広がる濃厚で高級な味わい。


「クヒッ、最高〜。」



我慢して我慢して我慢して―やっとありつく好物って、普通に食べる時の何倍も美味しい。



果江の脳ミソを平らげ、ちょっとだけ悲しくなる。


私の誕生日のご馳走にしようと思ってたのに食べちゃった…。



口のまわりに付いた脳ミソを舐め取る。


他の裏切り者は、果江よりグッと味が落ちそうで微妙。



「…ぅ、うわーーッ!!うわーー!!」



誰かが叫んだのを合図に、恐怖で何も出来ずにいた奴等が、蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。




逃げたところで行く末は一択しかないのに、全く無駄なことをするものだわ。




用済みになった果江の死体を捨てる。



はしたないと思ったけど、名残惜しくて、脳ミソを掴んでた手を舐めてしまう。


維知衣を見ると、なんか顔がおかしなことに。



「やぁだ、維知衣ったら。おキレイな顔が、酷いことになっちゃってるよ。」



今更ながら自分の仕出かした、おぞましい行為に身震いしちゃった?



無理もないね。果江の指示とは言え、相手、下等生物だもの。底辺這いずってるような相手にあんなことするなんて、いろんなものが入り交じって、そりゃ不細工にもなるわ。



維知衣以外で“飼育袋”の“お世話”をしていたのは、下等生物だ。


あれは卵を立派に育てる為の餌。



奴等は自分が何をしてるかなど理解せず、ただ卵に栄養を与え続ける。



故郷では狩人(ハンター)が、狩った餌に洗脳系を寄生させ操ってたけど、ここだとどうなんだろ?



この星に適応した身体に進化してるから、何もかもが故郷と一緒かと言えばそうじゃない。



“栄養”は、あんなモノではなかったし、餌は自分の持つ全てを与え続け、そして死ぬのだ。




私はここに来て、まだ子を成したことがないから、システムがどう変化してるか分からない。


でも、分かることもある。餌の最期は死以外ない。




それはさておき。



操り人形な餌の下等生物と違い、維知衣がやったことは、私のスペアである果江が生成した無精卵への授精だ。



ああ、ホントおぞましい。下等生物にあんなマネして。



故郷では育児室にある大量の卵へ授精という、同胞を増やす崇高な役割を担っていたというのに、落ちぶれたものだ。




「の、能…無、……たんじゃ…」


ガタガタ震えながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ維知衣。



「こういうの何て言うんだったかな?…え〜と、…拘りプレイ??」



この星の下等生物は愚図で愚鈍だし、哀れなくらいショボい身体能力で細々と暮らしてるから、私なりの拘りで過ごしてみたら、勝手に維知衣達が勘違いしただけのこと。



ゆっくりと歩み寄れば、維知衣はへたり込んだまま後ずさる。



その目に在るのは恐怖と絶望。



「私の卵に授精出来る権威ある存在なのに、なぁにその情けない態度。誇り高く常に凛としてなさいよ、みっともない。」


「そ、そうだな!俺は選ばれた者。誇りを忘れずに己の役割を全うすると誓う!」


急に希望らしき光が瞳に宿ったけど、どうしちゃったの?維知衣の行く末に希望なんかあるわけないのに。


維知衣って案外夢見がちだったんだね。




女王(クイーン)

「あれ、どうしたの?似衣。」


「遅かったのでお迎えにあがりました。」


「ご苦労、似衣。ちょっとした行き違いはあったが、女王(クイーン)と俺は、今日、新たな絆を築くことが出来き、有意義な時間を過ごせた。」



立ち上がり胸を張る維知衣を、似衣はチラリとも見ない。



「おい!スペアの分際で俺を無視とは良い度胸だな。」


「アレは如何なさいますか?」


「育児袋。」

「なッ!?」


「畏まりました。―おい。」



似衣が声を掛けると、ドアから同胞が現れ、維知衣を乱暴に連行していく。



「おい!放せ!俺を誰だと思ってる!女王(クイーン)、俺に無礼を働くなと言ってくれ!――放せと言っている!」



維知衣のお蔭で、下等生物の腹を使わずに済む。



壊れたりしないように、たっぷり入念に解して広げるように言っておかなきゃ。



「似衣。」

「はい。」

「君はもう維知衣のスペアじゃないから、今日から波時芽って名乗ると良い。」


「光栄です。」



似衣――改め波時芽が跪付いて私の手を取る。


見上げてくる瞳は宝石のように輝き、その奥には隠しきれない熱が揺らめいていた。








私と君でここから始めよう。


子を成して同胞を増やそう。


私達の王国を作ろう。








さぁ侵略を始めよう。











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