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Shadow Heaven  作者: Day and Buffalo
7/12

7話 Day Light

あれからどれだけ時間が経ったのだろうか、?


眩しい光と頭全体に広がる痛みと吐き気。


昨夜の光景が断片的に思い出され、記憶の世界は光と音の故郷の様だ。


松田が目を覚ますとナッキやミロクが不機嫌そうに立ってる。


「お酒くさい、、。」


覚えているのは、シェルターから追いかけた女性、レイコがキョウヘイの演奏に乗り込み

そのままレイコの友人タイタンとマチュー、最後にはオーナーのメチルも加わり大宴会になっていた事だ。


「もうお昼だよ、、。」

ナッキが呆れて松田達を起こした。


キャバレーメチルの芸人達の寝床は24畳程の大きさの掘っ立て小屋だ。

そこで出演する男達が雑魚寝している。


その日は何故か客のタイタンやマチュー、レイコまで寝ていた。


キッチンの方では、芸人たちが集まりワラワラとご飯を食べている。


頭痛に吐き気で食べる気がしない。

ナッキがおもむろに四角い箱のスイッチを付けた。


四角い箱に色がつき中で小人が話している。


「えー、今日は海外の音楽特集です。」

「もうすぐ”ビートルブ”が来日しますね。彼らの魅力を語らせて頂きます。」


(世間はバンドブ~ム!)

甲高い声と共に小人達の漫談は続いている。


「これは??」

松田がナッキに質問すると


「テレビ。昨日バンドが何か見せるって言ったじゃん。」

と、お酒臭い松田に目をしかめながらナッキが伝えた。


「これがバンドか、、。」

この四角い箱がバンド。松田はどうやって箱に入るか考えていた。


「何か特殊な訓練が必要なのかな?」

松田がナッキに質問すると


「う~ん。やはり練習はかなり必要だと思うよ。」

「キョウちゃんみたいに普段から演奏していれば早いと思うけど、、。」


ナッキの話を聞いて沢山練習する事に松田は共感した。

「でも、さすがに小さくなる訓練はしていないと思う、。」


「??」

ナッキは松田が何を言っているか良くわからない。


突然、松田やキョウヘイ、モーリ達が真顔になりテレビを魅入ってる。


レイコもフラフラとテレビの前に歩いてきた。


ビートルブが演奏をしている。


「この音。私のお守りから流れてきた音だ、、。」


箱の中の小人達は美しく楽器を奏でている。


キョウヘイのギターも和音で奏でられているが

小人”達”の演奏はただの和音ではない。


4人の個々の楽器のハーモニーは、完全な一致では無いが、

友人たちが会話をする様に演奏し

自然に表現された演奏の荒さが、彼等の音の世界を創っている。


モーリがミロクに質問した。

「どれがベースだ?」


ミロクは4本の弦を演奏する男を指差した。

想像していた力仕事では無い。繊細だが力強く楽曲を支えているのがわかる。


レイコは歌声に目を奪われている。


キョウヘイはギター演奏の男を見て、自分の演奏スタイルとの違いや演奏の荒々しさに心を奪われている。


松田は、箱に入る方法を懸命に考えていた。



「ベースって楽器をどうやって手に入れよう、。」

モーリが口を開くと。


横で寝ていたタイタンが

「僕の姉がベース持っていますよ。」

「何本かあるし、昔買った一番安いヤツなら貸してくれるんじゃないですかね、。」


「借りても良いかな??」

モーリが真面目に問うとタイタンはアクビをしながら「取ってきますよ」と言い

寝床から出て行った。


ミロクが不安そうに質問した。

「父ちゃん演奏できるの?」


モーリはミロクをみてニヤッと笑う。


モーリはタイタンからベースを受け取るとキャバレーメチルに向った。


「ねーえ。父ちゃん楽器演奏出来るの??」

心配そうなミロクを見て

「んー」

モーリは、はぐらかすばかりだ。


キャベレーの中に入りベースをアンプに繋げた。


アンプからの圧力をモーリは気にもせずに演奏をはじめた。

この楽器は和音より単音が合うがモーリは単音や和音を混ぜて演奏している。


「え?」

ミロクは突然のモーリの演奏力に驚いている。


「モーリや俺は元々、葬儀屋志望だったんだよ。」

松田が驚いているミロクの横で話し始めた。


「シェルターでは第六感(感覚)が鋭い子供達を集めて葬儀屋に相応しい人間をトレーニングをするんだ。選ばれなかった人間は演奏者のサポートをする事になる。」


松田はドラムの側に置いてあるスティックを拾いドラムに座った。

「うん、、。なるほど。」


松田は、ドラムのひとつひとつの音を確認し紙にメモをしている。


先ほどテレビで流れていたドラムの音もメモを取っていた様だ。


何度か音の調節をしながら松田のドラムの音は、

段々ビートルブの楽曲の音に近づいてくる。


その音にあわせてモーリはベースを演奏する。


ミロクは堪えられず声を上げた。

その声は歓声と同じで演奏をさらに盛り上げていく。


演奏の高まりと共にキョウヘイがギターを持って乱入してきた。


キャバレーメチルの前に人だかりが出来ている。

警察が拡声器をもって

止めるように声を上げているが声は届いていない様だ。


興奮したレイコが警察の拡声器を奪い取り


キャバレーの中に入り演奏と声を合わせた。


熱気は外まで伝わり、

休日を楽しんでいる町の人間は真昼間にも関わらずお酒を飲み

人が集まった熱気と演奏を楽しんだ。


キャバレーがオープンする頃には町の人間は酔っぱらい、彼らの演奏に満足し帰宅していった。


その夜のキャバレーメチルにはお客がいなかった。


シェルターの4人は正座をしている。

騒音問題での警察からの指摘。

オープン前にお客を満足させ帰らせた事。

メチルはカンカンに怒り、

4人はお客が来るまで延々と説教をされ続けていた。


その姿をマナコは見ながら。学校で怒られていたミロクを思い出し。

モーリとミロクは本当に親子なのではと思い眺めていた。


人のいないキャバレーメチルの前に一人の男が佇んでいる。


手にはレイコが持っていたお守り(ラジオ)と同じ物を持っていた。

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